1 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:12:24.11 ID: CWucyZkf0
◆1

1485年、大陸東端の港町、ヴィップ──

からんからん、と町を見下ろす丘の上の教会、天を突き刺すその鐘楼から響く鐘の音が日曜の礼拝の終わりを告げる。
いつもなら潮風に乗って高く軽く響くその音が、今日は一筋の寂しさを帯びていた。

( ^ω^)「とーちゃん、安らかに眠ってくれお……」

先週、父親が死んだ。長くはない、と言われてから半年は経っていたのである程度覚悟は出来ていたが、
やはり唯一の肉親の死には心が痛んだ。

( ´ω`)「これで天涯孤独だお……」

不安はそれだけではない。商店を営んでいた父親が倒れてからは自分が古くからの奉公人たちと
店を切り盛りする羽目になったのだが、そこで世間の厳しさを思い知らされた。

あっさりと別の店に乗り換える長年のお得意様。
父親の言い付けを無視し、自分勝手に仕切りだす奉公人。
そして、父ほどの威厳も商才もなかった自分。

半年で、収益は4分の1にまで落ち込んだ。
それでも病床から笑って、

「初めから上手くいく奴はいない、お前にはお前のやり方がある」

と励ましてくれた父ももういない。

( ^ω^)「これからどうすればいいんだお…………お?」

 

 

2 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:14:22.98 ID: CWucyZkf0
俯き考えながら歩くうち、町外れの浜辺にまで来てしまったらしい。
忙しく船が出入りする港とは違って、高い崖に囲まれた水深の浅い浜辺に穏やかな波が打ち付けている。

( ^ω^)「……人だお!!しっかりするお!」

遠目には藻屑の絡まりついた魚の死体に見えたそれは、ブーンが揺すると微かなうめき声を立てた。

     「……ず……くれ」
( ^ω^)「……ず…・・・!! 水かお!これだお!」

ブーンが口に押し当てた水袋の中身を一気に飲み干すと、男は深く、長い息を吐いた。

     「……れを……に」

それを最期に、男の全身から力が抜ける。

( ´ω`)「息してないお……」
( ^ω^)「こんな所に置き去りにするのはかわいそうだお。教会まで運ぶお」

まだ暖かい遺体を背中に担ぎ上げ、ブーンは来た道を戻っていった。

 

4 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:15:54.41 ID: CWucyZkf0
( ^ω^)「司教様! 司教様! 大変だお!!」
     「どうしました、信徒ブーンさん……もしや、その方は」
( ^ω^)「浜辺で倒れてたのを見つけたんですが……手遅れでしたお」
     「身元のようなものは分かるのでしょうか?」
( ^ω^)「これといって……ん? これは何だお?」

死ぬ間際に男が胸元に伸ばした手。その陰に隠れて、内ポケットに折りたたんだ布が入っているのが見えた。

( ^ω^)「これは……羊皮紙かお?」
     「古い物のようですね。どこかの地図でしょうか?」

広げられた茶色がかった表に描かれた直線や曲線。それらと重なり、また間をぬうようにして複雑な動きを見せる太い線。
そこかしこに書き込まれた文字と余白に描かれている帆船や想像上の怪物の絵は、これが確かに地図であることを証明していた。
だが、

( ^ω^)「……読めないお」
     「ラテン語でもギリシア語でもないですね。申し訳ないですが、お役に立てそうにありません」
( ^ω^)「折角の手がかりなのにお……そうだ!」

 

5 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:16:53.49 ID: CWucyZkf0
ブーンの脳裏にある友人の姿が浮かぶ。

( ^ω^)「司教様、これが読めそうな奴を知っていますお!! 今から行って読んできますお!」
     「そうですか、では私は彼の葬儀を執り行っておきましょう。貴方に神のご加護を」

一目散に丘を駆け下り、煌びやかな邸宅や大商店の立ち並ぶ表通りを走り抜ける。目的地はこの先だ。
角をひとつ曲がると、通りの様子は一変する。複雑に曲がりくねり、年月を経た壁の黴臭さと腐った食物の臭いが混ざり合う裏町だ。
真夏の日差しですら奥までは届かない小道の突き当たり、その建物の屋根裏部屋にブーンの友達は住んでいる。

( ^ω^)「ドクオー!! いるかお!」

戸を開けた時の勢いで床に溜まった埃が巻き上げられる。積み上げられた書物の間から咳き込むような音が二、三回聞こえ、

('A`) 「あんまり勢いよく開けるなよな、本が崩れる」

そう言った声は久方ぶりの友人の来訪を歓迎していた。

 

6 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:18:01.85 ID: CWucyZkf0
◆2

('A`)「……で、コイツが問題の地図なんだな」
( ^ω^)「そうだお、司教様もラテン語でもギリシア語でも無いって言ってたお」

どちらも学問を志す者にとっては登竜門となる言語だ。たいていの地図や学術書はこの二言語で書かれている。
だが目の前の地図に書かれている、地形以上にくねり曲がった書体はそのいずれでもない。

('A`)「まかせろ、このドクオ様に読めない文字は無い」

不適な笑みを四方の壁に立ち並ぶ書物が見下ろしていた。この部屋にある文献だけでゆうに町の図書館の在庫は越えるだろう。
もしかすると首都にある図書館にすら無いような書物さえあるかもしれない。活版印刷が普及し始めた今、
代々写本と翻訳を生業としてきたドクオならではの異文化知識が物を言おうとしていた。

('∀`)「……プッ、ハハハハハ」
( ^ω^)「どうしたお? 何かわかったかお?」

地図に顔を落としてから5分もせずに吹き出したドクオを怪訝そうに見るブーン。
そのまま笑い続けながらドクオは片手の地図を指し示した。

('∀`)「ブーン、コイツはな、宝の地図だ」
( ^ω^)「!! それは凄いお! 一攫千金だお!」

喜びの声を上げるブーンを尻目にドクオは先を続ける。

 

7 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:20:59.23 ID: CWucyZkf0
('∀`)「だがな、これを描いた奴はピリ・レイスっていうんだ」

正確には写本だがな、と付け加える。

( ^ω^)「そのどこがおかしいんだお?」

疑問符を頭に浮かべるブーンを見て、ようやく笑いを収め、ドクオが語り出した。

('A`)「まず知ってもらいたいのは、この地図に使われているのはラウンジ語だ」
( ^ω^)「!」

ラウンジ語。ヴィップのあるニューソク大陸から海峡を隔てた大陸にある大帝国、ラウンジの公用語だ。
人種から宗教、生活習慣まで全てニューソクの人間とは異なる。

( ^ω^)「だったらそのピリ・レイスさんに手紙でどこの地図か聞けばいいお。ドクオならラウンジ語もわかるお」
('A`)「そいつは無理な話だな、ピリ・レイスは何年も前に死んでいる」
( ;^ω^)「…………」

意気消沈するブーンにドクオがさらに続ける。

('∀`)「それにな、ピリ・レイスっていうのは訳分からん地図を描きまくっていたことで有名なんだ。
曰く、海岸線が実在のものと一致しない、緯度経度がデタラメ、他の地図を写したらしいが元になる地図が見当たらない、とかな。
大方これも、そのうちの一枚だろう。エル・ドラド──黄金郷なんていかにもウソっぽいぜ」

再び笑いこけるドクオを他所に、ブーンはドクオが指した地図のある位置を見つめていた。

 

8 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:24:37.74 ID: CWucyZkf0
──黄金郷。
自分が死を看取ったあの男は、その間際に誰かにこれを渡そうとしていた。
自分の命の灯が消えるその一瞬まで、ドクオのいうような子供じみた戯言を信じられるものなのだろうか。
誰かに伝えようとするのだろうか。そうならば。

正直に、羨ましいと思った。
子供のようなその純粋さと、ひたむきさを。

( ^ω^)「ドクオ」

涙を拭いてこちらを見たドクオに告げる。

( ^ω^)「僕は、黄金郷を探すお」

 

 

9 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:27:21.33 ID: CWucyZkf0
◆3

∀の口がゆっくりとAになっていき、ため息が漏れる。

(;'A`)「ブーン、あれほど拾い食いはやめろって忠告したろ?悪いこと言わんから今から医者行って」
( ^ω^)「この年で拾い食いするほど意地汚くないお」
(;'A`)「じゃあなんでまたとつぜん急にそんなたわけた事を」
(#゚ω゚)「たわけた事じゃないお!!」

思わず大声が出た。

(#゚ω゚)「この地図を持っていた人は夢があったんだお! 死んでも誰かに託したい、諦めきれないものを見つけようとしてたんだお!
ブーンがここで見捨てたら、この人の夢はどうなるんだお! 誰からも忘れられてしまうお! そんなの悲しすぎるお!」
('A`)「ブーン……」

一気に怒鳴って胸のつかえが取れたおかげで少し冷静になれた。
ゴメンだお、と一言謝って話し続ける。

 

10 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: スルーされ過ぎワロスwww 投稿日: 2008/01/14(月) 08:29:46.33 ID: CWucyZkf0
( ^ω^)「とーちゃんが死んだのは知ってるだお?」
('A`)「……ああ、葬儀に行けなくてすまんな。なにしろ受注元が締め切りを半月も前倒ししやがったんで連日徹夜だったんだ」
( ^ω^)「それはいいお。……とーちゃんが倒れてから僕は店を任されていたお。でも、全然経営が上手く行かなかったお」
('A`)「…………」
( ´ω`)「奉公人も、お得意様も店を見捨ててしまったお。もう経営が成り立たない所まできてるお」
('A`)「ブーン、お前……」
( ^ω^)「死ぬ前にとーちゃんは『お前にはお前のやり方がある』と言ってたお。正直、僕がこのまま店を経営してても潰れるのは目に見えてるお」

だから、と息を吸い込み、次の一言を吐き出す。

( ^ω^)「僕は黄金郷を見つけるお。この地図に、ブーンの運命を賭けるお」

まっすぐに、ドクオの目を見て言う。

 

11 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:31:50.28 ID: CWucyZkf0
('A`)「……お前の心意気はわかったよ。けどな、こいつはあの『ピリ・レイスの地図』だ。この海岸線だって今まで見たことが無い」
( ^ω^)「世界は広いお。ラウンジ大陸だって、ショボン提督が見つけるまで南の端がどこにあるか分からなかったお。
この地図もまだ知らない場所の海岸線だって可能性もあるお」

ドクオは目をしばたたかせ、ぎゅっと瞑り、天井を見上げて大きく息を吐いた。

('A`)「──わかったよ、ブーン。もうお前を止めやしない」
( ^ω^)「あ、ありが」

礼を言おうとしたブーンを手のひらで制し、ただし、と付け加える。

('A`)「俺も連れて行け」
( ^ω^)「無理だお」
('A`)「即答するな。つーか、なんでお前が行くのに俺が行けない?」
( ^ω^)「ドクオはほとんど部屋から出ないお。ひ弱だお。虚弱体質だお。モヤシだお。チキン野郎だお」
(#'A`)「…………」
( #)ω^)「痛いお、急に何するお?」
(#'A`)「やかましい。それに俺無しでどうやってその地図を解読するんだ? 見たところ書かれているのはラウンジ語だけじゃないぜ?」
( ^ω^)「……それは現地でニューソク語の出来る人を探すとか」
('A`)「そもそもお前の言う通り、まだ誰も知らない場所の地形だって事なら、そんなところにニューソク語の出来る奴なんていると思うか?」
( ;^ω^)「……航海は危険がいっぱいだお。ドクオじゃ命がいくつあっても足りないお」
('A`)「危険だったらお前の方が危ない。罠とか簡単に引っかかりそうだからな。俺は遺跡調査の経験もあるからその点は万全だ」
(;;^ω^)「……それに、それに」
('A`)「ごたくは無しだ。お前が止めても俺は行くぞ」
( ^ω^)「……立場が逆だお」
('A`)「それにな、」

 

12 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:32:43.37 ID: CWucyZkf0

('∀`)「俺は、お前の決意に、俺の運命を賭けてみたくなったんだよ」

( ^ω^)「ドクオ……」
('∀`)「なんだ?」
( ^ω^)「そういう台詞は女の子に言った方がモテるお。ドクオがこの年まで一人なのも無理ないお」
(#'A`)「うるせーよ」

 

 

13 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:34:21.96 ID: CWucyZkf0
◆4

荷造りや航海に必要な物資を買い揃えるため、慌しく数日が過ぎた。
店は人手に売り払い、残った奉公人たちには慰労金と故郷までの旅費を与えて暇を出した。

出発の前日──

( ^ω^)「これで、旅に必要なものは全部そろったお。──この店とも今日でお別れだお」

最期の荷造りを終え、心の中でとーちゃん、ゴメンだお…と謝る。19年間、見慣れた石壁や木棚。
そういったものが明日からなくなり、波に揺られる新しい生活が始まる。
窓から見える町並みと港、そしてその向こうに広がる大海原をしばらく見つめ、きびすを返したところで
部屋の扉を規則正しくノックする音が聞こえた。

( ^ω^)「どうぞだお」
(‘_L’)「失礼します、坊ちゃん」

 

14 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:37:00.13 ID: CWucyZkf0
( ^ω^)「フィレンクトさん、どうしたんですかお?」

入って来た初老の名の男はフィレンクト。ブーンの父親が若い頃から店に勤めていた最年長の奉公人だ。
フィレンクトは一礼し、ブーンの机の前まで来ると厚い包み紙を机に置いた。

( ^ω^)「……なんですかお?」
(‘_L’)「考えたのですが、やはり私にはこの慰労金は受け取れません。代わりと言っては何ですが、私めを坊ちゃんの
航海にお連れ下さい。老骨に鞭打ってでも坊ちゃんのお役に立つ所存です」
( ;^ω^)「フィ、フィレンクトさん、どうしたんですかお!? 僕らが行くのは未知の場所ですから航海も危険が一杯ですお!
店のために何年も尽くしてきたフィレンクトさんにそんな事をさせるわけには行かないですお!」
(‘_L’)「危険があるというのなら、なおさらです。私は旦那様がお亡くなりになる前、坊ちゃんをよろしく頼むと申し付かっております。
旦那様の遺言を無下にするわけには参りません」
( ^ω^)「そんな……お気持ちはありがたいですお。けれどフィレンクトさんにも家族がいますお。ご家族の方を心配させるわけにはいきませんお」
(‘_L’)「坊ちゃん、」

フィレンクトは少し寂しそうに笑って言う。

(‘_L’)「私の家族はこの店です。いえ、今となっては、この店でした、と言うべきでしょうか」

 

17 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:38:32.67 ID: CWucyZkf0
(‘_L’)「旦那様に拾われるまで、私は孤児でした。その日を生き抜くために掏りや泥棒、果ては強盗の真似事までしていたでしょうか。
そんな事をして罰が当たったのか、仲間割れで深手を負い、雪の中で呻いていた私を救ってくださったのが旦那様です」
( ^ω^)「…………」

訥々とした声が、主を明日失う部屋の冷たい石壁に響く。

(‘_L’)「旦那様は私を本当の家族のように手厚く看病し、宿を与え、生きる糧を得るための業をも与えて下さいました。
そのご恩は報いても報い切れるものではありません。どうか、私にお供をさせて下さいますようお願い申し上げます」

深々と礼をされた。おそらく、この人は何を言っても引き下がらないつもりだろう。

( ^ω^)「フィレンクトさん、貴方の気持ちは分かりましたお。元からの知り合いがいたほうが僕も心強いですお。
こちらこそ今後もよろしくお願いしますお」
(‘_L’)「ありがとうございます。旦那様の為にも、誠心誠意をもってお仕えいたします、ぼっちゃん、いえ──ブーン船長」

 

 

18 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 実は初小説だwww 投稿日: 2008/01/14(月) 08:39:54.28 ID: CWucyZkf0
◆5

('A`)「これが俺たちの船か……なんつーか、ショボいな」

忙しく荷揚げをする人夫達、入港する船に矢継ぎ早に指図を出す港湾官、貨物表と睨み合いながら競りを始める問屋商、
出港の時間をせわしなく尋ねる乗客──それらの怒鳴り声が行きかう馬車の騒音すら掻き消す勢いで飛び交うヴィップ港は、
午後の賑わいのピークを見せていた。

('A`)「ブーンよ、もっとまともな船は手に入らなかったのか?」

あの後、ドクオやフィレンクトと共に船荷を確認するために港へと赴いたブーンは、明日からの我が家となる船を見上げていた。
もっとも、隣に停泊する軍のガレアス船はおろか、後ろで荷降ろしをしているキャラックにすら見劣りはするが。

(#^ω^)「……悪かったお、どうせブーンが買い叩かれた店の資本金じゃちっぽけな中古船しか買えないお」
(‘_L’)「まあ狭くとも暖かな我が家、と申しますし、いずれ坊ちゃんが交易商や冒険家として名を馳せれば、より大きな船も買えるでしょう」

風にたなびく三角帆を見つめながらフィレンクトが間を取り持つ。修理は済んでいるものの、潮風に曝されて色褪せた帆を垂れて
出港の時を待つカラベル・ラティーナはブーンの目にも小さく見えた。

( ^ω^)「さて、これで荷物も船もそろったし、いよいよ出港だお!!」
('A`)「……お前、何か忘れてないか?」
( ^ω^)「? 何も忘れてないお?」

やれやれ、というようにドクオが顔を顰め、溜め息をこぼす。

 

19 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:41:15.65 ID: CWucyZkf0
('A`)「お前、船を動かしたことあんのか?」
( ^ω^)「あるわけないお」
('A`)「自慢気に言うな」

胸を張って答えたらドクオにますます呆れた顔をされた。

(‘_L’)「私も船に乗ったことはともかく、自分で操縦した経験はございませんな」
('A`)「と、いうわけだ。航海に必須な三つの条件のうち、一つが欠けてるんだよ」
( ^ω^)「三つの条件ってなんだお?」
(;'A`)「あのなあ……」

昨日も話したろ、と前置きしてドクオが説明を始める。
曰く、船を動かすには三つの条件が必要だ。当然ながら船そのもの。航海に必要な日数分の食料と水。そして船を動かす人員。

( ^ω^)「で、何が欠けてるんだお? 船はここにあるし、食料と水は今積み込んでるお。水夫達なら昨日雇い入れて積み込みの作業中だお」
(#'A`)「お前の頭はカボチャか!空き樽か!三つ目滑車か!!」
(‘_L’)「航海士、ですね」

ドクオの堪忍袋の緒が切れかけた所でフィレンクトの的確なフォローが入る。

(‘_L’)「水夫でも文字通り『船を動かす』事は出来ますが、目的地に正確に、速く行き着くとなると天体や潮の動き、海図の読み方に
精通した航海士がいなければなりません。大海原で迷子にはなりたくないですからな」
('A`)「そう、その通り!フィレンクトさんカッコいい!! 分かったかこのスカタン! 今から航海士を探しに行くぞ!」
(‘_L’)「航海士でしたら普通は港湾管理局か酒場にいるでしょう。もっとも、昼間から酒場にたむろする様な輩には質の悪いのも多いと思われますが」
( ;^ω^)「そ、それじゃ早速港湾管理局に行くお!」
(‘_L’)「では、お二人ともお気を付けて。私はここで荷の積み入れの確認を致しますので」

 

20 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:42:35.59 ID: CWucyZkf0
──ヴィップ港湾管理局

「なに!? 水兵も士官も足りない!? こっちはゲイスポとの戦争が控えているんだ! 質は問わん、その辺からかき集めて来い!!」
「商船が文句を言ってきている? 馬鹿者、これは軍命だぞ! 強制徴用だ!! 文句を言った奴は海に叩き込め!」

( ^ω^)「なんだか荒れてるお……」

良質の航海士がいる、と聞いてやってきた港湾管理局は埠頭以上に混乱の極みに達していた。
ニューソク海軍の制服を着た大柄な軍人が、報告に来た水兵を怒鳴りつけている。

('A`)「ゲイスポとの戦争か……膠着状態だと聞いていたんだが、またドンパチ始めるつもりらしいな」
( ^ω^)「戦争だと物価が上がる分、品物は高く売れるけど、それを見越して海賊も多くなるお。警備も手薄になるからやり放題だお」
('A`)「で、どうする? この分だと航海士は徴兵を恐れてここには来ないだろうな」
( ^ω^)「そうなると、後は酒場だお……でも、いい航海士がいるかお?」
(;'A`)「行ってみなきゃわかんねーよ。って、ヤベェ!!」

 

21 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:43:26.17 ID: CWucyZkf0
ひとしきり怒鳴り終えた軍人が、水兵が飛び出していった部屋を見渡す。と、その目がブーンたちに留まる。

「ん? 貴様ら民間人か? 体格もそっちのヒョロヒョロはともかくお前は合格だな。どうだ、ニューソク海軍として戦う
栄光を与えてや」
(;'A`)「ブーン! 逃げるぞ!!」

士官の言葉を最後まで聞かずにブーンの手を引き、脱兎の勢いで港湾管理局を飛び出る。
そのまま人でごった返す埠頭を走り、息が切れる頃には港の外れまで来ていた。

(;'A`)「ヘェ、ヘェ、あ、危うく水兵にされる所だった……」

酸欠で天を仰いで息を継いでいるドクオが喘ぎつつ呟く。

( ^ω^)「ドクオは軍隊は嫌なのかお?」
('A`)「お前が好きなんだったら今から志願してこいよ。軍人とは名ばかり、給料も貰えずに奴隷のようにこき使われ、反抗したら見せしめに絞首刑だ」
( ;^ω^)「……遠慮しておきますお」
('A`)「ともかく、これで頼みの綱は酒場だけになったな。せいぜい腕のいい航海士がいることを祈ろうぜ」

 

22 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:44:35.16 ID: CWucyZkf0
──酒場『バーボンハウス』

フィレンクトの忠告通り、酒場の戸を開けると幾つもの柄の悪そうな声が二人を出迎えた。バーボン、ラム、ビール、その他さまざまな酒の匂いが
混ざり合い、酒場の内部はさながらバッカスの酒宴場の様子を呈している。

( ;^ω^)「昼間からすごい酒の匂いだお……嗅いでるだけで酔いそうだお」
('A`)「俺の住んでる下町でもここまでひどくはねぇな」
( ^ω^)「とにかく、なんか注文してから酔いつぶれてなさそうなのを一人ずつ当たってみるお、おねーさーん!!」

ウェイトレスとおぼしき女性の後ろ姿に声をかける。しかし、酒場内の喧騒がひどいのか、ブーンの声に気付いた様子は無い。

( ^ω^)「聞こえなかったのかお…? おねーさーん、注文お願いしますお!」

今度は聞こえるようにと、女性がこちらに来た時を見計らって、肩を軽く叩いて注文を知らせる。

ξ゚听)ξ「……何よ?」

媚を売るのとは正反対の、言葉の一句ごとに棘が生えているような返事が返ってくる。だが、そんな口調も振り向いた彼女の
長く垂らした絹糸のような黄金の巻き毛、キツいものの場末の酒場女とは一線を画す涼やかな目元、そして小柄ながら良く整った
顔立ちには不思議と似つかわしいと思えた。

( ^ω^)「お姉さん、お酒お願いしますお……って、何で子供がこんな所にいるんだお?」

その、一言が、まずかった。

 

23 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:45:38.62 ID: CWucyZkf0
( ;;゚ω゚)「お、おおおおぉおおお!? trじょgg9☆4g〒dねtぁぎじゃ£おぎ」
(;'A`)「ブ、ブーン!?」

急所に入った膝蹴りから鳩尾への流れるような前蹴り、そして倒れたブーンの上にマウントポジションを取り
ビールのジョッキで左右に殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る!!

ξ#゚听)ξ「この! アタシを!! よくも! 子供扱いしたな!! 死んで反省しろこのマヌケ面の豚野郎!!!」
(メメメ^ω^)「痛wwwwwちょwwwこれはwwwwテラヤバスwwwwwww」
(;'A`)「ちょっ、ストップ、ストーップ!!」

もはや痣とビールまみれになっているブーンをまだ殴り続けている女傑の両腕を後ろからつかんで引き起こす。
まだ興奮冷めやらぬ彼女も、自分の起こした修羅場が酒場の衆目を集めていることを知ると、身を翻して歩き去ろうとした。

ξ#゚听)ξ「アンタ、そこの豚の飼い主ならきちんと調教しときなさいよ! まったく、4歳から海に出てる私が子供扱いされるなんて心外だわ!」
('A`)「4歳、から……?」

とんでもない掘り出し物を見つけた、と数々の稀稿本や出土品を鑑定してきたドクオの直感が囁く。
少なくとも、ブーンが袋叩きにされて余りある位には。

('A`)「ちょ、ちょっと待ってくれ!! 話があるんだ!」

女は足を止めずに歩み去っていく。

('A`)「俺達は! 優秀な航海士を探しているんだ!!」

次第に遠ざかる女の足が、ピタリと止まった。不承不承、といった感じで不機嫌な顔を振り向かせる。

ξ゚听)ξ「……話だけなら、聞いてあげてもいいわよ」

 

25 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:47:24.08 ID: CWucyZkf0
◆6

('A`)「俺はドクオ、こっちの豚はブーン」
ξ゚听)ξ「ツン・デ=レーヴェンブロイよ。長いからツンでいいわ」
( ;^ω^)「ちょ、ドクオ、それは酷いお」

黙ってろ、という視線を二方向から浴びせられ、大人しくするブーン。
先程の店に迷惑料を払い、河岸を変えて少し離れた広場で話をすることにした。

ξ゚听)ξ「……ピリ・レイスの地図ね。噂は聞いていたけど、船乗り達の間の御伽噺だと思ってたわ」

ましてや、その地図を信じて身代まで売り払う馬鹿がいるとはね、と憐憫の籠もった視線をブーンに向ける。

( ^ω^)「それで」
('A`)「それで、船と資材、船員までは用意したんだが、航海士が見つからなくて探し回っていたんだ」

( ^ω^)(ブーンにも話させろお……)

ブーンが何かを口にする度にドクオに遮られる、そんな鼬ごっこがしばらく続いていた。
もちろんドクオもブーンの意見は分かっていたが、ブーンが口を開く度、ツンが眉をひそませていたからだ。
ここで彼女を逃すわけには行かない、その一点が普段人と話す事すら億劫なドクオに持てる会話術の全てを総動員させていた。

 

26 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:48:20.75 ID: CWucyZkf0
('A`)「それで…引き受けてくれるかな? もちろん給料はきちんと払うし、発見物の報酬は等分する」
ξ゚听)ξ「…………」

ドクオが説明を終え、3人の上に沈黙が降りる。
ツンは噴水の端に腰掛け、俯きこんで何か思案している。
ドクオが自分の発言を反芻している間、ブーンはそんな彼女の様子を観察していた。
酒場では照明の暗さも相まって、子供のように見えたツンも午後の陽射しの下では年相応の女性に見える。
ややスレンダーで小さくまとまってはいるものの、しっかりと出るところは出、引っ込むべき所は引っ込んでいた。

( ^ω^)(これで性格さえ良ければ最高なのにお……。天は二物を与えずだお)

自分を凝視するブーンの視線に気付いたのか、睨み付ける様に視線を上げ、口を開いた。

ξ゚听)ξ「やっぱりこの話は無かったことにして」
(;'A`)「!」
( ;^ω^)「!!」

 

29 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:49:16.49 ID: CWucyZkf0
やはり、というべきか、まさか、というべきか。
二人の異なる思惑を他所に、ツンは言葉を続ける。

ξ゚听)ξ「やっぱり、ピリ・レイスの地図なんて信憑性も何もあったものじゃないし、行くとしたら未踏地域の航海になる訳でしょ?
貴方達を見てると、探検航海の割に無計画な所が多すぎるわ。いくら報酬折半といっても、命あっての物種だし、ね」

それじゃ、と腰を上げて手を振り、立ち去る──それでお終いのはずだった。

( ^ω^)「待つお!!」

別人のような気迫の籠もった声に、足が否応なく停まる。

( ^ω^)「ツンには夢が無いのかお!?」
ξ゚听)ξ「夢……ですって?」

自分を二度も呼び止めた男に、二割増の強烈な視線をぶつける。
しかし、ブーンはそれを真っ向から受け止め、自分の目を見据えてきた。

 

30 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:50:23.08 ID: CWucyZkf0
( ^ω^)「この地図には夢が詰まっているお」

けれど、言っていることは子供の飯事に等しい。夢でお腹は膨れないのよ、と軽く受け流す。

( ^ω^)「違うお。ブーン一人の夢だったらそうかもしれないお。でも、これはブーンが見つけた人が、誰かに伝えようとして、
それをブーンが拾い上げて、ドクオや、フィレンクトさんや、みんなの期待を背負ってやっている事だお」

( ^ω^)「この地図は、自分一人じゃなくて誰かの為の夢なんだお」

──誰かの、為の、夢。

自分一人の為じゃない、誰かの為に叶えたい夢。

ξ゚听)ξ(そんな夢が、私にもあったな……)

胸元のロケットを、ギュッと握り締める。

ξ゚听)ξ「……あ〜もう、仕方ないわね! いいわ、アンタ達の夢に少しだけ付き合ってあげる。その代わり次の二つの条件は必ず守ること」

一つ。目的地の選択はブーン達に任せるが、行く為の準備、航路については一切口出しをしない。
二つ。クルーの誰かが自分を本気で怒らせるような事があれば、いつでも船を降りる権利を持つ。

 

31 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:51:08.03 ID: CWucyZkf0
( ^ω^)「それでいいお」
('A`)「了解した」
ξ#゚听)ξ「それじゃ、以後よろしく。それと勘違いしないでよ、あくまでアンタ達の杜撰な計画じゃあっという間に遭難するのが目に見えてるから
私がボランティアの意味で手伝ってあげてるだけだからね!!」
( ;^ω^)(すごい意地っ張りだお)

航海士が決まり、出航の準備が完了したことを喜ぶ二人を見ていると、どうしても訊ねてみたくなった。

ξ゚ー゚)ξ(──ねぇ、もし私に別の夢があっても、それを叶えてくれる?)

当然だお、と目の前ではしゃぐ男なら言い切るだろう。叶えるまでの困難や苦労など考えもせず、少年のように、ただ、真っ直ぐに。
その愚直なまでの真っ直ぐさが、今のツン・デ=レーヴェンブロイには少し眩しかった。

 

 

32 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:52:26.13 ID: CWucyZkf0
◆7

夜明け少し前、鈍色から鮮やかな菫色に染まってゆく空に、すじ雲が微かにたなびく。
細波が揺れる海を見下ろすヴィップ山から強い風が、これから巣立つ旅人を送り出すかのように海へと吹き降ろしていた。
天気は快晴。満潮時刻は明け方過ぎ。出発には絶好の日和だった。

( ^ω^)「ドクオ、ドクオ! 起きるお、出発だお!!」
('A`)「ん〜、あと10分……Zzz」
( ^ω^)「そんな場合じゃないお! 早くもやい綱を解くのを手伝うお!!」
('A`)「……うぁ? おはようブーン…それじゃお休み」
( ^ω^)「ドクオは朝に徹底的に弱いお……もうほっとくお」
(‘_L’)「坊ちゃん、錨の巻き上げは終わりました。いつでも出港可能です」
ξ゚听)ξ「……操舵輪の具合、よし。……信号旗、よし」

各自最後の点検が終わり、港湾管理局からの出港合図を待つだけになる。

( ^ω^)「見送りのいない船出かお……ちょっと寂しいお」
('A`)「何いってんだよ、船長がそんな状態じゃみんなの士気も下がるってもんだ」
( ^ω^)「ドクオ、いつ起きたお?」
('A`)「ついさっき。ツンさんに海水ぶっ掛けられてな」
( ^ω^)「寝坊するのが悪いお」

たわいない話をしながら暁の海を見つめ、時が過ぎるのを待つ。

( ^ω^)「なあ……ドクオ」
('A`)「ん?」
( ^ω^)「ドクオは……怖くないかお?」

 

33 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:53:41.22 ID: CWucyZkf0
('A`)「なんだよ、今更怖気づいたか?」
( ^ω^)「そうじゃないお……僕自身はワクワクしてるお」
( ^ω^)「全然知らない人が持っていた、本当かどうかも分からない地図を頼りに、僕はドクオや、ツンや、
フィレンクトさんを巻き込んでしまってるお。成功の保証も、それどころか生きて帰ってこれる保証も無い旅にだお」
('A`)「なんだそんな事か」

プッと吹き出し、ドクオはブーンの首に腕を回す。

( ;^ω^)「おおおおおおお!? いきなり何するんだお!」

突然ヘッドロックを掛けられ、もがきながら奇声を上げるブーン。暴れるブーンに構わず、ドクオは先を続けた。

('∀`)「あのな、俺もツンもフィレンクトさんも『乗りたくて』この船に乗ってるんだ。俺たちを巻き込むとかどうとか、
そんな後ろ向きのことを考える暇があったら、ちっとはどうやってお宝を持って帰るかとかそういう話をしろよ」

腕から抜け出したブーンに追い回されながら、さらに強くなる山風に掻き消されないよう、大声で叫ぶ。

('∀`)「俺たちはこれから! 夢を見つけに行くんだ!! そうだろう?」

終いに息が切れ、甲板に二人して大の字に寝転ぶ。

( ^ω^)「……そうだお。必ず、必ず見つけてやるんだお!!」
ξ゚听)ξ「まったく、本当に二人ともガキなんだから」
(‘_L’)「お互いを補い合える、いいコンビだと思いますよ、私は」

 

34 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:54:37.92 ID: CWucyZkf0
港湾管理局の旗竿に幾つもの信号旗が登り、それに呼応して一隻、また一隻と滑るように埠頭を離れていく。

( ^ω^)「……ようやくだお」
( ^ω^)「ようやく、この船の航海が始まるお」
( ^ω^)「…………『この船』?」
( ;^ω^)「……そういえば名前を付けるのを忘れていたお」

( ^ω^)「というわけで、どんな名前がいいかお?」
ξ゚听)ξ「呆れた」
('A`)「まさか出港間際になって決めるとはな」
(‘_L’)「買い取った際に付いていた名前でいいのでは?」
( ^ω^)「僕らの初めての船出だお。きちんとした名前を付けたいから候補を挙げていくお」
('A`)「ノストロモ」
( ;^ω^)「……船倉で得体の知れないモンスターが繁殖しそうだお。却下だお」
ξ゚听)ξ「メアリ・セレスト」
( ;^ω^)「……乗組員が誰もいなくなりそうで怖いお」
(‘_L’)「ノーチラスというのはどうでしょう?」
( ;^ω^)「……この船に潜水機能は無いお」
(#^ω^)「みんなもっと真剣に考えるお」
ξ゚听)ξ「じゃあアンタの考えたのを言いなさいよ」
('A`)「そこまで言うんならよっぽどいい名前なんだろうな」
( ^ω^)「それじゃあ発表するお」

 

37 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:55:47.08 ID: CWucyZkf0
エスポワール
『希望』

ξ゚听)ξ「…………」
('A`)「…………」
(‘_L’)「…………」
( ^ω^)「ど、どうかお?」
('A`)「なんか船倉で闇賭博でも開催してそうな名前だな」
ξ゚听)ξ「安っぽい集合住宅に見栄張って高そうな名前つけた感じね」
( ;^ω^)「ヒドスwww」

('A`)「……でもまあ、船長の案だし、結構悪くないかもな」
ξ゚听)ξ「『希望』か…。新しい航海のための名前としては、幸先いいかもね」
(‘_L’)「私は坊ちゃんの案でよろしいかと存じます」

( ^ω^)「じゃあ、決まりだお」

決定を待っていたかのように、信号旗がエスポワール号の出港を指示する。

( ^ω^)(いよいよ出発だお……とーちゃん、地図を持ってたおじさん、天国から見守っててくれお……)

もやい綱が解かれ、三角帆一杯に追い風を受けて船は奔り出す。
まだ見ぬ困難と、それぞれの見る夢へと向けて。

( ^ω^)「エスポワール号、出港だお!!」

<第1話・了>

 

 

39 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:56:51.41 ID: CWucyZkf0

◆幕間

──洋上にて

('A`)「とまあ、これが今までの出来事だな」
( ;^ω^)「出港するまでエラく時間がかかったお」
ξ゚听)ξ「第1話だし、巻頭カラー合わせたらこんな物でしょ」
( ^ω^)「……巻頭カラー?」

ξ;゚听)ξ「と、とにかく!! さっさとどこへ行くか決めなさいよ! 航路とか決めるの私なんだからね!
あんまり無茶な事言わないでよ!!」
( ^ω^)「それはもちろん黄金郷」
(‘_L’)('A`)ξ゚听)ξ「「「無理」」」
( ;^ω^)「ちょwwwwww」

 

41 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:57:30.13 ID: CWucyZkf0
ξ#゚听)ξ「あのねぇ、どこの海岸かも分からないのに、いきなりその内陸の黄金郷になんて行ける訳ないでしょ!」
('A`)「ピリ・レイスの地図なんてあやふやなものに頼ってるんだ。まずは地図についての情報収集が先だな」
(‘_L’)「その前に、現在の資金だけではほとんど探索すら出来ないでしょう。安定した資金源の確保が必要かと」
('A`)「安定した資金源ねぇ……手近な遺跡を探索するとか?」
(‘_L’)「いえ、もっと確実な収入源です」
ξ゚听)ξ「交易による収入ね。ブーンなら……知ってそうにないわね。店潰したくらいだし」
( ^ω^)「商人の息子をバカにし過ぎだお。港町によっては地勢、国際情勢によって手に入らない品物があるお。
だからその品物が特産品になっている港から安値で仕入れて、目的地で高く売るお。すると差額が利益になるお」
('A`)「さらに2点間、3点間で特産品を売り買い出来れば空荷で航海する必要がなくなるから資金の減りを防げるな」
ξ゚听)ξ「特産品なんかは港町で聞き回るか、交易ギルドにお金を払えば教えてもらえるけど……」
(‘_L’)「出来るだけ自分の足で探し回ったほうが良いでしょう。最初に見つければ貿易ルートを独占できますからな」
( ^ω^)「じゃあ早速交易開始だお!ガッポガッポ儲けて早く大きい船を買うお!」
ξ゚听)ξ「それで、交易ルートの目星くらいは付けてるんでしょうね?」
( ;^ω^)「…………」
( ;ω;)「…………」
ξ;゚听)ξ「わ、分かったからいきなり泣かないでよ! しょうがないからお勧めのルートを教えてあげるわよ。
次からはちゃんと自分で調べなさいよ!」
( ^ω^)「やっぱりツンは優しいお」
ξ////)ξ「こ、この……バカ!!」

 

42 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: >>40あたりwww 投稿日: 2008/01/14(月) 08:58:18.49 ID: CWucyZkf0
ξ゚听)ξ「ルートとしてお勧めなのは出発地とプラス島を結ぶ交易路ね。プラス島には大規模な砂糖農園があるわ。砂糖はニューソク大陸なら
どこでも一定の需要があるから安定した資金源になるわね。代わりにヴィップ港の穀物をプラス島で売る、と」
( ^ω^)「2点間交易が出来るからロスも少ないお」
(‘_L’)「僭越ながら…」
( ^ω^)「フィレンクトさんも何かありますかお?」
(‘_L’)「はい、旦那様に教えていただいた交易路なのですが。ロビー港とニーソク港を結ぶルートです。貴族の避暑地でもあるロビーでは上質のワインが、
水の都ニーソクでは繊細なガラス器が特産品となっています。どちらも奢侈を好む貴族が多いので高収入を得られるかと」
ξ゚听)ξ「でも間にゲイスポの領土があるのよね…平時だったらともかく、今は海賊も多いだろうし……」
( ^ω^)「ハイリスクハイリターンのルートですかお……」
('A`)「俺が推すのはラウンジ帝国内の交易ルートだな」
( ;^ω^)「ちょ、海峡を越えるのかお!?」
('A`)「ああ、ラウンジ首都と古の町クラシックを結ぶルートだ。ラウンジからは手織りの絨毯を、クラシックからは遺跡から出土した美術品を運ぶ。
ラウンジ首都の大図書館で地図の情報も手に入るしな」
(‘_L’)「ですが、外国人の交易は関税がかかりますね。おそらく、儲け自体はツンさんのルートと同じくらいかと」
( ^ω^)「地図の手がかりか……迷うお」
( ^ω^)「うーん……こういうときはみんなに聞くお! オーディエンス!!」

第2話のルートは

1.ヴィップ〜プラス島間(交易品:砂糖、穀物)収入低、安全高
2.ロビー〜ニーソク間 (交易品:ワイン、ガラス器)安全低、収入高
3.ラウンジ〜クラシック間(交易品:絨毯、美術品)収入やや低、安全中、追加情報あり

 

43 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 08:59:54.68 ID: CWucyZkf0
( ^ω^)「1時間以内に一番多かった選択肢で続きを書くお」

( ^ω^)「あと、筆者はこれが初小説、初ブーンですお。感想、批評、要望、質問お待ちしてますお」

 

48 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 09:08:44.84 ID: CWucyZkf0
( ^ω^)「ちなみにどこかのレスにもありましたがこの小説は某コ○エーの大航海時代を
モチーフにしてますお」

( ^ω^)「でも筆者のプレイ歴はUの段階で止まってますお」

( ^ω^)「さらに海洋小説書くのにホーンブロワーすら読んでないゆとりっぷりですお。
どちらかというとミステリとSF好きですお」

( ^ω^)「なので、宝島、海底二万マイル、十五少年漂流記、不思議の海のナディアあたりから
ネタを引っ張ってくるかもしれないですお。寛大な目で見てやってくださいお」

 

44 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 09:00:27.48 ID: j0m8Zi01O
3

 

 

46 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 09:04:33.21 ID: LFe2NdPv0
美術品は貴族華族に売れるからクラシック港からニーソク港のルートで行こう!
という発想は無理そうだから2

 

53 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 09:17:07.26 ID: CWucyZkf0
>>46

('A`)「俺から補足しておくと、現時点でラウンジ帝国は国際貿易を国内商人だけの
特権として制限している。だからその高収益ルートは不可能なんだ、スマン」

('A`)「ま、外国商人でも皇帝のお墨付きがあれば話は別だがな」

 

50 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 09:10:51.82 ID: nuOcIMP4O
1
チキンチキン

 

54 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 09:17:34.73 ID: pEI4HyO1O
3かな

 

55 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 09:29:08.29 ID: gzWiVazi0
3の追加情報

 

57 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 09:34:09.65 ID: kvzr2+UzO
3だな

 

58 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 09:39:53.34 ID: 5fevHaap0
4:酒場のブラックジャックで一攫千金を狙う

 

60 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 09:58:21.52 ID: N4gSBY9JO
3

 

61 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/01/14(月) 10:00:36.65 ID: CWucyZkf0
( ^ω^)「では、締め切らせていただきますお」

( ^ω^)「選択肢は3で決定のようですお」

( ^ω^)「続きは今夜にでも投下いたしますお」

( ^ω^)「では皆さん、よい一日お」

>>59

( ^ω^)「了解ですお。実在の都市名を微妙に改変したのを混ぜますお」

 

 

 

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