1 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 16:55:08.74 ID: Tu+B2sku0

【前回までのあらすじ】

天ぷらの最中、はじけた油によって死んでしまったドクオ。
しかし神によって蘇ったドクオは、再びエビの天ぷらに挑戦することを決意した。

果たしてエビの衣はサクサクに揚がるのか。
タルタルソースの油分を気にするドクオは、最後のカロリー計算を始める。

('A`)「自分との戦いですから」

 

 

3 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 16:58:46.88 ID: Tu+B2sku0

オサムとしぃが城を去ってから、一週間が経った。

 

第十七話「いい日旅立ち」


 

5 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:03:02.09 ID: Tu+B2sku0

満点の星空の下、城の屋上で手すりにもたれる二人の女の姿があった。

ミセ*゚ー゚)リ「星……綺麗だねー」

ξ゚听)ξ「うん……」

屋上からは大地を覆い尽くす一面の森が、遠くの山々まで暗く広がって見える。
はき出す息は白く、寒さで手足が凍えていたが、二人はその場から動かなかった。

ミセ*゚ー゚)リ「……まーだ元気出ない?」

ξ゚听)ξ「出ないよ……出してたまるもんですか」

ミセ*゚ー゚)リ「そこは意地になるとこじゃないでしょ」

 

 

7 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:04:04.84 ID: Tu+B2sku0

ミセリがそう言うと、ツンは深いため息をついた。
色つきの息が顔の前で広がり、空気に混ざって消えていく。

ξ゚听)ξ「私どうしよう……」

ミセ*゚ー゚)リ「何がー?」

ξ゚听)ξ「このまま城に残っても仕方ないけど……帰るとこも無いし……」

ミセ*゚ー゚)リ「あ……うん……そだね」

ツンは数年前、流行の病で両親を亡くしている。。
それからは住み込みで働ける場所を、転々として生活していたのだ。

 

 

11 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:06:58.89 ID: Tu+B2sku0

ξ゚听)ξ「はあ……」

ミセ*゚ー゚)リ「……あのさ」

ξ゚听)ξ「何?」

ミセ*゚ー゚)リ「前にも話したよね。私が……」

ミセ*゚ー゚)リ「この国の王女だってこと」

オサムでさえ知らない、ミセリの秘密。
ツンは半年ほど前に、彼女の口から直接聞いていた。

もちろんツンも最初は驚いたが、彼女の性格を考えてからすぐに納得してしまった。
わがままで怠け癖な性格は、そこから来ているのだとツンは理由づけた。

 

 

12 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:08:42.99 ID: Tu+B2sku0

ξ゚听)ξ「うん。聞いたわ」

ミセ*゚ー゚)リ「私、城に帰ろうと思うの。パパも心配してるだろうから」

その言葉に、ツンはさして驚かなかった。
ただ次にミセリが言った言葉には耳を疑った。

ミセ*゚ー゚)リ「良かったら、私の城で働かない?」

ξ;゚听)ξ「え?」

想像さえしなかった誘いである。
多少辟易するも、ツンに断る理由など無かった。

 

 

13 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:10:36.75 ID: Tu+B2sku0

ξ*゚听)ξ「ほ、本当に私が行っていいの? 迷惑かけないかな」

ミセ*゚ー゚)リ「大丈夫よ。私が見込んだ貴方だもの」

ξ*゚听)ξ「……ありがとう」

ミセ*^ー^)リ「……ううん。お礼が言いたいのはこっちだよ」

ミセリの顔にえくぼが出来、人なつっこい笑顔になった。

ξ゚听)ξ「え? どうして?」

ミセ*^ー^)リ「んふふ」

 

 

16 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:13:06.27 ID: Tu+B2sku0

ξ;゚听)ξ(まさかまだ惚れ薬(第十一話)の影響が抜けてないんじゃ……)

ミセリはただ笑っているだけだった。
彼女の初めての友達が、怪訝そうな顔を浮かべるのを見ながら。

 

 

17 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:16:17.38 ID: Tu+B2sku0

ところ変わって、こちらはペニサスの部屋である。

('、`*川「……どうしたの?」

∬´_ゝ`)「……」

オサムとしぃが出て行って以来、彼女たちは少しお互いを避けるようになっていた。
だからペニサスはこの姉者の突然の来訪に、内心ドキドキしていた。

いつか折り合いをつけねばと、ペニサスが思っていた矢先の出来事である。

∬´_ゝ`)「私、実家に帰るので、最後に少し話をしたいと思いまして……」

('、`*川「……そう、帰るんだ」

 

 

19 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:18:12.86 ID: Tu+B2sku0

姉者が実家に帰るというのは、ペニサスも予想していたことだった。

∬´_ゝ`)「……ペニサスちゃんはどうするんですか?」

('、`*川「まだ決めてないわ」

∬´_ゝ`)「そうですか……」

('、`*川「……」

数秒の沈黙の後、姉者は絞り出したような声で言葉を連ね始めた。

 

 

20 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:19:04.63 ID: Tu+B2sku0

∬´_ゝ`)「私……」

('、`*川「……」

∬ _ゝ )「私……卑怯ですか……?」

∬ _ゝ )「主人の帰りを待たずに、勝手に家に帰る私は……卑怯なんでしょうか」

大声で「違う!」と叫びたかったが、ペニサスはそれを抑え、優しく諭し始めた。
歳が近いこともあり、彼女の気持ちが痛いほどわかったからだ。

('、`*川「……そんな訳ないじゃない。貴方は長女として、取捨選択したのよ」

('、`*川「それは立派な決断だと思うわ。自分を貶める必要なんて無いのよ」

 

 

21 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:19:49.45 ID: Tu+B2sku0

∬ _ゝ )「……」

('、`*川「姉者……」

再び部屋に沈黙が流れた。
数秒後、顔を上げた姉者の表情は、何処か吹っ切れたように見えた。

∬*´_ゝ`)「ペニサスちゃーん!」

('、`;川「ぎゃあああ! 何急に抱きついてんのよ!」

 

 

22 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:21:19.44 ID: Tu+B2sku0

∬*´_ゝ`)「先輩後輩の、最後のスキンシップです。うりゃうりゃ」

('、`;川「うわっぷ! 溺れる! 吸い込まれる!」

∬*´_ゝ`)「初回無料サービスですよ。あ、延長します?」

('、`;川「するか!」

ようやくいつもの彼女に戻ると、数日間の反動のせいか妙に陽気であった。
そしてなんだかんだ言って、ペニサスも楽しそうだ。

 

 

24 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:21:44.34 ID: Tu+B2sku0

                  :
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                  :

 

26 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:25:30.93 ID: Tu+B2sku0

オサムたちに続き、ミセリ、ツン、姉者が城を出て行った。
残された貞子たちは、これから自分たちがどうするのか、まだ決めあぐねていた。

从 ゚∀从「つまんねーな……オサムがいねーと」

川д川「だね……」

貞子の部屋で、ベッドの上に寝転がっているハインの呟きに、貞子が弱々しい返事をした。

从 ゚∀从「お前、家に帰る?」

川д川「……帰りたくないな」

从 ゚∀从「そっか……俺も帰りたくねえ」

川д川「ハインは、家の方は大丈夫なの……?」

 

 

29 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:30:11.59 ID: Tu+B2sku0

从 ゚∀从「兄貴たちがいるから、俺がいなくても仕事はまわるだろ」

ハインは代々続いている大工の家の娘である。
四人の兄たちがいて、その四人共が家を継ぎ大工として働いていた。

从 ゚∀从「お前だって、親が心配してるんじゃねえのか?」

川д川「どうかな……私が働いてることすら知らないかも……」

貞子の両親は、世界中を旅する冒険家である。
結婚し、貞子を産んでからも旅をすることはやめなかった。

酷いときは『ちょっと出かけます』という書き置きだけで、何ヶ月も帰らなかったこともある。

 

 

30 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:31:29.40 ID: Tu+B2sku0

川д川「オサム様に会いたいな……」

从 ゚∀从「ああ……俺も殴る相手がいないとどうも調子が狂うんだよ……」

川;д川「のび太がいなくなったジャイアンみたいだね……」

从 ゚∀从「素晴らしい例えだ」

会話はそこで途切れ、一瞬の間が空いた後、二人は同時にため息をはき出した。

 

 

32 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:32:49.59 ID: Tu+B2sku0

同時刻、中庭には種族を越えた話し合いが行われていた。
彼らはオサムたちがいなくなってから、彼らだけで行動することが多くなっていた。

(,,゚Д゚)「それでお前、どうすんの?」

(//‰ ゚)「……マダ ワカリマセン」

(,,゚Д゚)「ふうん……」

(//‰ ゚)「貴方ハ ドウスルンデスカ?」

(,,゚Д゚)「俺も決めてねえ。そろそろ、決めなきゃいけないんだけど……」

(//‰ ゚)「ソレハ 何故?」

 

33 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:34:33.86 ID: Tu+B2sku0

(,,゚Д゚)「簡単だよ。俺の場合主人に従うか、野生に戻るかの二択だからな」

(,,゚Д゚)「貞子さんが決める前に、どうするか決めなくちゃいけねえ」

(//‰ ゚)「主人……ナルホド 貴方ノ主人ハ 貞子サン デシタネ」

(,,゚Д゚)「ああ。オサムはオサムで世話になったが、主人とはまた違うからな」

(//‰ ゚)「……私ハ オサム様ニ 恩返シガ シタイ」

(//‰ ゚)「私ノ 主人ハ オサム様 デスカラ」

(,,゚Д゚)「……お前も律儀な奴だな」

(//‰ ゚)「貴方モ 猫ノ割ニ 思慮ガ深イ」

 

 

35 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:36:44.09 ID: Tu+B2sku0

(,,゚Д゚)「ありがとよイボ太郎」

(//‰ ゚)「殴リマスヨ」

木々が風に揺られ、葉が落ちきった枝が宙を泳いだ。
枝の向こう側に見える星空は、オサムたちも見ているのだろうか。

二人はそんなことを考えながら、夜空を仰いだ。

 

 

39 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:38:21.08 ID: Tu+B2sku0

                  :
                  :
                  :
                  :
                  :
                  :
                  :
                  :
                  :
                  :

川д川「……」

川゚д川パチ

 

 

40 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:39:01.79 ID: Tu+B2sku0

その日も貞子はいつも通り、日の落ちた頃に目を覚ます。

オサムたちがいなくなった今、そのような習慣は無意味である。
しかし、体に染みついた癖は簡単に直るものでは無かった。

川д川「はれ?」

まだ覚醒していない頭で、部屋の隅にある机の上の書き置きを見つける。
よろよろとベッドから起き上がり、書き置きを手に取った。

@――――――――――――
 起きたらダイニング集合!
     ペニサスより
@――――――――――――

 

 

41 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:40:43.08 ID: Tu+B2sku0

川д川「あ……」

ペニサスからの突然の呼び出し。
この時貞子は、ペニサスも城を出ることを決意し、それを告げる為に呼び出しをかけたのだと思っていた。

着替えを終えた貞子は、ひとまず隣のハインの部屋に行き、ノックもせずドアを開ける。

从 ∀从「むに……」

ハインはまだすやすやと眠っていた。
乱雑な部屋で、唯一空いているテーブルの上のスペースを見る。

貞子の部屋にあった書き置きと同じ物が、そこに置かれていた。

 

 

42 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:42:16.80 ID: Tu+B2sku0

川д川「ハインー起きてー」

从 ∀从「んん……むりぃ……」

川д川「仕方ないなあ……」

花瓶の水を頭から浴びせて、貞子はようやくハインを起こすことに成功した。
濡れた頭で飛び起きたハインは、首を左右に振って水しぶきを飛ばす。

从;゚∀从「何すんだよ貞子。もうちょっと寝かしてくれよ」

川д川「ペニサスさんから呼び出し……」

从 ゚∀从「ペニサスから?……そうか」

 

 

43 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:43:25.39 ID: Tu+B2sku0

貞子と同じく、ハインもペニサスが城を出て行くものだと考えた。
面倒くさそうな素振りをしつつも、しっかりベッドから起き着替えを始める。

五分後、いつものメイド服になった彼女たちは、重い足取りでダイニングへと向かった。
そこで聞かされるペニサスの決意と、訪れる人生の岐路を知らぬまま。

 

 

 

47 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:46:50.34 ID: Tu+B2sku0

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

小高い丘の上から、城を見下ろす一人のハンターがいた。

川*゚ー゚)「待っていた……ずっとこの時(出番)を待っていたぞ!」

彼女こそが、今世紀最大のKY、素直クーその人である。
まだ彼女が女学院に通っていた頃、彼氏にふられた女子に「顔のせいじゃない?」と言い、熱を出させた伝説は今でも学校で語り継がれている。

 

 

49 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:48:30.83 ID: Tu+B2sku0

人は彼女のことを、ABG(エア・ブレイク・ガール)と呼び、恐れていた。

川 ゚ー゚)「オサム! いざ参る!」

丘を駆け下りるABG。

川 ゚ー゚)フハハハハ

石に蹴躓いて転ぶABG。

川;゚ -゚)ヌワア!

石に向かって罵倒を発するABG。

川#゚ -゚)バカモノ!

 

 

50 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:49:57.61 ID: Tu+B2sku0

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ダイニングで待つこと三十分。
メイドの服のペニサスが、いつもと変わらぬ装いで部屋に入ってきた。

('、`*川「おはよー貞子。ハイン」

川д川「おはようございます……」

从 ゚∀从「おざーす」

 

 

53 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:52:16.39 ID: Tu+B2sku0

ダイニングは広く、三人では椅子も空間も大いに余ってしまう。
部屋の広さと相まって、人が少なくなったことが余計に強調された。

('、`*川「えーこほん。今日はね、二人にちょっと話しておきたいことがあったの」

('、`*川「本当は横堀にも集まって欲しかったんだけど、彼何処にもいなくて」

ペニサスは少しだけ迷った末、彼女たちと対面になるように椅子に座った。

川д川「……やっぱり……城を出て行かれるんですか……?」

尻すぼみになっていく声に、貞子の感情が表れていた。

 

 

54 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:53:31.14 ID: Tu+B2sku0

('、`*川「貞子……」

川д川「……」

('、`*川「逆」

川゚д川「へ?」

从 ゚∀从「い?」

('、`*川「私は城に残るわ。オサム様たちが帰ってくるまでね」

無理をして気丈に振る舞っているとか、そんな感じでは無かった。
彼女が悩み、その過程で極めて自然にたどり着いた答えが、これだったのである。

 

 

55 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:57:15.89 ID: Tu+B2sku0

川;д川「でもオサム様は、城で待つような真似はするなって……」

('、`*川「その後、後悔の無いように生きろって書いてあったわよね」

('、`*川「私にとって、一番後悔の無い選択が、これだったのよ」

从;゚∀从「ペニサス……」

('、`*川「……ツンやミセリ、姉者だってそう。オサム様やしぃさんだってそう」

('、`*川「自分で考えて、悩んで、決断した道を歩いていったわ」

('、`*川「……でもね。貴方たち、ちょっと遠慮してるところあるでしょ?」

 

 

57 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 17:59:13.05 ID: Tu+B2sku0

のぞき込むような視線が、貞子とハインを貫いた。
心の奥底に秘められていた、一つの考えを見透かされているように。

川;д川「でも……でも……帰ってこないかもしれないんですよ?」

('、`*川「待つ」

从;゚∀从「そのうちお婆ちゃんになっちまうぜ?」

('、`*川「骨になっても待つわよ」

从;゚∀从;д川「……」

 

 

59 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:00:13.36 ID: Tu+B2sku0

ペニサスは腕組みをして、自分からは喋らないという姿勢を見せる。
彼女は貞子とハインが、自分たちの考えを言い出すのを待っていた。

川;д川「……」

从;゚∀从「……」

('、`*川「……」

時計の針の音が、妙に響いて聞こえた。
ペニサスは完璧に黙り込み、じっと二人を見つめている。

惨劇は、その時起こった。

 

 

61 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:01:51.49 ID: Tu+B2sku0

 

川*゚ー゚)「呼ばれてないけどジャジャジャジャーン! 美少女ハンター☆クー参上!」

 

川д川

从 ゚∀从

('、`*川

川 ゚ -゚)

 

 

64 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:03:27.75 ID: Tu+B2sku0

かつてこれほどまでに、静止した時の流れが存在しただろうか。
星は自ら回転し、さらには公転をして宇宙を旅する。

季節は巡り風は吹き抜け、太陽は浮き沈みを繰り返す、変化こそが真実の世界。
その世界が、この瞬間確かに止まった。

川 ゚ -゚)「……テイク2ありますか?」

从#゚∀从「ねえよ!」
 _,、_
('、`*川「頭痛くなってきた……」

川;д川「ペニサスさん……大丈夫ですか……」

川;゚ -゚)「ぬう……」

 

 

66 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:05:40.06 ID: Tu+B2sku0

もはや後戻りすら出来ないクーは、いつものように啖呵を切る。

川;゚ -゚)「お、オサム! 今日こそは貴様を倒してやる!」

('、`*川「……」

川д川「……」

从 ゚∀从「……」

みんなの視線は、いつも以上に冷たい。
ここで並のKYだったら不穏な空気を察しただろう。
しかし彼女はこの場面でも、空気 ← 読めなかった。

川;゚ -゚)「何処だ、何処にいる! 早く出てこい! 頼むから!」

 

69 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:07:12.05 ID: Tu+B2sku0

絶叫に近い叫び声は、石造りの城の壁にこだました。
あまり放っておくのも厄介なので、ペニサスが説明し始める。

('、`*川「かくかくしかじか」

川;゚ -゚)「なん……だと……?」

クーはあまりのショックに、膝から崩れ落ちた。
ペニサスたちのことなど気にせず、盛大に泣き始める。

 

 

70 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:07:43.03 ID: Tu+B2sku0

川 ;-;)「うああああ! この為に学校も辞めたのにいぃぃ!」

('、`;川「ちょ……もうちょっと考えて行動なさいよ」

川 ;-;)「私は生きる目標を失った! 神よ! マリアよ! (東)幹久よ!」

川;д川「……」

惜しげもなく涙を流すクーを見て、貞子はそれを羨ましく感じた。
自分もあんな風に、ストレートに感情を表現出来れば――と。

 

 

73 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:10:28.84 ID: Tu+B2sku0

三十分ほど泣きわめいた後、クーは立ち上がり、涙を拭う。
その顔は、並ならぬ決意に満ちていた。

川 ゚ -゚)「何処だ」

从 ゚∀从「?」

川 ゚ -゚)「オサムは何処に行った」

('、`;川「……かなり遠出らしいわ。行き先はわからない」

川 ゚ -゚)「遠出か。長い旅になりそうだ」

从 ゚∀从「は?」

川;д川「さ、探すつもりなの……?」

川 ゚ -゚)「当然」

 

 

75 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:12:45.34 ID: Tu+B2sku0

川;д川「……」

清々しいほど、きっぱりと言い切った。
迷いなど微塵もなく、泣きはらした目に、新しい決意が芽生えている。

彼女の真っ直ぐな瞳に、貞子は嫉妬する。
それと同時に、心に秘めていた想いが、急速にふくらみ始めた。

川;д川「……私……」

('、`*川「……」

 

 

76 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:14:50.17 ID: Tu+B2sku0

貞子は悔しかった。
あんなに楽しかった日常が、こんなにあっさりと終わってしまったことに。
そして何よりも、何も出来ない、しようともしない自分が、悔しかったのだ。

川;д川「私……私も……」

从;゚∀从「さ……貞子……?」

川 ゚ -゚)?

スカートの裾をぎゅっと掴み、華奢な体を小刻みに震わせながら、貞子は言った。

川゚д川「私も……行きたい……!」

 

 

79 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:18:31.01 ID: Tu+B2sku0

内気な彼女が、精一杯紡ぎ出した言葉は、ダイニングの壁に反射し小さな余韻を残した。

从;゚∀从「お前……」

('、`*川「……うん。そうだと思った」

从;゚∀从「い、いいのかよペニサス。今貞子凄いこと言ったぜ?」

('、`*川「貴方も行きたいんでしょ?」

从;゚∀从「う……」
  _,、_
川 ゚ -゚)?

 

 

81 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:20:54.67 ID: Tu+B2sku0

何も言えなくなったハインを見て、ペニサスは確信する。
そして、やはり自分の決断は正しかったと、改めて感じた。

('、`*川「オサム様が何処に行ったか、ヒントがあるわ」

川;д川「え……本当ですか……!?」

('、`*川「ええ。さあ、出ていらっしゃい」

/ ゚、。 /『唐突にサーセンwwwwwwww実はまだいましたwwwwwwwwwwwww』

从;゚∀从「てめえは鈴木!? お前、使い捨てのキャラじゃなかったのか!」

鈴木が誰かということは、詳しくは第十三話を参照してもしなくても良い。

 

 

84 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:23:53.10 ID: Tu+B2sku0

/ ゚、。 /『ちょwwwwしっかり参照して思い出してwwwwwwww』

从 ゚∀从「むかつくから早く知ってること言え」

/ ゚、。 /『風当たりツヨスwwwwwww俺涙目wwwww』

从#゚∀从#д川

/ ゚、。 /『言うから睨まないでwwwww実はオサムさんから相談受けててww』

川д川「相談……?」

/ ゚、。 /『サロン王国に行く航路をwww俺wにw聞wいwてwきwたwんwでwすwよww』

从;゚∀从「サロン王国!? この辺りで一番大きい国じゃねえかっていうかやっぱうぜえ!」

 

 

86 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:25:43.51 ID: Tu+B2sku0

サロン王国とは、ここVIP公国と数百キロ離れたところにある国である。
地続きなので陸を通ってもいけるが、海を通るルートが一番早い。

鈴木は生前船乗りだったので、オサムはこの男に相談したというわけだ。

('、`*川「オサム様たちはサロン王国に向かったとみて間違い無いわ」

川 ゚ -゚)ZZzz...

('、`*川「オサム様に会ったら、何を言うつもり? 貞子」

川;д川「……まだ考えてないです」

 

 

89 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:27:20.03 ID: Tu+B2sku0

从;゚∀从「ちょ、本当に行く気かよ! 船で行ってもめちゃ遠いぜ!? 無理だって!」

川д川「行く!」

('、`*川「よし、行け!」

从 ゚∀从「めちゃくちゃだー!」

部屋の空気は慌ただしくなり、限りなくケイオスに近づいている。
そこへさらに事態をかき乱す者たちが、何故かダイニングの掃除用具入れから現れた。

(//‰ ゚)「話ハ 全テ 聞カセテ モラッタ!」

(,,゚Д゚)「ニャーゴルァ!」

 

 

90 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:29:35.15 ID: Tu+B2sku0

('、`;川「よ、横堀! 猫! あんたらそこで何やってたの!?」

(//‰ ゚)「イツカ コウイウ時ガ 来ル ト思ッテ ズット 隠レテ イタンデス」

从 ゚∀从「馬鹿だー!」

(//‰ ゚)「貞子サン」

川;д川「は、はい……」

(//‰ ゚)「私ト猫モ 貴方ニ オ供シマス」

('、`*川「え」

 

 

92 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:31:29.44 ID: Tu+B2sku0

(//‰ ゚)「私ハ 必ズ オサム様ノ 役ニ 立ッテミセル」

(,,゚Д゚)「ニャーニャニャゴルァ!」

(//‰ ゚)「猫ハ 貴方ニ 従ウ ソウデス」

川*д川「横堀……猫ちゃん……ついてきてくれるの?」

(//‰ ゚)゚Д゚)「YES(ゴルァ!)」

从 ;∀从「馬鹿ばっかりだー!」

急に初期のテンポに戻ったので、ハインは大混乱に陥っていた。
貞子たちはやる気満々で、横堀たちと円陣を組んでいる。

 

 

95 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:33:43.92 ID: Tu+B2sku0

川 ゚ -゚)ハッ

川 ゚ -゚)「目が覚めた。話はついたか?」

川д川「はい……私も行きます」

川 ゚ -゚)「うむ」

从;゚∀从「うむじゃねえだろ。俺たちは敵じゃないのか?」

川 ゚ -゚)「親友だと思っている」

从;゚∀从「何を根拠に!?」

('、`*川「落ち着きなさいよ。貴方も行きたいんでしょ?」

从 ゚∀从「行きたいよ! 行きたいけど……」

 

 

97 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:36:47.84 ID: Tu+B2sku0

从 ∀从「俺たちが出て行ったら……あんた一人だぜ……?」

川;д川「……」

ハインが気にしていたのは、ペニサスのことだった。
自分も行ってしまえば、たった一人で城に残すことになってしまう。

そのことがハインの決断を鈍らせていたのだ。
だがペニサスは、それすらも悟っていたかのように、力強く言った。

('、`*川「私はね、あんたたちに賭けたのよ」

从 ゚∀从「?」

 

 

98 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:37:47.82 ID: Tu+B2sku0

('、`*川「オサム様は……たぶん、自分が死んでもいいって思ってる」

(//‰ ゚)「……」

('、`*川「危険な旅とか、もう帰らないかもっていうのは、死ぬかもしれないっていう事を言いたかったのよ」

川;д川「……私も……そんな気がしました」

('、`*川「あの人にはね、荷物が必要なの。背中に背負うものが。あんたたちに、その荷物になって欲しい」

(,,゚Д゚)「ゴルァ……」

从 ゚∀从「ペニサス……」

('、`*川「死んだらいけないって、そう思わせなくちゃ駄目なのよ。あんたちに期待しちゃ、駄目だった?」

 

101 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:40:26.75 ID: Tu+B2sku0

从 ゚∀从「……いいのか? 本当に……」

('、`*川「……いいの。私はここで留守番しておくから、オサム様たちを、お願い」

川゚д川「……はい」

从 ゚∀从「……わかった」

♪(//‰ ゚)人(゚Д゚,,)♪

かくして、三人と一機と一匹の冒険が、ここに始まりを告げたのだった。

 

 

102 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:41:10.23 ID: Tu+B2sku0

('、`*川「途中まで道案内お願いね、佐藤」

/ ゚、。 /『佐藤じゃないっすwwww鈴木っすwwwwwサーセンwwwwwwwwww』

从 ゚∀从「よし、さっそく旅の準備だ貞子!」

川*д川「うん!」

('、`*川「おーおー元気がいいね、若いもんは」

/ ゚、。 /『俺も若いっすよwwwww死wwんwwでwwるwwけwwどwwwww』

 

 

103 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:42:02.51 ID: Tu+B2sku0

川 ゚ -゚)「幽霊初めて見た」

(,,゚Д゚)「ゴルァ」

(//‰ ゚)「旅行用システム 解凍中。。。 ガガガガ ピー ガガガガガガ」

('、`*川「激しく不安なパーティだわ」

果たしてこいつらに任せていいのかと、ペニサスは今更不安になっていた。

 

 

104 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:42:36.03 ID: Tu+B2sku0

旅の出発は、ひとまず夜が明けてからとなった。

                  :
                  :
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                  :

 

 

107 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:44:01.55 ID: Tu+B2sku0

貞子たちがいる城から、ずっとずっと遠くにある山に、闇にとけ込む妖しい城がそびえ立っていた。
城の城壁はボロボロで、濃緑色のツタが隙間無く絡みついている。

中は薄暗く、最小限の松明の光だけが、城内の光源であった。
蜘蛛の素が所々にはってあり、天井や物陰にはコウモリたちが息を潜めている。

(メ(#)W^)「……」

 

 

108 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:46:02.23 ID: Tu+B2sku0

ブーンは一人、暗い廊下を歩いていた。
何故か体はズタボロで、着ていた服はビリビリに破れている。

マントがちぎれていて、半分もついていなかった。
彼の体から滴る血が、廊下にぽつぽつと小さな血だまりを作っている。

「ねるねるねるね〜」

廊下の先から、呪文のような声が聞こえる。
それがだんだん近くなってきた時、突き当たりに、青白い発光が漏れる部屋が見えてきた。
ブーンはずんずん進み、その部屋のドアを乱暴に開ける。

(メ(#)W^)「渡辺!」

从'ー'从「あら〜ブーン君じゃな〜い。どうしたの〜?」

 

 

112 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:49:49.70 ID: Tu+B2sku0

部屋の中に、フード付きのローブに身を包んだ、髪の長い女がいた。
頭に尖った帽子を被り、丈がやや短めのスカートを履いている。

渡辺と呼ばれたその女は、巨大なツボの中で光る青白い液体を、手に持った杖でかき回していた。
ブーンが大股で近づいてきても、かき混ぜる手は休めない。

(メ(#)W^)「どうしたもこうしたも無いお! お前からもらった転送用の魔法陣使ったら、こんな目にあったんだお!」

(メ(#)W^)「もう少しで死ぬところだったお!」

从'ー'从「そのまま〜死ねば良かったのに〜」

(メ(#)W゚)「てめええぶち殺すぞおおお!」

 

 

113 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:52:31.70 ID: Tu+B2sku0

从'ー'从「でもそのおかげで〜こんなに早く戻ってこられたじゃな〜い」

(メ(#)W^)「く……もうお前から教えてもらった魔法は使わないお!」

从'ー'从「ご勝手に〜」

話すだけ無駄だと悟ったブーンは、さっさと部屋の奥へと進んでいった。
扉を抜け、再び長い廊下を歩き始める。

廊下を照らす松明を十数個ほど通り越した時、城の最深部である、城主の部屋にたどり着いた。

(メ(#)W^)「失礼します」

 

 

115 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:55:16.93 ID: Tu+B2sku0

いくつもの装飾が施された、重厚な扉をゆっくりと押して開ける。
中に進むと、入ってすぐのところにいた女と目が合った。

lw´‐ _‐ノv「遅かったね」

(メ(#)W^)「十分急いだお。死にかけたけど」

lw´‐ _‐ノv「そう……卵派なんだ」

(メ(#)W^)「……」

目の細い、青色の髪をした女は無視し、ブーンは部屋の奥にいる城主へと歩み寄る。
一段高い場所に置かれた玉座に、城主は足を組んで座っていた。

上半身は闇に包まれていて、その表情はわからない。

 

 

117 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 18:57:31.28 ID: Tu+B2sku0

「どうだった?」

男とも女ともつかない声が、闇の中からささやきかける。
ブーンは片膝を立ててしゃがみ込み、顔を伏せてから言った。

(メ(#)W^)「オサムは、やはり敵のようです」

「へえ……そうなんだ」

(メ(#)W^)「……」

「彼は必ず、私のところへやってくる。私はそれを、望まない」

(メ(#)W^)「……僕にお任せ下さい」

「頼んだよ」

 

 

119 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 19:00:47.48 ID: Tu+B2sku0

ブーンが顔を上げた時、既に玉座には誰もいなかった。

(メ(#)W^)(……底が見えないな、このお方は)

つかみ所が無いという表現はよく聞くが、その究極がこれなのでは無いだろうか。
微かに残る香水の匂いを感じながら、ブーンは改めてこの人物に畏敬を覚えた。

 

 

120 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 19:01:14.06 ID: Tu+B2sku0

                  :
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121 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 19:02:07.07 ID: Tu+B2sku0

旅立ちの朝は、いつものようにやってきた。
習慣を捨てきれず、夜中遅くまで貞子の部屋で騒いでいた彼らは、寝ぼけ眼のままダイニングへと向かう。

ダイニングには、既に全員分の食事が用意されていた。

川д川「ペニサスさん……一人で作って下さったんだ……」

从 ゚∀从「気が利くな。流石歳くってるだけのことはある」

('、`*川「おだまり」

从;゚∀从「うわあ! いたのかよ!」

 

 

123 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 19:04:13.78 ID: Tu+B2sku0

いつの間にか後ろにいたペニサスも加え、四人と一機と一匹は、静かな朝食を迎えた。

川*゚ -゚)「美味い! こんな美味いもの食べたのは初めてだ!」

少し訂正すると、静かではなかった。

('、`*川「ただの目玉焼きと野菜スープよ。そんなに美味しい?」

川*゚ -゚)「ああ。あまりにも美味しくて、記憶を失ってしまいそうだ」

川;д川「このネタ……誰かわかるかなあ……」

从 ゚∀从「俺も知らないんだけど……」

(//‰ ゚)「ウマー」

(,*゚Д゚)「ウマー」

 

 

126 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 19:08:03.87 ID: Tu+B2sku0

一人のKYのおかげか、この日の朝食は少ない人数でも、以前と同じくらい楽しく食べることが出来た。
笑って、騒げる日常が、こんなにも素晴らしいものだと気付いたのは、皆それを失ってからだった。

川*゚ -゚)「ハフッ! ハフッ!」

(,*゚Д゚)「ぱくぱく もぐもぐ」

(//‰ ゚)「げぇほっ!」

('、`;川「ちょっと落ち着いて食べ……横堀が平仮名で喋った!」

(//‰ ゚)「ズイマゼン……」

 

 

129 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 19:09:14.18 ID: Tu+B2sku0

横堀が吐き散らした朝食を、ペニサスは渋い顔で掃除し始める。

川д川(……絶対、オサム様を連れて帰ります……)

あの素敵な日々を、もう一度取り戻す。
貞子はペニサスの横顔を見つめながら、固く心に誓った。

 

 

130 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 19:09:52.85 ID: Tu+B2sku0

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

城は森に囲まれた、なだらかな丘の中腹に立っている。
城の裏手側には例の秘密の墓があり、城の表側の森には、木で出来た自然のロードが森の外まで続いていた。

この道を通る人は、両側から覆い被さるかのような木々を見て、幻想的な空間に酔いしれる。

川*゚ -゚)「何という清々しい日だ……旅の始まりにはうってつけではないか」

 

 

132 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 19:11:55.09 ID: Tu+B2sku0

城門の前で、クーは大の字に手を広げ、大きく息を吸い込んだ。
新鮮な空気を味わうかのように、ゆっくりとはき出す。

从;゚∀从「いちいち大げさなやつだな」

その後ろで、ラフな私服に着替えたハインが、腕組みをしながらぽつりと呟いた。
最小限の荷物に抑えたので、彼女の持ち物は全て小さな肩掛け袋に収まった。

川*д川「久しぶりの外だ……」

少し遅れて、クリーム色のカーディガンのような服を着た貞子が、手ぶらでやってきた。
荷物が無いことにハインは疑問の表情を浮かべたが、貞子の後ろを見て全て理解する。

 

 

133 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 19:13:38.87 ID: Tu+B2sku0

(//‰ ゚)「フウ」

从;゚∀从「ちょ……お前大丈夫か?」

横堀は背中に、大樽一つ分程の荷物を担いでいた。
紐で幾重にも縛られた荷物は、網に包まれたハムのようになっている。

川;д川「ごめんね横堀……やっぱり自分の荷物は背負うよ」

(//‰ ゚)「イエイエ 私カラ 言ッタ 事デスカラ」

川*д川「……ありがとう。でも無理はしないでね」

(;゚Д゚)(この野郎……密かに貞子さんのポイント上げやがって……)

 

 

135 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと38,657秒 Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 19:17:50.48 ID: Tu+B2sku0

川 ゚ -゚)「力持ちがいると助かるな。どれ、私の荷物もついでに背負ってくれないか?」

(//‰ ゚)「スイマセン 私ノ 背中ハ 一人用ナノデ」

川 ゚ -゚)「のび太の気持ちが今わかった……」

('、`*川「……」

眩しい陽光を浴びた三人と一機と一匹が、あの日見送った、オサムたちの最後の姿と重なった。

旅の始まりは、別れの始まり。
胸が切なくなる想いを、ペニサスは再び味わっていた。

 

 

136 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 19:18:25.06 ID: Tu+B2sku0

川 ゚ -゚)「ぐずぐずしている暇は無い。さっそく出発だ」

川д川「あ、はい……。ペニサスさん……行ってきます」

('、`*川「体に気をつけてね。危ないことしちゃ駄目よ」

(//‰ ゚)「マタ ココニ 帰ッテキマス ソノ時マデ オ元気デ」

('、`*川「あんたが守ってあげるんだよ。男だからね」

(//‰ ゚)「……YES」

(,,゚Д゚)「ニャーゴルァ」

('、`*川「あんたも元気でね」

从 ゚∀从「……」

('、`*川「……?」

 

 

137 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 19:19:38.87 ID: Tu+B2sku0

ハインは何も言わず、じっとペニサスを見つめている。
いつものような軽口が、その時は何故か出てこなかった。

川*゚ -゚)「よーし森の入り口までかけっこだ!」

(,,゚Д゚)「ゴルァ!」

(//‰ ゚)「ア チョット」

川;д川「待ってよみんなぁ……」

勝手に走り出したクーに続いて、他の者も後を追い始めた。
しかしハインだけは、まだその場に残っている。

 

 

139 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 19:21:24.30 ID: Tu+B2sku0

('、`*川「ほら、あんたも行かないと、置いていかれるわよ」

从 ゚∀从「……先輩」

('、`*川「え?」

 

从* ∀从「……今までお世話になりました――」

 

顔を見られたくないのか、ハインは踵を返して走り出した。

 

 

140 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 19:23:11.89 ID: Tu+B2sku0

( 、 *川「……何よ、いっつもため口の癖して……」

(;、;*川「敬語喋れるなら、最初から使いなさいよ……」

帰ってきたら、また死ぬほど世話を焼いてやろう。
ペニサスはそんなことを考えながら、完全に見えなくなるまで、彼らの背中を見送っていた。

 

 

/ ゚、。 /『あ、ちなみに俺もいるんでwwwwwwサーセンwwwwwwwww』

 

第十七話「いい日旅立ち」 完

 

 

143 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 19:24:47.43 ID: Tu+B2sku0

【今日の( ゚"_ゞ゚)と(*゚ー゚)】

今日、山賊たちにからまれた。
金を出すか、連れの女をよこせと言ってきた。

しぃが全員を殴り飛ばすのを見て、暴力は良くないなあと思った。

( ゚"_ゞ゚)(暴力は良くないなあ……)

世界が平和になりますように。

 

 

145 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 19:26:49.33 ID: Tu+B2sku0

終わりです。
第二期の最初の話ですし、展開を整理しましょうか。

★オサムたちが旅に出た
★貞子たちがそれを追う

整理終了です。

さーて次回の「棺桶死オサムのようです」は

第十八話「お色気の街 ピンクボード」

お楽しみに!

まとめ(まとめてくれた順/上からアップル、NEWS)
ttp://applevip.web.fc2.com/osamu/osamu.html
ttp://boonnews.blog120.fc2.com/blog-category-0.html

 

 

 

152 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。あと37,617秒 Mail: 投稿日: 2008/01/10(木) 19:37:59.14 ID: XAbSeITIO
今見たら終わってた乙

なんでペニサスの料理がおいしいんだ………?

 

153 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: しまった…… 投稿日: 2008/01/10(木) 19:39:44.45 ID: Tu+B2sku0

>>152
朝ご飯に定評があるからです

 

 

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