45 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:26:43.83 ID: mcvLzBDR0

図書室でツンは調べ物をしていた。
百以上ある棚に本が乱雑に詰め込まれているので、一冊探すだけでもかなりの労力を使う。

ξ゚听)ξ「えっと……レシピは確かここらへんだったかな……あら?」

《ハンターの歴史》というタイトルの古ぼけた本が目につく。
何気なくページをめくると、気になる一文を発見した。

@―――――――――――――――――――――――

酉歴5××年。この年、数百年続くハンターの歴史の中でも、
最強と謳われたハンターがこの世を去った。
若くして生ける伝説となっていた彼女は、
一度に十本の矢を射ることが出来たという。

@―――――――――――――――――――――――

ξ;゚听)ξ「……これってひょっとして……」

 

第九話「伝説のハンター」

 

 

 

47 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:28:58.10 ID: mcvLzBDR0

从 ゚∀从「十本の矢……確かにオサムはあの時(第七話)言ってたっすね」

ξ゚听)ξ「でしょ? 何か気になっちゃってさ」

ミセ*゚ー゚)リ「もしかして……オサム様が殺したのかな……」

∬´_ゝ`) 「……ありえるわね」

川;д川「オサム様に限って、人殺しだなんてそんな……」

('、`*川「そうよ。あんな虫も殺せないような人が、人を殺せる訳……ないよ、きっと」

六人のメイドたちは、談話室の椅子に座って井戸端会議を開いていた。
燃えさかる暖炉の火が、揺らめく不安定な光で部屋の中と彼女たちを照らす。

 

 

48 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:31:30.80 ID: mcvLzBDR0

ミセ*゚ー゚)リ「……聞いちゃいます? オサム様に」

('、`*川「聞いてどうするのよ」

ξ;゚听)ξ「でも、もしオサム様が人殺しだったら……私……」

从 ゚∀从「ここははっきりさせたほうがいいぜ」

('、`;川「……そうね。じゃあ、行ってみましょうか」

川;д川「えぇ……」

∬´_ゝ`) 「大丈夫よ貞子ちゃん。あの人を信じて」

川;д川(貴方、さっきありえるって……)

 

 

 

49 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:33:05.76 ID: mcvLzBDR0

何はともあれ、六人はオサムが昼寝(夜寝)をしているはずの寝室へ向かった。

【+  】

从 ゚∀从「オサムー。添い寝しにきてやったぞ!」

∬´_ゝ`) 「私が先よ!」

('、`;川「違うでしょ!」

ミセ*゚ー゚)リ「……あら? ひょっとして、中身空っぽじゃないですか?」

从;゚∀从「ミセリさん……いくらオサムが馬鹿だからってそれは……」

ミセ;゚ー゚)リ「頭の中の話じゃなくて、棺桶よ。あときっと貴方にはそれ言われたくないと思うわ」

 

 

 

53 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:35:14.83 ID: mcvLzBDR0

棺桶の中は確かに空だった。
しばらく城の中を探したが、何処へ行ったか結局わからなかったので、六人はしぃの所へ居場所を聞きに行った。

(*゚ー゚)「あの人、今日は出かけてるよ」

∬´_ゝ`) 「オサム様が外出するなんて珍しいですわね」

(*゚ー゚)「ええ……今日はちょっと、特別な日だからね」

('、`*川「特別というと?」

(*゚ー゚)「……ちょっと、ね。ところで、オサム様に何の用があったの?」

ξ゚听)ξ「あの……実は……」

 

 

54 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:35:55.57 ID: mcvLzBDR0

六人は図書室で見つけた本のこと、ハンターのことをしぃに話した。

(*゚ー゚)「伝説のハンター……か。すごい人だったらしいわね」

川д川「ご存じなんですか?」

(*゚ー゚)「結構有名人よ。まあ昔の話だから、今は知ってる人も少ないだろうけどね」

从 ゚∀从「へえ……それで、しぃさんはそのハンターがなんで死んだか、知ってますか?」

(*゚ー゚)「さあ……詳しくは知らないわ。オサム様に聞きたいなら、居場所を教えてあげるわよ?」

ξ;゚听)ξ「……是非お願いします」

 

 

55 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:36:37.48 ID: mcvLzBDR0

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六人は、裏山の奥にある、オサムとしぃだけが知っているという、秘密の場所へと向かった。

――隠し事は良くないわよねー。色々と聞いてきなさい。

ξ;゚听)ξ(……隠し事って何だろう)

何か意味ありげなことを言っていたしぃに、六人のオサムに対しての疑惑はますますつのるばかりだった。

 

 

 

57 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:39:31.55 ID: mcvLzBDR0

六人は教えられた通り、裏山の道無き道を進んでいた。

月と星の明かりだけで進むのは不可能なので、それぞれ手にランプを持っている。
周りの生い茂った木々が視界を塞ぎ、外にいるはずなのに窮屈だった。

果たして帰れるかどうか心配になってきた頃、六人は少し開けた場所に出た。
木々の間から差し込む月光が、何か神聖な光のように見える、美しい場所だった。
地面は雑草だらけだが、よく見るとどれも小さい花を咲かせていて、ちょっとした花畑のようである。

('、`*川「……いた」

ξ゚听)ξ「え? あ……」

ペニサスが指さした先に、地面に腰を下ろし、座ったまま動かないオサムの姿があった。

 

 

59 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:42:43.77 ID: mcvLzBDR0

ミセ*゚ー゚)リ「……何をしているのかしら」

六人は足音を立てないように、抜き足差し足でそっと近づいていく。
しかし、オサムには通じなかった。

(    )「誰だ」

∬;´_ゝ`) ;゚听)ξ;*゚ー゚)リ;゚∀从川;д川('、`;川「!」

(  ゚"_ゞ)「……なんだ、お前たちか。どうしたんだ? こんなところに」

ξ;゚听)ξ「え……えっとですね……あ」

ツンがそれを見つけたと同時に、他の五人も、オサムの前にあったものに気がついた。

それは小さな墓石だった。
オサムが添えたのか、墓石の前に、周りに生えているものと同じ雑草の花が置かれている。

 

 

62 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:44:37.98 ID: mcvLzBDR0

何か見てはいけないものを見てしまった気がして、六人は落ち着き無くそわそわしていた。
しかし誰も喋らない訳にはいかないので、ツンが代表して事情を話し始める。

( ゚"_ゞ゚)「なるほど……伝説のハンターね。それを聞きに来たのか?」

ξ;゚听)ξ「ええ……そうなんですけど、そのお墓は……」

伝説のハンターの死と、オサムとの繋がり。
そして目の前の墓。
六人は何となくそれらが繋がっている様な気がしてならなかった。

∬´_ゝ`) 「ひょっとして、そのお墓は本に書いてあったハンターのお墓……ですか?」

( ゚"_ゞ゚)「いや、違う」

しかし答えは予想していたものと違っていた。

 

 

63 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:45:57.83 ID: mcvLzBDR0

川д川「オサム様……その……もしよろしければ、そのお墓がどなたのお墓なのか、教えて頂けませんか?」

( ゚"_ゞ゚)「……ふむ……。その前に一つ聞きたいんだが、ここへの道はしぃに聞いたんだな?」

ミセ*゚ー゚)リ「ええ、そうですよ」

( ゚"_ゞ゚)「その時何か、変なこと言ってなかったか?」

从 ゚∀从「変かどうかはわからねえけど……隠し事は良くないから、色々と聞いてきなさいって……」

(;゚"_ゞ゚)「ふう……あいつめ……」

オサムはため息をついてから、「まあ隠す事では無いか」と言い、少しずつ話し始めた。

 

 

64 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:48:54.19 ID: mcvLzBDR0

( ゚"_ゞ゚)「この墓は、もう何百年も前に死んだ私の友達の墓だよ」

('、`*川「同じドラキュラの方ですか?」

( ゚"_ゞ゚)「いや、彼女は歴とした人間だった。名前を……リルルという」

( ゚"_ゞ゚)「酒癖の悪い女だったが、良い奴だったよ。人間で初めての友達が、彼女なんだ」

六人のメイドたちは、感慨深げに話すオサムを見て、リルルにちょっとだけ嫉妬心を抱く。
友達と言っているが、本当にただの友達だったのか、疑いたくなる口調であった。

( ゚"_ゞ゚)「そしていろいろあって死んだ」

∬;´_ゝ`) ;゚听)ξ;*゚ー゚)リ;゚∀从川;д川('、`;川「えええええ!?」

 

 

65 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:50:37.45 ID: mcvLzBDR0

从;゚∀从「そこはしょるのかよ!」

( ゚"_ゞ゚)「まあアレだ。いつか聞かせてやるよ。よいしょっと……」

オサムは立ち上がると、墓石の方を一瞬だけ見てから、歩き出した。
ある意味急展開の流れに、六人は置いてけぼりである(そのままの意味でも)。

(    )「さっさと帰るぞ。夕食の時間が迫ってるからな」

ξ;゚听)ξ「あの、じゃあ一つだけ教えて下さい」

(  ゚"_ゞ)「……何だ」

ξ;゚听)ξ「伝説のハンター……ソフィア・シーグバーンについてです」

 

 

67 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:52:16.70 ID: mcvLzBDR0

( ゚"_ゞ゚)「ああ、そういえばそれを聞きに来たんだったな」

('、`*川「オサム様は、彼女に会ったことがあるんですね?」

( ゚"_ゞ゚)「うむ。彼女は強かったよ。流石に死を覚悟した」

川;д川「あの……彼女が死んだのは、ひょっとして……」

貞子の様子を見て、みなまで言わずともオサムは聞きたいことを察した。

( ゚"_ゞ゚)「言っておくが、彼女を殺したのは私じゃないぞ」

それを聞いた六人は、ほっと胸をなで下ろした。

 

 

68 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:53:21.76 ID: mcvLzBDR0

( ゚"_ゞ゚)「というか、彼女は私の、人間で二人目の友達だからな」

∬;´_ゝ`) ;゚听)ξ;*゚ー゚)リ;゚∀从川;д川('、`;川「嘘!?」

(;゚"_ゞ゚)「今日は息ぴったりだなお前ら……」

从;゚∀从「じゃ、じゃあなんでソフィアは死んだんだ? 強かったんだろ?」

( ゚"_ゞ゚)「まあその話もまた今度だ。ほら、空を見てみろ」

木々の間から、随分と傾いた月が夜空に見えた。
とっくに夕食の時間になっていたのだ。

 

 

71 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:55:34.13 ID: mcvLzBDR0

从;゚∀从「やばい! 早く帰らないとしぃさんに怒られる!」

ミセ;゚ー゚)リ「ひい! それはまずい!」

顔を青ざめさせたハインとミセリは、他の者たちを置いて勝手に走り出していった。

ξ;゚听)ξ「ちょっと! 待ちなさいよ!」

('、`;川「こ、こら! 先輩を置いていくなんて許さないわよ! 怒られるなら一緒よ!」

∬;´_ゝ`) 「ちょ、ちょっとみんな落ち着いて……!」

二人を追ってツンたちも走り出す。

この五人は全員一回以上しぃに怒られたことがある人たちである。
しぃの怖さを知っているが故に、走り出さずにはいられなかったのだ。

 

 

73 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:56:29.75 ID: mcvLzBDR0

( ゚"_ゞ゚)「貞子は行かないのか?」

ただ一人だけ残った貞子に、オサムが話しかける。

川д川「オサム様を置いていく訳にはいきませんので……」

( ゚"_ゞ゚)「む……」

その言葉に感心したオサムは、貞子の頭を撫でてにっこりと微笑んだ。
貞子の白い肌が真っ赤になったのだが、ランプの小さい明かりだけでは、その変化はオサムにはわからなかった。

 

 

74 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:57:08.12 ID: mcvLzBDR0

( ゚"_ゞ)「律儀な奴だな。さあ、私たちも急ごう。しぃに怒られるのは私もたまらん」

川*д川「あ、はい」

(    )「下手すると、また矢が十本飛んでくるかもしれんからな」

川;д川「……え? あの……それは一体……?」

オサムは何も答えず、歩き出していった。
風に揺れる銀色の髪に、淡い月光を反射しながら。

 

第九話「伝説のハンター」 完

 

 

75 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/17(月) 17:57:59.34 ID: mcvLzBDR0

どんな絶望においても、前に歩くことが出来る力。それこそが希望――歌丸です。

さぁーて次回の「棺桶死オサムのようです」は

第十話「あの兄弟がやってきた」
第十一話「媚薬を使う際は用法・用量を守り使わないで下さい」PG12指定
第十二話「新世紀☆桃太郎」

の三本です! 君は刻の涙を見る……。

 

 

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