1 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/07/08(日) 18:40:36 ID: Mmg+G16Z0
煙が立ち上がる街。
蒸気が白く光り、つるはしの音が響くこのビップに、一人の男がいた。
トレンチコートに、皮のブーツを吐いた、切れ長の目。
蒸気で蒸し暑いこの街を、闊歩する。
男の名前は、ロマネスク・スギウラ。
( ФωФ)「……ふむふむ。その子猫の……えっと、サウザーちゃん?を見つければよろしいわけですね?」
彼は、何でも屋。
子守から、暗殺まで幅広くやり遂げる、といった謳い文句を掲げている男。
そして、隣でメモを取っているのが彼の助手。
(*゚∀゚)「……まぁた子猫の捜索……」
茶髪を肩まで伸ばし、大きなボタンのついたツナギを履いた少女、ツー。
二人は依頼人からの写真を片手に、話していた。
( ФωФ)「そうは言っても、お仕事がこれくらいしかないんですよ、ツーさん」
(*゚∀゚)「もっと先輩がビッグになればいいんですよ!ビッグに!!」
( ФωФ)「君のお父さんじゃないんだから……。ゆっくりやらせてくらはい」
(*゚∀゚)「……ダメだこりゃ」
季節の変わり目が薄いこのビップの何でも屋が繰り広げる、少し変わったお話。
( ФωФ)ようこそ!何でも屋『浪漫堂』へ!のようです
3 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/07/08(日) 18:42:01 ID: Mmg+G16Z0
第1話「ようこそ!『子猫追跡』へ!」
また今日も一段と蒸気が濃い。
子供の頃より、年をとるごとに産業は活気になってきているのでしょうか。
走るには前が見えなくて見えなくて……。
あ、そういう私ですが、今猫を追っかけてます。
(;ФωФ)「あの猫……!!意外と早いですよ!!私聞いてない!そんなの私聞いてない!!」
(#゚∀゚)「いいからさっさと走ってくださいよ!!!」
4 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/07/08(日) 18:43:33 ID: Mmg+G16Z0
(;ФωФ)「すすすすいません!!
でも、そんなこともあろうかとスペシャルアイテムを押入れから持ってきたんですよ!!」
(*゚∀゚)「……押入れ?」
これを出すために今日の依頼はあったも同然!!
見たらツーさんきっと驚くぞ!!
なーんてねぇぇぇ!!!
( ФωФ)「これですよ!!これ!!」
(*゚∀゚)「いや……フリスビーじゃん」
(;ФωФ)「えっと……あの、これはですね……」
(#゚∀゚)「とっとと捕まえろよこのボケェェェ!!!」
も、もっと反応があると思ったのに……。
と、思っていたら怒りのせいか、ものすごいスピードで猫の方へ走っていきました。
結果オーライでしょうか。
5 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/07/08(日) 18:45:10 ID: Mmg+G16Z0
もうさっさと捕まえてくんないかな。
なんて声に出せるわけありません。
もし出せば、骨の一本二本は持っていかれそうで……。
いや……でも、こんだけ離れてたら少しくらいいいか。
いいよね?
いいさ!!
( ФωФ)「ツーさーん!!がーんば☆」
(#゚∀゚)「……こんの野郎!!覚えとけよ!!!おんどりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
( ФωФ)「怒りのベクトルは子猫ちゃんへ、うんうん」
ツーは、煙を掻き分けるように子猫のサウザーちゃんを追う。
全力でも、サウザーちゃんには追いつけそうに無かった。
6 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/07/08(日) 18:46:41 ID: Mmg+G16Z0
(;゚∀゚)「は、はやぃよぉ……この猫……」
な、なんでこんな事ばっかりさせられてるんだろう……。
ああ、この猫顔のバカがこんな依頼ばかり持ってくるから。
――――
―――
――
( ФωФ)「というわけで!ツーさん!!今回はマダムボンジョビの飼い猫、サウザーちゃんを捕まえます!」
(*゚∀゚)「……。私急がしいんでパスしていいですか?」
( ФωФ)「え?暇なんですか。じゃあ、僕と一緒にサウザーちゃんを探しましょう!!」
(;゚∀゚)「聞いちゃいねぇ!!」
そういえば、なんでこんな人の助手してるんだろ……。
あんなにかっこよくて、頼りがいがあったロマネスク先輩はどこへ……!!
7 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/07/08(日) 18:47:50 ID: Mmg+G16Z0
そして、それから1時間半走りっぱなしで、ようやく捕まえることができました……。
(*゚∀゚)「はぁ……。はぁ……。ようやく捕まえた……」
子猫「女……俺の名前を……いってみろ……」
(#゚∀゚)「サウザーだろうがよぉぉ!!!ボケぇぇぇぇぇ!!!!」
子猫「すいませんでした」
( ФωФ)「お疲れ様です!!!!よくやってくれました!!」
(#)ωФ)「いえ、あの、本当に、申し訳無い所存でしてですね。
その件に関しましては私も重々承知をしております……はい。
ですから、もうその二つの拳をしまっていただきたくですね……はい……。申し訳ないです……」
(*゚∀゚)「……はぁ。もういいですよ。早くマダムボンジョビのところへ行きましょう?」
( ФωФ)「そうですよね!早くマダムボンジョビ、略して『モンジョビ』のところへ急ぎましょう!!」
(*゚∀゚)「……略すなよ」
9 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/07/08(日) 18:49:17 ID: Mmg+G16Z0
気づけば、もう外は夕方で、オレンジ色の蒸気が綺麗に輝いていました。
『暗くなる前にモンジョビ宅へ行こう』
ロマネスクさんがそう言っていたので、お腹が減っているのを我慢して行くことにしました。
モンジョビ『あらあらまあまああーらあら!!!サウザーちゅわぁぁぁぁん!!!まってたのよぉぉぉ!!!』
(*゚∀゚)「(うわぁ〜。猫吐き気催してるよ……黄色いの出てるし……)では、こちらで完遂ということで……」
( ФωФ)「また何かあれば、すぐにご相談ください」
モンジョビ『どうもありがとうね、あなたたち。よくサウザーちゃんいなくなるから、また頼むわよ』
( ФωФ)「だってさ!ツーちゃん☆」
(#)ωФ)「はい……。いえ、そういうつもりで……はい……、
いえ!決して軽はずみな発言ではないです……はい……。もう、腰も痛くなってまして……あ、あと足も……」
(*゚∀゚)「いい加減にしてくださいよね!!」
11 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/07/08(日) 18:50:43 ID: Mmg+G16Z0
( ФωФ)「で、ではこちらの方にサインを……はい、ありがとうございます。それでは、失礼しました」
(*゚∀゚)「失礼しましたー」
ガチャリ。
大きい門なだけ、大きい音が響く。
ロマネスクは、契約書を内ポケットにしまって、空を見た。
蒸気機関の吐き出す煙に、月を照らし合わせる。
白く輝くその月は、遠いあの日を思い出させた。
( ФωФ)「……ツーさん」
(*゚∀゚)「……はい?」
( ФωФ)「今日は、ありがとうございました」
(*゚∀゚)「え……え???」
12 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/07/08(日) 18:51:30 ID: Mmg+G16Z0
思いがけないロマネスクの感謝の言葉に、ひるむツー。
今日の昼に見せていた、あの間抜けな顔とは、一味も二味も違っていた。
(*゚∀゚)「あ、えっと……」
( ФωФ)「晩御飯、どこかへ食べに行きませんか?ほら、バーボンハウスとか」
あれ……?
あの時見た、先輩の顔……。
(*゚∀゚)「……おごってくれるなら、いきますよ?」
白い煙をまとった、細目の先輩。
私が、ついて行こうと決めた、あのときの顔だ……。
( ФωФ)「……世の中には、素敵な言葉があります」
(*゚∀゚)「……?」
( ФωФ)「ワリk……」
(*゚∀゚)「おごりですよね」
(#)ωФ)「……ふぁい」
第1話「ようこそ!『子猫追跡』へ!」 完