46 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 00:47:44.66 ID: OCa3kzy60
――03時21分 ダイニング――
オサムが目を覚ますと、そこはいつものダイニングだった。
辺りを見回し、テーブルに突っ伏している数人のメイドたちを発見する。
しばらくしてから、彼女たちは緩慢な動作で起き上がってきた。
いくらか混乱する頭を落ち着かせつつ、オサムは目を覚ましたメイドたちに今の状況を問う。
( ゚"_ゞ゚)「……なんでここで眠ってたんだ……?」
ξ;゚听)ξ「……さあ……?」
ミセ*゚ー゚)リ「夕食の時間……ですよね、今」
(//‰ ゚)「内蔵サレテイル 時計デハ 確カニ……」
47 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 00:49:56.28 ID: OCa3kzy60
その時、頭の奥で眠っていた記憶が、堰を切ってあふれ出した。
( "_ゞ )「お、思い出した……全て……」
――今日の料理は、私が作りますから……
この日、悪魔のような実験が行われるというショックで、彼らは気絶してしまったのだ。
第十四話「( ゚"_ゞ゚)オサムは料理実験の被験者にされたようです」
49 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 00:51:12.96 ID: OCa3kzy60
――03時23分 キッチン――
从 ∀从川д川「……」
キッチンの床で、ハインと貞子の二人は気絶していた。
先ほどペニサスが作った料理を味見して、彼女たちはこうなったのだ。
('、`*川「ふんふふ〜ん」
その亡骸の横で、怪しい液体が入った鍋をかき回すペニサスの姿があった。
('、`*川「私の料理があまりにもおいしいから気絶しちゃうなんて……照れるわあ」
ペニサスの独り言は、既に意識を絶たれているハインと貞子には届かなかった。
50 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 00:52:52.32 ID: OCa3kzy60
――03時33分 ダイニング――
∬´_ゝ`)「オサム様。申し訳ありませんが実家に帰らせていただきます」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、私もー」
(;゚"_ゞ゚)「こらこらこらこら!」
(*;゚ー゚)「駄目よ姉者ちゃん。ミセリちゃん」
(*; ー )「死ぬなら一緒よ……」
ミセ*;ー;)リ「う……そんな……」
彼らを包み込むは、底の無い絶望の螺旋。
食べなければ、死。
食べれば、死。
逃げ道の無い迷路の中で果てることしか、彼らに残された選択肢は無いのだ。
53 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 00:54:43.27 ID: OCa3kzy60
ξ;゚听)ξ「貞子ちゃんとハインちゃんはどうしたのかしら……」
ミセ;゚ー゚)リ「大丈夫よ。きっと上手く逃げ出せて……いると思うわ」
ξ;゚听)ξ「そう……だといいけど」
ダイニングに沈黙が流れる。
息をするのすら躊躇われる空気が場を支配した。
バン――!
その時、ダイニングの扉が乱暴に開かれなければ、まばたきを忘れていたオサムがドライアイになっていたかもしれない。
('、`*川「お待たせー!」
料理の乗った皿が並べられているカートを、ガラガラと押して入ってきた女。
彼女こそが、絶望料理人ペニサスその人である。
55 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 00:56:57.33 ID: OCa3kzy60
('、`*川「一人一品しか作れなかったけど、ボリュームあるからお腹一杯になれるわよ」
一人一品。
その言葉を、オサムたちは一人一殺と考えた。
('、`*川「では最初の料理でーす」
皿を取り出し、蓋を開ける。
中から出てきたのは、豚の……く、これ以上描写は出来ない。
だってこれは全年齢対象だから!
('、`*川「さ、誰が食べます?」
(;゚"_ゞ゚)「わ、私は後がいいな。今はあんまりお腹が減ってないから……」
(*;゚ー゚)「私も」
56 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 01:00:00.35 ID: OCa3kzy60
最高権力を持つ二人が早速拒否を示した。
そうなると、他のメイドたちが食べる他無くなる。
ミセ*゚ー゚)リ「あの……」
ここで下手な事を言えば、その者に待つのは、死あるのみ。
しかしここでミセリは一か八かの賭けに出た。
ミセ*゚ー゚)リ「私今ダイエット中だから、夕食はいいや☆」
(;゚"_ゞ゚)(うまい!)
∬;´_ゝ`)(この子……出来る!)
ミセ*゚ー゚)リ(やった……やったわ!)
もがけばもがくほど、沈み込む底なし沼。
ミセリはその沼から一筋の光明を見いだし、はい上がった!
だが……!
58 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 01:01:39.78 ID: OCa3kzy60
('、`*川「あらー良かったわー。実はこれ、カロリーオフなの」
ミセ*; - )リ(そんな馬鹿なあああああああ!!!!!)
あり得ないほどのボリューム、肉汁、油。
それなのにカロリーオフとはどういうことなのだろうか。
ペニサスは明らかにカロリーオフの意味をはき違えていた。
('、`*川「ささ、召し上がれ」
ミセ;゚ー゚)リ「うう……」
もはや逃げられない。
さながら蜘蛛の巣に落ちた蝶。
もがけばもがくほど、絡みつく糸はさらに体を拘束する。
59 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 01:04:20.09 ID: OCa3kzy60
('、`*川「さあ!」
ミセ*゚ー゚)リ「……ツン……」
ξ゚听)ξ「え」
ミセ*゚ー゚)リ「貴方に会えて、良かった」
ミセリはフォークを肉に突き刺すと、自らの口内に料理を押し込めた。
ξ;゚听)ξ「ミ――!」
60 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 01:05:45.52 ID: OCa3kzy60
血が、弾けた。
63 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 01:08:38.42 ID: OCa3kzy60
ミセ* ー )リ「あ……ああ……」
ガタンと大きな音を立てつつ、ミセリは椅子ごと崩れ落ちた。
ξ;凵G)ξ(……さようなら、ミセリ……)
('、`*川「いやーんそんなに美味しかった? まあ今回のは自信作ばかりだからねえ」
('、`*川「では続きまして……はい!」
続いて出されたのは……これも描写は出来ない。
皿の上に繰り広げられる世界のスプラッター劇場、とでも題しておこう。
('、`*川「さあ次のラッキスターは誰かしらー?」
64 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 01:10:47.57 ID: OCa3kzy60
(;゚"_ゞ゚);゚ー゚)「……」
オサムとしぃは完全沈黙している。
こうなると、残されたツンか姉者、二人の内一人がこの料理を食べなければならない。
ξ;゚听)ξ「……」
∬;´_ゝ`)「……」
食べたくない。
でも、食べさせたくない。
先輩と後輩。
互いが互いを気遣い、葛藤していた。
そこに、救世主が現れた。
(//‰ ゚)「私ガ……食ベマショウ」
(;゚"_ゞ゚)*゚ー゚);゚听)ξ;´_ゝ`)「!」
67 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 01:13:46.57 ID: OCa3kzy60
('、`*川「おーお前か横堀。実は一番仕事出来る奴だからな。今日はねぎらいの意味もこめて、食べさせてあげよう」
オサムたちは横堀に必死に合図を送っていた。
彼がこの料理を食べるというこの意味をわかっていないと思ったからだ。
しかし、横堀はちゃんとわかっていた。
この料理を食べれば、自分の体がどうなるか、彼はわかっていたのだ。
(//‰ ゚)(オサム様 ノ為ナラ……死ネル!)
(//‰ ゚)「……イタダキ……マス!」
料理を口に含んだ、その瞬間だった。
(//‰ ゚)「……ガガ……ガ……プスプスプス……シュウウウ」
横堀の全機能が、停止した。
68 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 01:15:58.87 ID: OCa3kzy60
( "_ゞ )「横堀……お前……!」
もう動かなくなった横堀に対し、涙を流すオサム。
横堀と過ごした日々が、走馬燈のように頭に浮かび上がった。
( "_ゞ )(お前のことは決して忘れないぞ……!)
('、`*川「さーて続いてはメインディッシュ的な料理よ」
('、`*川「やっぱりメインディッシュはオサム様に食べて欲しいなあ(はぁと」
( ゚"_ゞ゚)「え」
69 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 01:19:44.46 ID: OCa3kzy60
まさかの指名。
まさかの死刑宣告。
まだ時間があると思っていた。
その内朝になり寝る時間になったとき、食べずに逃げられるのではないか。
彼はその拙い希望に賭けていたのだ。
('、`*川「ささ、熱いうちにどうぞー」
その微かな希望の光は、今、絶たれた。
( "_ゞ )「しぃ……」
(* ー )「……はい」
( "_ゞ )「先に、リルルに会いにいくよ」
(*;ー;)「……はい……!」
71 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 01:22:07.19 ID: OCa3kzy60
オサムが料理を、食べた。
三口ほど食べた後、何も言わずに席を立ち、部屋から出て行った。
部屋の扉が閉められた直後、扉の向こうで何かが倒れる音がしたが、誰も見に行こうとはしなかった。
('、`*川「さて……あらら。後はデザートしかないわ」
(;゚ー゚)゚听)ξ;´_ゝ`)「!」
残り一品。
つまり、後一人が犠牲になれば、残りの二人は助かるのだ。
ξ;゚听)ξ「……」
ξ; )ξ(私……しかいないわよね)
この三人の中で、一番後輩であるツンが食べるのは、妥当な判断であろう。
しかし、この女がそれを許さなかった。
72 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 01:24:29.42 ID: OCa3kzy60
∬´_ゝ`)「私が食べるわ」
ξ;゚听)ξ「!」
姉者。
メイド歴3年。
二人の弟と一人の妹を持つ女であり、メイドたちの中でも姉貴分的な存在である。
ξ;゚听)ξ「姉さ……!」
∬´_ゝ`)「大丈夫」
('、`*川「よっしゃ。じゃあ姉者に食べてもらおう」
彼女が何故ツンの身代わりとなったか。
それは彼女が、ツンを始め、メイドたちのことを第二の妹のように思っているからである。
第二の故郷、第二の家族。
彼女はそこで、長女としての役割を果たそうと考えているのだ。
73 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 01:25:50.90 ID: OCa3kzy60
(*;゚ー゚)「……」
∬´_ゝ`)「……今まで、お世話になりました」
彼女たちの別れの挨拶は、短い言葉で終わった。
しぃは姉者を止めようとはしなかった。
彼女の決意を無駄にしまいと、歯を食いしばって堪えたのだ。
∬ _ゝ )「……」
ガチャン――!
デザートと名付けられた物体を口の中に入れた瞬間、彼女は皿に顔面ごと突っ伏した。
フォークを手に持ったままの体勢で、彼女はもう動かなくなった。
75 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 01:28:05.98 ID: OCa3kzy60
('、`*川「しぃさんとツンには悪いけど、料理はもう終了でーす」
(* ー )ξ )ξ「……」
('、`*川「後片付けは私がやるんで、二人は休んでていいですよー」
ペニサスは満足そうな笑みを浮かべながら、皿を片付け始める。
しぃとツンは何も言わずに部屋から出て行った。
部屋を出てすぐのところに、気絶しているオサムの姿があったが、彼に駆け寄ることはせずそのまま通り過ぎた。
76 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 01:29:13.47 ID: OCa3kzy60
――04時23分 屋上――
ξ゚听)ξ「……星……綺麗ですね……」
(*゚ー゚)「……そうね」
二人は屋上の手すりにもたれながら、夜空を見上げていた。
幾千の星空に、死んでいった彼らの姿を見た気がした。
実験終了。
生還者、二名。
第十四話「( ゚"_ゞ゚)オサムは料理実験の被験者にされたようです」 完
77 名前: ◆CnIkSHJTGA Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 01:31:40.55 ID: OCa3kzy60
あぶない! 猿寸前だったかな? 支援ありがとうでした。
さて、オサムもじわじわとストーリーが進んでおります。
一応は短編集の体裁を保ちますが、ぶっちゃけただの長編になる悪寒。
次回、一期の最終話です。
【第十五話】「刺客あらわる」
突如城を襲来してきたドラキュラ。
彼はある者からオサムの暗殺を命令された者だった。
数百年にもわたる因縁が、オサムとしぃを再び戦いへとかり出す!
「おっおっ。お前を殺しにきたお!」
【第十六話】「おわかれの時間」
城から消えたオサムとしぃ。
ペニサスはオサムたちが消える直前、ある話をしていた。
そして残された手紙に書かれていた内容とは。
「みんな、元気でな」
お楽しみに!
何か質問とかあればどぞー。
78 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/12/29(土) 01:33:57.55 ID: SKNB0FeyO
乙乙
15話の刺客わかりやすすぎるだろ……常考……