2 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:05:45.69 ID: iyEe1Jv+0
―――私、ずっと病院にいたんです
昔から体が弱くて、学校なんて言ったことないから友達なんてほとんどいなくて
だから今、とっても幸せなんです
これからもよろしくお願いします――――――――
いつも見る昔の光景ではない。それはつい数日前の出来事で夢に見るまでもなく鮮明に思い出すことができる。
彼女の笑顔を胸に秘め、"頑張ろう"そう改めて決意し、僕は学校へと向かった。
3 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:06:45.43 ID: iyEe1Jv+0
【March 4】
( ^ω^)「・・・というわけなんだお。」
僕はそこまで言い終えると、ひとつ溜息をついて下を向く。
クラス皆の前で何かをする、というのは非常に緊張することだ。
学校というものに通い続けて9年間、僕は1度としてこういうことをしたことがない。
どちらかといえば今の僕のような人を机に伏せながら眺めている側の人間だった。
初めて"こちら側"に立ってみて分かったことがある。
( ^ω^)(視線で人を殺すことができる)
そんなことを考えたのは今日が初めてだ。
しかし、いつまでも机と睨めっこをしているわけにもいかない。
落着きを取り戻すとすぐに頭をあげる。
4 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:08:49.26 ID: iyEe1Jv+0
( ^ω^)「どうだお?」
みんなに答えを促すも、賛成の声はない。
また反対の声が上がっていないのも事実だが。
つまるところ、僕のクラスメートはこの件に関して無関心なのだ。
('A`)「なんだよ、いいじゃねえか。どうせ他にやることもないんだろ?」
ドクオが促すも「でもなぁ…」「毎年強制的にやらされてるし…」といった意見が、小さく飛び交うだけだ。
気の抜け切った中学3年生に、こんなことを要求することが間違っていたのだろうか。
駄目か・・・・そう思って僕は項垂れる。
遂に口を開く者がいなくなったこの教室は、誰もいないのかと疑ってしまうほど静かだ。
僕の心臓の音と、時計の針が時を刻む音のみが響き、僕はこの教室の周りに壁があるのではないかと錯覚する。
5 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:11:59.95 ID: iyEe1Jv+0
その壁を唐突に、小さいながらも、強い意志のこもった言葉が貫いた。
ζ(゚ー゚;ζ「あの・・・実は、やりたいって言ったのは私なんです。」
そういった彼女は緊張のあまり震えていた。
無理もない、今まで学校に通っていなかった彼女には、ここで起こるすべてが新しいことなのだ。
ζ(゚ー゚;ζ「この前初めてカラオケに行って、私、すごく楽しかったんです。」
気がつけば、皆デレの言葉に耳を傾けていた。
ζ(゚ー゚*ζ「だから、だから私はみんなで歌を歌いたいんです!!」
彼女の精一杯の言葉。
ただひたすらに思い出を求める彼女の言葉。
そんな言葉が届かないはずがない――――――気がつけば教室は拍手に包まれていた。
6 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:14:22.39 ID: iyEe1Jv+0
( ^ω^)「ったく、やってらんねーお。」
('A`)「まぁまぁ、そういいなさんな。」
結局、デレの言葉一つでクラスの出し物は合唱、ということに決まった。
曲目はデレの希望であの日僕が歌った歌。
もともと合唱用の曲ではないのだけれどそれはうまくアレンジするとショボンが申し出てきてくれた。
( ^ω^)「まぁ、なんにせよ決まってよかったお」
そう、当初の目的は果たした。
デレもみんなの前で自分の意見を言うことができたんだ、結果オーライというやつだ。
僕は両手を目一杯広げて伸びをする。
すると、視界にこちらに向かってくる少女が映った。
8 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:15:47.53 ID: iyEe1Jv+0
ζ(゚ー゚*ζ「ブーンさん」
デレだ。
彼女は僕が気付いたとわかると少し小走りになる。
(;^ω^)「あ。」
刹那、いやな予感。
ζ(゚ー゚;ζ「ほあっ!?」
転んだ。
幸いひっくり返ったのはドクオの机だけだったので良かったが、彼女のほうはどうだろうか。
11 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:17:44.80 ID: iyEe1Jv+0
ζ(゚ー゚;ζ「だ・・・大丈夫です。」
ふむ、ドジっ子属性まで持ち合わせるとは・・・・恐ろしい子だ。
( ^ω^)「怪我がないならよかったお。で、何の用だお?」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、えっと・・・お礼を言いに来たんです。」
( ^ω^)「お礼?」
ζ(゚ー゚*ζ「はい。ブーンさん、私のためにあんなに頑張ってくださったので」
何を馬鹿なことを、と思う。
結果的にはすべて上手くいったのだ、それでいいじゃないか。
それに、一番頑張ったのは僕ではない、デレ自身だ。
僕は彼女に思ったままのことを告げた。
彼女は僕の言い分を認めずにいたが、それはそれでもちろん嬉しかった。
12 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:20:57.16 ID: iyEe1Jv+0
――――――午後、もうこの時期になると大抵の学校は午前授業となる。
うちの学校もご多分にもれず、今日は12時15分を持って解散となった。
川 ゚ -゚)「なあブーン、遊びに行こう」
( ^ω^)「なんでまた?」
川 ゚ -゚) 「私はこの姿になってからロクに遊んでいないからな。」
( ^ω^)「カラオケに行ったじゃないかお」
川 ゚ -゚) 「空気、って言葉を知っているか?」
だから大抵の生徒は友達と遊んだり高校の予習をしたりと各々好きなことをして過ごすのだが
今日の僕は朝から酷く疲れていたため遊びや勉強よりも、睡眠を優先したかった。
13 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:24:03.52 ID: iyEe1Jv+0
川 ゚ -゚)「一応私は君の彼女なのだが。」
( ^ω^)「一応じゃないかお」
川#゚ -゚)「・・・・・・・。」
怒っている。
なぜだか危険な予感がした。
見ればクーが持っていたはずのコントローラーが見当たらない。
・・・・気のせいだよな。いや、気のせいでありますように。
14 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:26:28.48 ID: iyEe1Jv+0
( ^ω^)「というわけで、ここがゲーセンだお」
川 ゚ -゚)「わざわざ御苦労。」
いくつものゲーム機が奏でる音楽が幾重にも重なり、そこに自分たちも含めた客の話し声が加わる。
それに時折発せられるマイクを通した係員の声が交わると、それはもう騒音以外の何物でもない。
(;^ω^)「うるさいところは苦手だお」
川 ゚ -゚)「まあまあ、そういうなって」
クーは嬉しそうにクレーンゲームへと駆けていく。
15 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:28:35.23 ID: iyEe1Jv+0
川 ゚ -゚)「なんだかこのぬいぐるみ、お前に似てないか?」
( ^ω^)「お?」
僕もそれを覗き込むと、そこにはたくさんのぬいぐるみ。
何故だか無性に腹が立つ顔をしたあんちきしょうが、こちらに向けて笑いかけている。
確か少し前に流行ったキャラクター・・・モナーだったかのま猫だったか。
そういうのに疎い僕にはよくわからなかった。
川 ゚ -゚)「これ、とってくれないか?」
僕は少し返答に困る。
正直、あまりお金は使いたくないのだ。
クレーンゲームは苦手だしちゃんと取れる自信もない。
16 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:29:42.30 ID: iyEe1Jv+0
( ^ω^)「こうなりゃヤケだお」
だけど、僕にお願いするクーを見ていたらとても断れなくなってしまった。
デレと言いクーと言い、僕は頼みごとに弱いらしい。
いや、女の子に弱いのか?
そんなことを考えながら僕はコインを入れた。
18 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:30:18.23 ID: iyEe1Jv+0
―――――嫌な空気が流れている。
川 ゚ -゚)「・・・・・・。」
( ^ω^)「心情的にはそうかもしれないけど、それは僕のセリフだお。」
結果から言おう、ぬいぐるみは1回で持ち上げ、最後まで運ぶことができた。
そこまでは良かったのだ。
だがアームから解放されたぬいぐるみは筒をくぐり機械の外に出てくることはなく、見事に出口である円柱の上に鎮座していた。
これでは再チャレンジすらできない。
( ^ω^)「係員を呼んでくるお」
仕方がないので係員を探す。
大きいゲーセンのため係員の数も多いのか、結構簡単に見つけることができた。
( ^ω^)「あの・・・・・・ヒッ!!」
ここで僕は、思わぬ再会を果たすことになる。
19 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:32:04.82 ID: iyEe1Jv+0
_ -───- _
, '´ `ヽ
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/ __, ィ_,-ァ__,, ,,、 , 、,,__ -ァ-=彡ヘ ヽ
' 「 ´ {ハi′ } l
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! ハ!| ー─ ' i ! `' '' " ||ヽ l |
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ヽ { | ! |ノ /
ヽ | _ ,、 ! , ′
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20 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:34:41.22 ID: iyEe1Jv+0
N| "゚'` {"゚`lリ「お、君はいつかの少年」
イイ男はゲーセンでバイトをしていた。
少しきつめに見えるスーツに蝶ネクタイという格好がやけにハマっていた。
N| "゚'` {"゚`lリ「おいおい・・・昼間からハマるだなんて」
( ^ω^)「いいから仕事しろお」
決して表情を崩さないながらも僅かに頬を赤らめる阿部さん。
僕は全身の毛が逆立っていくのを感じた。
21 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:37:27.96 ID: iyEe1Jv+0
N| "゚'` {"゚`lリ「立つ?感じる?全く・・・どこまで君は。」
( ^ω^)「いっそ死んじまえばいいんだお」
相手にするとまた掘られかねないので、早々にクーのもとへと連れて行く。
阿倍さんは手早く機械の扉を開ける。
N| "゚'` {"゚`lリ「ホラ、これはサービスだ」
( ^ω^)「お?」
そういうと阿部さんはぬいぐるみを僕に放ってくれた。
N| "゚'` {"゚`lリ「彼女、大事にしてやりな」
( ^ω^)「・・・ありがとうだお!」
去っていく阿部さんは最後まで―――イイ男だった。
22 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:38:22.40 ID: iyEe1Jv+0
川*゚ -゚)「〜♪」
ぬいぐるみを手渡すとご機嫌な様子で、鼻歌まで歌い始めるクー。
クー曰く、先ほどのぬいぐるみはモナーでものま猫でもなく"やる夫"というらしい。
名前まで腹が立つキャラクターだ。
川*゚ -゚)「ありがとうな」
笑ってはいないのだが、不思議とクーが喜んでいるのが分かる。
そんな彼女を見ているとこちらまでうれしい気分になってくる。
( ^ω^)「おっおっおっ、喜んでくれてなによりだお。」
偶にはこんな休日もいいもんだ。
結局、その日はいやというほどゲーセンを堪能し、僕の財布が空になったところでお開きとなった。
24 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/21(金) 19:39:10.70 ID: iyEe1Jv+0
――――――夜
川 ゚ -゚)「傷ついて〜♪そして躓いて〜♪」
隣ではクーが歌っている。
クーもこの歌が気に入ったらしく、先ほど僕のCDを漁っていた。
( ^ω^)(しかし・・・)
キャラがどちらかというとシュールな感じに仕上がってきているのは、どうも頂けなかった。
続く