1 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/11/08(木) 01:17:14 ID: BvGsXNti0
人間と猫の、中間的な種族。
人は俺達の事を猫耳族と、そう呼んだ。
種族が違うといっても、言葉は喋れるし、知能だって人間のそれと何ら変わり無い。
ただ、鋭い爪やふさふさとした毛で覆われている猫耳など、猫の名残が残っている箇所もある。
猫耳族は人間達と共に暮らし、生活を営んできた。
そんな平和な時代が、俺が生まれるよりもずっと昔にあったと聞いた。
いつからか、猫耳族は悪魔の使いと恐れられ人間達に狩られ始めた。
元々少なかった猫耳族の数は減少し、生き残った猫耳族は逃げるように各地に散った。
ある者は、刺々しい岩石が立ち並ぶ険しい山へ。
ある者は、人気のない廃村へ。
行き先は大抵、そのような人間達の目に付かぬような場所だ。
2 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/11/08(木) 01:19:21 ID: BvGsXNti0
俺も、その逃げ延びた猫耳族の一人だった。
人間に見つからないよう、森の奥深い場所でひっそりと暮らしている。
ここは食料にも困らないし、近くに川もある。
生活するには十分すぎるほどの場所だった。
そして、今日も狩りを終えて、草木で作った住処へと帰ってきた訳だが……
( ,,゚Д゚)「……誰?」
川 - -)「……」
俺の住処に、我が物顔で眠っている女がいた。
( ,,゚Д゚)猫耳ギコのようです
3 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/11/08(木) 01:20:35 ID: BvGsXNti0
第一話
心地よさそうに眠っている女の頭には、ふさふさとした猫耳が生えていた。
どうやら人間では無く、同じ猫耳族のようだ。
どちらにせよ、俺の寝床を占領されていては、とても困るわけで、
( ,,゚Д゚)「……おい」
川 - -)「……」
呼びかけてみる。
だが、女はまるで反応しない。
( ,,゚Д゚)「おーい、生きてんのかゴラァ」
川 - -)「……ん、むぅ」
体を揺さぶってみると、女は僅かに声を漏らす。
それから、ゆっくりと上半身を起こし、瞼を擦りながら目を覚ました。
5 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/11/08(木) 01:25:57 ID: BvGsXNti0
長い黒髪に、大きな瞳。
美しい女だった。年は……見た所、俺と同じ十五歳くらいだろうか。
川;゚ -゚)「お前誰だ?」
( ,,゚Д゚)「そりゃこっちの台詞だ」
俺の顔を見るなり、女は驚いた様子でそう言い放った。、
いや、驚くのはむしろ俺の方だろ。
『住処に戻ったら、女が寝ていた』
そんな発情期の男が考えそうなシチュエーションが、実際に起こっているのだから。
6 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/11/08(木) 01:27:08 ID: BvGsXNti0
川 ゚ -゚)「……む? その耳。君も猫耳族か」
俺の猫耳を見つめ、女は安心したように言った。
( ,,゚Д゚)「ああ。人間みてえに取って食ったりしねぇから、安心しろ」
川 ゚ -゚)「そうか、警戒してすまなかった。私の名はクー。
君は……」
ぐぅ、という腹の音が、クーの言葉を遮った。
恥じる様子も無く、腹をさすりながら俺の方を見つめている。
( ,,゚Д゚)「ギコだ」
俺は名を名乗り、腰につけている袋から木の実を二、三粒取り出した。
8 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/11/08(木) 01:29:14 ID: BvGsXNti0
( ,,゚Д゚)「食えよ。腹減ってんだろ?」
川 ゚ -゚)「しかし……」
( ,,゚Д゚)「遠慮すんな。木の実なんざ、この森にゃ腐るほどあるんだ」
再びぐぅ、という音がクーの腹から鳴り響く。
クーは「恩に着る」と言いながら、木の実をパクパクと食べた。
川 ゚ -゚)「ハムッ! ハフハフ、ハムッ!」
( ,,゚Д゚)「お、おい、落ち着け。そんな急いで食わなくても木の実は逃げねぇよ」
10 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/11/08(木) 01:32:50 ID: BvGsXNti0
川 ゚ -゚)「ごちそうさま」
木の実を食べ終えると、クーは両手を胸の前で合わせる。
それは、確か人間が食事を終えた時にする動作だ。
( ,,゚Д゚)「お前、変わってるな。どこから来たんだ?」
川 ゚ -゚)「わからん。川に流されて、ここに辿り来た」
( ,,゚Д゚)「川に流されて?」
川 ゚ -゚)「ああ。私達の住んでいた所が、人間に見つかってしまってな。
追っ手から逃げる際に川に飛び込んで、ここまで流されて来た」
( ,,゚Д゚)「……そうか」
どうやら、色々事情があるようだ。
俺は深くは聞かず、ただ相槌を打った。
12 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/11/08(木) 01:35:39 ID: BvGsXNti0
川 ゚ -゚)「……ん? そういえば、しぃはどこだ?」
( ,,゚Д゚)「しぃ?」
川 ゚ -゚)「私の妹だ。私と一緒に川へ飛び込んだ筈なんだが……。
ギコ、見かけなかったか? ショートヘアの女の子だ」
( ,,゚Д゚)「いや、見かけてねぇな」
川 ゚ -゚)「……」
俺がそう言うと、クーは悲しそうな目をして俯く。
そんな様子のクーを見て、なんだか俺まで悲しくなった。
13 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/11/08(木) 01:37:12 ID: BvGsXNti0
( ,,゚Д゚)「まぁ、この森は食料が豊富だから、辿り着いてるなら大丈夫だろう」
川 - )「……」
( ,,゚Д゚)「あー、その、なんだ。元気出せ」
こういう時、パッと慰める言葉が出てこない自分が恨めしい。
そんな俺に出来ることは、クーの頭を撫でてやることくらいだった。
子供の頃、俺が泣いているとお袋はこうやって慰めてくれた。
……そのお袋も、もうこの世にはいないのだけれど。
14 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/11/08(木) 01:39:31 ID: BvGsXNti0
川 ゚ -゚)「……ギコ」
( ,,゚Д゚)「うん?」
俺が頭を撫で続けていると、クーは上目遣いで俺を見つめた。
川;゚ -゚)「その、慰めてくれる気持ちはとても嬉しい。
だが、頭を撫でられるのはかなり恥ずかしいんだが」
( ,,゚Д゚)「あ、すまん。嫌だったか?」
俺はクーの頭から手を離す。
川;゚ -゚)「いや、嫌では無いかな……もしろ気持ちいい。
……って、何を言わせるんだっ!」
クーは少し頬を赤らめ、何故か怒っていた。
15 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/11/08(木) 01:40:47 ID: BvGsXNti0
( ,,゚Д゚)「え、じゃあ何で怒ってるんだ?」
川;゚ -゚)「そうじゃなくてだな。私は女で、君は男だ。
そして、頭を撫でるという行為はだな、その、甘美な雰囲気を持っているというか」
( ,,゚Д゚)「?」
クーはますます顔を赤くし、俯いたまま黙り込んでしまった。
何か気に障るような事でもしてしまったのだろうか?
よくわからん。
16 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/11/08(木) 01:45:03 ID: BvGsXNti0
( ,,゚Д゚)「それで、お前これからどうするんだ?」
川 ゚ -゚)「え?」
( ,,゚Д゚)「これからの事だよ。妹さん、探しに行くのか?」
川 ゚ -゚)「ああ。しぃはまだ幼いし、一人ぼっちになって泣いているかもしれん。
早く見つけてやらないと可愛そうだ」
そう言うと、クーは立ち上がり外へと出る。
川 ゚ -゚)「邪魔をしたな。それじゃ、私は行くよ」
( ,,゚Д゚)「俺も付き合おうか?」
17 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/11/08(木) 01:45:31 ID: BvGsXNti0
川 ゚ ー゚)「いや、大丈夫だ。そこまで迷惑は掛けられんよ。
世話になった。ありがとう、ギコ」
俺に向かい、頭を下げるクー。
( ,,゚Д゚)「なぁに、礼には及ばねーよ。同族のよしみだ。
妹さん、見つかるといいな」
俺が笑顔を浮かべながらそう言うと、クーも微笑を返してきた。
お、やっぱり笑った顔も可愛いな。
川 ゚ -゚)「それじゃ、また縁があったら会おう」
そう言い残し、クーは俺に背を向け森の奥へと歩いていった。
19 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/11/08(木) 01:50:56 ID: BvGsXNti0
( ,,゚Д゚)「さて、と。昼飯でも食うか」
俺は取ってきた獲物を広げる。
それにしても、クーか。結構可愛かったな。
( ,,゚Д゚)「……って、何考えてんだ俺は」
意味深な考えを頭から取っ払う。
( ,,゚Д゚)「飯食お、飯」
最近独り言激しくなったな。これはもう末期かもしれん。
俺は道具で火をおこし、森で取ってきたキノコや鳥を炙った。
20 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/11/08(木) 01:55:39 ID: BvGsXNti0
( ,,゚Д゚)「うめぇwww」
香ばしい匂いが鼻を抜け、自然そのままの味が舌を刺激する。
この森に生えるキノコは最高にうまい。自然の恵みに感謝だ。
川 ゚ -゚)「……うまそうだな」
( ,,゚Д゚)「おお、そりゃあここのキノコはうまいよ。
この森に来て、このキノコを食わずに帰るのはアホのすることよ」
川 ゚ -゚)「……」
( ,,゚Д゚)「……」
って、なんでさっき出てった人がここにいるんですか。
川 ゚ -゚)「君は今、疑問に思っているだろ。
どうして、さっき出て行った私がここに戻ってきてるのかと」
( ,,゚Д゚)「うん」
川 ゚ -゚)「実はな……」
22 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/11/08(木) 01:59:40 ID: BvGsXNti0
クーの口から、とんでもない事実が言い放たれた。
川 ゚ -゚)「道に迷ったんだ」
( ,,゚Д゚)「……」
それはひょっとしてギャグで言っているのか?
川 ゚ -゚)「ギャグではない。真っ直ぐ来たつもりが、何故かここに戻ってきてしまったのだ」
心の声まで読まれてしまった。
とにかく、だ。これはかなりの重症である事は間違いない。
( ,,゚Д゚)「うん、やっぱ俺、探すの手伝うよ」
川 - )「かたじけない。そうしてくれると助かる」
( ,,゚Д゚)「気にすんなって。ほら、行こうぜ」
24 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 07/11/08(木) 02:05:59 ID: BvGsXNti0
俺はクーと一緒に、森の中へと入っていく。
丁度、俺達の真上に輝いている太陽が、木々を美しく照らしていた。
( ,,゚Д゚)「それで、クーはどこら辺に流れ着いたんだ?」
川 ゚ -゚)「すまん、覚えてないんだ。ただ、滝の音が近くで聞こえたな」
( ,,゚Д゚)「オッケー。じゃあ、しぃちゃんもその近くにいるんじゃないかな?
そこら辺を中心に探してみますか」
俺達は滝のある場所を目指し、森の中を歩き始めた。
第一話 おしまい