4 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/22(土) 23:54:23.48 ID: rpJa0C6A0
【March 6】

窓の外には昨日から引き続き、灰色の世界が広がっていた。
しかも今日は雨というオマケまでついている。

しかし、1週間もとうとう終盤戦。
木曜日である今日と、金曜日である明日。
あと一ふん張り、というところだ。雨なんかに負けているわけには行かない。

それを乗り切ればもうあっという間に卒業式。
準備は何事も無く、順調に進んでいる。

―――――――――――――――只一つを除いて。

 

6 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/22(土) 23:56:22.92 ID: rpJa0C6A0
 
( ^ω^)「あのー?」

川 ゚ -゚) 「・・・・・。」

お忘れの方も多いと思いますが、僕の席とクーの席はすぐ近くにある。
現在も1mと離れていない距離で彼女に話しかけているのだが、全く相手にされない。

川 ゚ -゚) 「私なんかにかまってないで、デレと合唱でもしていればいい。」

たまに口を開いたと思えばよほど僕に消えて欲しいのか、こんな事ばかり言っている。
取り付く島も無いとはこのことだった。

( ^ω^)「じゃあ練習してくるお」

僕にできる事といえば、早々にこの場を立ち去る事くらいだ。

 

7 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/22(土) 23:59:01.16 ID: rpJa0C6A0

それからの数時間、僕はみんなに交わり練習を始めた。
今日、新たに分かった事がある。
ショボン―――彼は凄い。

ロックバンドの曲を合唱曲に編曲するのが簡単ではないのは分かりきっているだろう。
彼はそれをやってのけたのだ。
出番は少ないが、彼が恐らく最も貢献しているだろう。

( ^ω^)「お前もそう思うお?ドク・・・・あれ?」

ドクオの姿が見当たらない。
いつもならこういうとき必ず出てきてくれるのだが。

 

8 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/23(日) 00:03:31.40 ID: kIwfmF4P0
 
(ドンドンドン、出せーー!!)

( ^ω^)「昨日一緒にいたはずだけど・・・・あれ?欠席になってるお」

(お願いします!誰でもいいからぁ〜)

( ^ω^)「昨日は確か・・・・・・・あ。」

まさか昨日からトイレにいたというのか。
ちょっとした悪戯がここまで上手くいくとは驚きだ。
一刻も早い救助が必要だが、生憎僕にわざわざ殴られに行くような趣味はない。

( ^ω^)「ドクオ・・・君の死は決して忘れないお。」

まもなくチャイムが鳴る。
帰りのホームルームというのは、なんだかんだ言って長引くものだ。
それは遥か数千年、中国が三国に分かれ天下を争うよりも前に決まっていた事なのだ。

僕はドクオの叫び声をBGMに眠りに落ちていった。

 

10 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/23(日) 00:05:34.18 ID: kIwfmF4P0

―――――――「・・・・・きろ」

女の人の声がする。
僕はこの人を知っている。

「起・・・・・・ろ・・・・」

誰だったか・・・・思い出せない。
毎日この声を聞いている気がするのに、僕の頭の中には何も浮かんでこない。

 

12 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/23(日) 00:08:22.47 ID: kIwfmF4P0

('、`*川「起きろって言ってんだこの豚野郎・・・・」

( ゚ω゚)「ブヒィッ!?」

耳元で囁かれた小さくも、十分に気迫が込められた声。
僕の頭上ではその声の持ち主―――ペニサス先生が名簿を構えていた。

( ^ω^)「タ、タンマだお!!」

('、`*川「ったく・・・居眠りとはいい度胸ね」

勿論名簿は脅しなどではない。
この教師はやるといったらやるのだ。
構えれば振り下ろすし、振りかぶれば力いっぱい放り投げる。

信じられない話かもしれないが、もう何人もの生徒を保健室に送っている。

 

13 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/23(日) 00:11:28.37 ID: kIwfmF4P0
  
( ^ω^)「もう放課後ですかお?」

('、`*川「違うわ。みんな放課後にも練習するみたいよ。」

( ^ω^)「え?」

みればこの教室に僕以外のクラスメートはいなくなっていた。

( ^ω^)「あ・・・あの、みんなはどこに?」

('、`*川「ん〜?教えて欲しい?」

( ^ω^)「そりゃあまあ・・・」

('、`*川「視聴覚室よ。」

ピシッ、と名簿で足元を示す先生。
そうか、視聴覚室は丁度この教室の下だったのか。

 

14 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/23(日) 00:15:08.28 ID: kIwfmF4P0

( ^ω^)「じゃあ僕も行ってきますお」

僕は鞄を持って、音楽室に向かおうとする。

('、`*川「あ、ちょっと待ちなさい」

・・・が直に呼び止められてしまう。
どうでもいいのだが、掴まれた鞄がビクともしないあたりこの先生の力はどのくらいなのだろうと疑問に思う。

('、`*川「あんたには仕事があるわ。」

ニヤリ、と口元を歪める先生。
何故だかとてもいやな予感がした。

 

15 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/23(日) 00:17:33.29 ID: kIwfmF4P0
――――――音楽室。
ここには主にピアノやオルガンといった鍵盤楽器から、吹奏楽部が使う管楽器など様々な楽器が置いてあり、
壁はルードヴィヒ・ヴァン・ベートーベンやJSバッハといった世界の巨匠に支配されている。
天井や運良く巨匠の支配から逃れた壁には無数の穴が空き、通気性や防音効果もばっちりである。

( ^ω^)「みんな知ってると思うけどね」

川 ゚ -゚) 「・・・・・。」

僕は今、ペニサス先生の命によりオルガンを視聴覚室に運ぶ仕事をしている。
否、しなければならない。

それなのに、今だオルガンに触れる事さえできないでいるのにはある理由があるのだ。

 

16 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/23(日) 00:19:09.30 ID: kIwfmF4P0

( ^ω^)「先生に頼まれてそれを運びにきたんだお」

川 ゚ -゚) 「奇遇だな、実は私もだ」

・・・・・・・謀られた。
何を勘違いしたのか、あの先生は絶対に意図的に僕とクーをここに呼んだ。
先程の悪寒の正体はこれだった。

( ^ω^)「クー一人じゃそれは運べないお」

結構大きいオルガンはそれだけ重く、とても女の子が運べるものではない。

 

17 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/23(日) 00:20:42.30 ID: kIwfmF4P0

川 ゚ -゚) 「君の手は借りたくない」

しかし、当の本人がこうなっているのだ。
下手に近づくと何をされるか分からないし、僕も手出しが出来ない。
よって、二人は今こう着状態に陥っている。

( ^ω^)「何か怒っているのなら、はっきり言うお」

川 ゚ -゚) 「自分で分からない馬鹿に何を言っても無駄だ」

( ^ω^)「馬鹿も何も僕には何の覚えも無いお」

本当に全くなにも、クーを怒らせる事をした覚えは無い。
僕もストレスがたまり、また彼女も段々と怒りの感情を露にしてくる。

 

19 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/23(日) 00:23:11.16 ID: kIwfmF4P0

( ^ω^)「・・・お?」

その時、クーのポケットから何かが落ちた。
卑猥な形をした頭に、憎たらしい顔でこちらを見ている。
それは、一昨日僕がプレゼントした人形だった。

川 ゚ -゚) 「な・・・見るな!!」

クーはそれをさっと隠す。
このときの僕が冷静だったら、彼女に愛おしい感情を抱いていただろう。

しかし、このときの僕は決して、冷静ではなかった。

 

20 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/23(日) 00:26:31.46 ID: kIwfmF4P0
    
( ^ω^)「そんな奴にあげるより、デレにあげたほうがよかったお」

川#゚ -゚)「―――――!!」

クーの顔に、ついに怒りが表れた。

川#゚ -゚)「いいだろう、そこまで言うなら教えてやる」

クーが恐ろしい速さでこちらに向かってくる。
思わず身構えたが、そのときにはクーの顔がもう目の前に迫っていた。

( ^ω^)「え?顔?」

その瞬間だった。
唐突に、何の前触れも無く―――――

 

 

――――――唇に、何か暖かいものが触れた。

 

22 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/23(日) 00:28:00.51 ID: kIwfmF4P0
・・・・・無音の時間が過ぎる。
綺麗なピアノでもなければ、高らかなトランペットでもない。
窓の向こうで雨が降り注ぐ音と、時折窓に撥ねる雨粒の音。
そして何より、僕の心臓の音が、この場で奏でられている唯一の音だった。

川 ゚ -゚) 「これが答えだ。これで分からないようなら、もうお前に用は無い。」

そう言うとクーは音楽室から飛び出していってしまった。
取り残された僕はなにも考える事ができず、ただそこに立ち続けている。

 

25 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/23(日) 00:30:59.13 ID: kIwfmF4P0

( ^ω^)「え・・・と・・・そうだ、オルガンを」

オルガンを運ぼうと持ち上げる。
しかし、予想以上に重く、僕の力ではビクともしない。

( ^ω^)「あれ?おかしいお」

もう一度踏ん張ってみるが、やはりビクともしない。
悪戦苦闘していると、突然後ろから声を掛けられた。

 

26 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/23(日) 00:34:40.05 ID: kIwfmF4P0
  
('、`*川「おかしいのはアンタだよ」

( ^ω^)「先生・・・・・」

('、`*川「青春してるねぇ・・・・・」

遠い目をする先生。
そのまま遠い目をしながら、オルガンを持ち上げる。

( ^ω^)「あの・・・僕は?」

('、`*川「悩め!以上。」

そう告げるとそのまま出て行ってしまう。
再びそこから動けなくなってしまう僕。
決して、先生の腕力を目の当たりにして固まっているわけではない。

心まで鈍色の雲に覆い尽くされてしまったみたいだった。

 

27 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/23(日) 00:35:25.61 ID: kIwfmF4P0
――――――その知らせが僕の耳に入ったのは、もう日も暮れたころだった。
茫然自失になりながらも何とか帰宅した僕は、そのまま眠ってしまったのだ。

メールが届いたのは丁度僕が夢の中にいた頃。
目を覚ました僕は酷く驚いた。

直に家を飛び出し、そして気づく。

(;^ω^)「病院・・・どこだお?」

メールを読み返すも、場所は書かれていなかった。
これではどうする事もできない。

(;^ω^)「どうすれば・・・・・」

 

―――――――――――――"デレが倒れた"

 

続く

 

 

戻る

inserted by FC2 system