24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 00:39:12.36 ID:z2tcVirO0
【March 3】

春の日差しが窓越しに当たる。
窓際一番後ろというベストなポジションに座っている僕。

昨日あれたけ待ち焦がれていた今日も、いざやって来てみればいつも通りダルくて。
昨日の疲れがまだ残っている僕は、朝から机に突っ伏している。

( ^ω^)「ダルいおー。」

誰に言うわけでもなく呟いてみても、後に残るのは重みを増した倦怠感だけだ。
机に押し付けられる鼻が痛くなってきたので、少し顔を上げるとそこには見知った顔。

('A`)「まあまあ、今日は楽しみもあるからいいじゃないか。」

( ^ω^)「お、そうだお。頑張るお。」

そう、今日の"楽しみ"。これが無ければ正直乗り切れなかっただろう。
月曜日とは、それほどまでに強力なのだ。

 

 

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 00:40:38.39 ID:z2tcVirO0
キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴る。
担任の先生が入ってくると同時にクラスメイト全員が慌てて着席し、ホームルームが始まる。

('、`*川「はい皆、いきなりだけど今日から皆さんにお友達が増えます。」

そう、"楽しみな事"。
それはデレが今日からこの学校に通い始める事だ。
他のクラスメイトからは「今更?」「この時期に転校生?」といった声が聞こえてきたが、彼女は転校生ではない。

ドアが開く。
一斉にクラス中の視線が集まり、入ってきたデレは少し驚いたようだ。

ζ(゚ー゚*ζ「デレといいます。卒業まで短いけど、よろしくお願いします。」

緊張しているのか、その笑みはどこかぎこちなかった。

 

 

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 00:42:11.58 ID:z2tcVirO0
  
生徒「どこから転校してきたんですかー?」

デレが挨拶を終えると、すぐにクラス中から様々な質問が飛んでくる。
大体がこの時期に編入してきた事に対する質問だが、さりげなくアレな質問が混ざっていたのは言うまでも無い。
だって中学生だもの。

('、`*川「はいはい落ち着いて。デレちゃん、答えてあげて?」

収拾が付かなくなってしまう前に先生が皆を落ち着かせる。

ζ(゚ー゚*ζ「実は・・・私、転校してきたんじゃ無くて、復学なんです。」

ζ(゚ー゚*ζ「3年6組13番、改めて宜しくお願いします。」

・・・・・・。
突然、クラスが静かになる。
しかしその静寂もすぐに破れ、今度は好奇心ではなく驚愕の色を浮かべた声が場を支配した。
慌ててクラス名簿を確認するやつまでいる。

 

僕としては、自分を含めた全員が彼女の事を知らなかった事の方が驚きなのだが。

 

 

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 00:43:54.63 ID:z2tcVirO0
 
('、`*川「はいはい、じゃあデレちゃんはとりあえずそこに座ってもらうわ。」

教師がある一つの座席を指定する。
その席の隣にいる男子が歓喜しガッツポーズを決めて、後ろにいた女子に殴られていた。
なんて分かりやすいフラグなんだろう。

('、`*川「そして、もう一人。今度こそ転校生が来るわ。」

( ^ω^)「え?」

うおおおおおおお!と教室中がまたもや騒がしくなるがそれどころではない。
昨日デレに聞いた話では、自分のほかに転校生がいるなんて言っていなかった。

( ^ω^)「嫌な予感がするお」

僕の脳が、全神経を通じ体中に警告する。
そもそもこの時期に転校生なんて、おかしいにも程がるのだ。
そう、普通ならあり得ない。

 

 

29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 00:45:18.66 ID:z2tcVirO0
 
川 ゚ -゚)「ヘロー。」

クーが教室に入ってきた瞬間、デレ以上の歓声が沸いた。
「美人」だの「カワイイ」だの聞こえてくるが、コイツの正体を知っている僕にはどうってことはない。
いやまあ、かわいいのは認めるけど。

( ^ω^)「ああ・・・やっぱり・・・・」

嫌な予感は当たるものだ。
どんな手段を使ったのか知らないがちゃっかり転校してきやがった。
昨日大人しかったと思ったら、こんなところにしわ寄せが来た。

川 ゚ -゚) 「クーだ。宜しくな。」

爽やかな挨拶をかますクー。
さり気なくコッチを見て口元をゆがめたのを僕は見逃さない。
いや、見なかったほうがストレスたまらなくていいんだけど。

 

 

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 00:46:40.46 ID:z2tcVirO0
デレの時と同じようにクーにも質問が飛び交う。
しかし不思議な事に「何でこの時期に(ry」という質問は聞こえてこない。
それに、一体どうやって手続きをしたのだろう。

川 ゚ -゚) 「今は居候していてな。」

何しろ消しゴムだから戸籍も無ければ親もいない。

川 ゚ -゚) 「( ^ω^)こんな奴だ。ちなみに私の彼氏だ。」

また何かやらかしたのだろうか。
校長先生を消すぞと脅してみたりとか実際に消してしまったりとか、コイツならやりかねない。
なにしろ僕のヴァージンはこいつに奪われたといってもいいのだ。

川 ゚ -゚) 「ちなみに同じ布団で毎晩 ( ^ω^)「っておいコラ、何言ってんだ。」

 

 

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 00:47:40.07 ID:z2tcVirO0
('、`*川「はい、お喋りはそこまでにして席についてね。」

クラスメートからの刺すような視線が、そろそろ耐えうる限界まで達した時、やっと先生が口を開いた。
先生はどこからともなく机を運んでくると僕の後ろにおいて、そこに座るように促す。

川 ゚ -゚) 「これからは毎日消しゴムとしての役目を果たせるな。」

( ^ω^)「受験も終わってもう学級活動しかないんだけど」

  _,
川 ゚ Д゚)

恐ろしい顔をするクー。
人の顔というものはここまで変わるものなんだなと、少し感心した。

 

 

 

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 00:49:34.08 ID:z2tcVirO0

('、`*川「じゃあ今日はここまで。あとは適当に自習だから、チャイムなるまでここにいてね。」

そう言うと荷物をまとめ(荷物といっても名簿くらいなのだが)て教室から出て行こうとする。
クラス全員の進路が決まり担任としてもホッとしているのだろう。

しかし気が抜ける気持ちは痛いほど分かるが、幾らなんでもなげやりだよな。

( ^ω^)「もう帰っちゃ駄目なんですかお?」

('、`*川「駄目よー。一応まだ授業中なんだから。」

 

 

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 00:51:26.30 ID:z2tcVirO0
教師はどうなんだよと思う。
あ、ちなみにこの先生は怒ると物凄く怖い。
だから脳内で済ますだけにしろ、悪態をつくときはポーカーフェイスを心がけるのが重要だ。

('、`*川「暇なら卒業式での出し物でもかんがえてなさいな」

じゃね、といい今度こそ本当に出て行く。
まぁ、勉強するよりはマシだからこれ以上文句は無いんだけど。

( ^ω^)「寝るかお」

さっきも寝ていたのでまた寝れるかどうか分からないが、どうせする事もない。
出し物だって他の誰かが適当に決めてくれるだろう。
そもそも卒業式に出し物ってなんだ。

僕は再び机に体を預けると夢の中に落ちて行く。

 

38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 00:54:05.39 ID:z2tcVirO0
――――――少女の声

白い部屋。

床も、天井も、カーテンも、ベットも棚も、全てが白い部屋。

彼女はいつもそこにいた。

"君は退屈じゃないのかお?"

今思えばなんとデリカシーの無い言葉だろう。

だけどお互い子供な僕らはそんなことは気にしない。

”退屈だよ、だって何処にも行けないんだもん。”

”でもね・・・・”

"私は退屈でも大丈夫だよ。だって、君がいるから。"

いつからだっけ、僕が君に会わなくなったのは――――――

 

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 00:56:59.96 ID:z2tcVirO0

「・・・・さん。・・・・ンさん。」

声が聞こえる。
この声は・・・・・夢・・・・・・じゃない?

ζ(゚ー゚*ζ「ブーンさん、起きてください。」

( ^ω^)「・・・お?」

顔を上げるとそこにデレがいた。
どうやら本当に寝てしまったらしい。袖口で慌てて涎を拭う。

 

 

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 00:59:18.54 ID:z2tcVirO0

ζ(゚ー゚*ζ「あの・・・お願いがあるんです。」

すこし控えめに言うデレ。

ζ(゚ー゚*ζ「卒業式の出し物、合唱をやりたいんです。」

( ^ω^)「合唱?どうしてまた僕に・・・。」

元々僕はこういうのが嫌いな部類の人間だ。
彼女はなんで僕に頼んだのだろうか・・・・謎である。

 

 

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 01:01:57.32 ID:z2tcVirO0

ζ(゚ー゚*ζ「はい・・・ドクオさんに聞いたらブーンさんに頼めって。」

そうか、奴の差し金だったのか。

流石にここで断って盥回しにするのは気が引ける。
しかしいかんせん急すぎるのだ。
どうしたものかと思案する。

僕が悩んでいると、デレはこれで最後といわんばかりに押してくる。

ζ(゚ー゚*ζ「それに・・・ブーンさんなら分かってくれると思ったんです。」

( ^ω^)「お?」

 

 

 

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 01:03:36.24 ID:z2tcVirO0
 
 
 
 
―――――あなたには思い出、ありますか?
 
 
  
     

 

46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 01:04:43.43 ID:z2tcVirO0
脳裏を過ぎる言葉。
いまでも鮮明に思い出せるのは、それだけ彼女の想いが強いという事だろうか。

ζ(゚ー゚;ζ「あ・・・・でも無理にとは言わないです。」

僕がよっぽどおかしな顔をしていたのか彼女は慌てて取り繕う。
しかし、その必要は無い。

あの日校庭で彼女の言葉を聞いた時から思っていた。
できる事なら彼女になにかしてあげたい、と。

気が付けば僕は、笑顔とともに快諾の意を伝えていた。

 

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 01:06:06.89 ID:z2tcVirO0
―――――帰り道、クーと二人で歩いていた。
隣を歩くクーの顔はやはり綺麗で、一昨日ドクオが嫉妬に狩られ走り去ったのもうなずける気がしてきた。

( ^ω^)「・・・クーはMONO消しゴムだったおね?」

少し気になったので聞いてみる。

川 ゚ -゚) 「ああ、なんだかんだ言って評判はいいんだ。」

( ^ω^)「なんとなく綺麗なイメージがあるお。」

川 ゚ -゚) 「だから人間の私もこんなに綺麗なんだ。」

得意そうに言うクー。
しかし自分で言う事ではない。

 

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 01:07:53.31 ID:z2tcVirO0

( ^ω^)「じゃあ使いかけで真っ黒な消しゴムが人間になったら不細工な子になるのかお?」

川 ゚ -゚) 「いや、小汚い子になるだろう。」

あ、そのまんまですか。
考えてみればみんな女だとも限らないだろうしね。

川 ゚ -゚) 「なあ、ブーン?」

( ^ω^)「なんだお?」

川 ゚ -゚) 「私が消しゴムに戻ったら、どうする?」

少し不安そうにするクー。

 

49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/15(土) 01:09:06.60 ID:z2tcVirO0

( ^ω^)「心配しなくても高校で使ってやるから安心しろお。」

 川 ゚ ー゚) 「・・・そうか、約束だぞ」

一瞬何かを考えるような顔をするが、すぐに笑顔を浮かべるクー。
その時、僕の中にあった彼女に対する警戒心というものが消えた。

本当に唐突にだ。
これまでに無いような笑顔。
なんだ、こんな笑い方も出来るんじゃないか。

これから何としてでも合唱を成功させなければならない。
残りの学校生活。クーも含めて新たな仲間を迎えて楽しくやれればいいなと、心からそう思えた。

 

続く

 

 

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