3 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 00:33:14.37 ID: B5Nuac980
【March 2】
――――夢を見ている。
"あなたには思い出、ありますよね?"
頭の中に響く、美しく透き通った声。
浮かび上がってくる悲しげな色をした瞳。
"私にも、あります。でもそれは決していいものではない。"
昨日初めて聞いた声の筈なのに、その声はどこか懐かしい感じがする。
昔どこかで聞いた事があったのだろうか。
そう、あれは―――――
4 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 00:35:10.85 ID: B5Nuac980
( うω`)「お・・・・」
目が覚める。
布団からは出ず、片腕だけを出して目覚まし時計を手繰り寄せる。
8時03分――休日に起きるには丁度いい時間だ。
昨日登校したため今週の休みは日曜日である今日のみ。
僕が小学生のころは隔週で土曜も授業があったのだがもはやその面影は無い。
すっかり週休2日に慣れてしまった僕に、明日にはまた登校しなければならないという事実は相当なダメージを与える。
( ^ω^)「これもゆとり教育の弊害だお」
一生張られる「ゆとり」というレッテル。
どうか差別が起こりませんようにと、そう願うばかりである。
5 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 00:37:13.77 ID: B5Nuac980
('A`)「まったくだよなー。好きでゆとりやってるわけじゃないのになー。」
・・・・・・・・・・・。
くるりと顔を反対に向けるとドクオが僕のとなりに寝ている。
僕たちの距離、実に30cm。
( ^ω^)「不法侵入者よりは遥かにマシだけどな。」
('A`)「そう言うなって、友達だろ?」
今にも輝きだしそうなスマイルを向けてくる。
殴り飛ばしてやろうか、と思ったが思いとどまる。
6 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 00:40:45.37 ID: B5Nuac980
常人離れした運動神経を持つ水泳部、ドクオ。
陸上を2年でやめて帰宅部のエースと化している僕に勝ち目は無いだろう。
というか、そもそもコイツに物理攻撃は効くのだろうか。
( ^ω^)「とりあえず出て行け。さもないと通報するお。」
せめてもの抵抗として言って見るが恐らく効果はないだろう。
本当におかしいよね、鍵閉まってたはずなのに。
('A`)「はいはい。それより今日、カラオケな。」
( ^ω^)「カラオケかお?」
('A`)「ああ、11時からいつもの店で。遅れんなよ。」
7 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 00:47:03.92 ID: B5Nuac980
カラオケか・・・受験もあったし久しく行っていない。
羽を伸ばすにも丁度いいし・・・ドクオ、たまにはいいことをするではないか。
('A`)「デュワッ!!」
窓から飛び出していくドクオ。
ちなみにこの部屋は2階に位置してベランダは無く、またのび太君の部屋みたいに窓の外に屋根が突き出てもいない。
僕は高校で水泳部に入ろうかなと、本気で考えはじめる事になった。
8 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 00:49:41.84 ID: B5Nuac980
―――――まだサクラは咲いていないが、何だかんだ言ってもう春だ。
最近、日が過ぎるごとに遠慮なく暖かくなってきている。
それを考えずにいつも通り服を選んでしまったので、正直少し暑かった。
これはそろそろコートが要らなくなるかもわからんね。
( ^ω^)「おいすー。皆、久しぶりだお。」
(´・ω・`)「ブーンか。2日ぶりくらいだね。」
時刻は10時30分。
カラオケ屋の前に行くとショボンがいた。
僕は普段から待ち合わせというものには必ず早く行く人間なのだがこのショボン、毎回僕よりも早い。
9 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 00:51:38.18 ID: B5Nuac980
( ^ω^)「相変わらず早いお。」
(´・ω・`)「人を待たせるのはいい事じゃないからね。」
(´・ω・`)「ところで・・・」
ショボンが僕を指差す。
( ^ω^)「ん?なんか顔に付いてるのかお?」
(´・ω・`)「いや、そうじゃなくてさ、後ろだよ。」
ああ、僕じゃなくて僕の後ろを指していたのか。
そう思い、振り返る。
10 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 00:53:33.26 ID: B5Nuac980
川 ゚ -゚) 「やあ」
( ^ω^)「・・・・・。」
川 ゚ -゚) 「ドクオからここだって聞いたんだ。」
なんてこった。
これでは羽を伸ばすどころではない。
(´・ω・`)「どちら様?」
川 ゚ -゚) 「ブーンの彼女だ。突然押しかけてスマンな。」
上手く追い返してくれないか期待したが、クーが僕の彼女だと告げるとあっさりと了承してしまった。
ショボンがこちらをみてにやり、と笑う。
クーも友達とか親戚とか言えばいいのに・・・・これが疲れる原因だと分かっていないのか。
12 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 00:57:08.19 ID: B5Nuac980
('A`)「おっす、相変わらず早いなー。」
ξ゚听)ξ「久しぶりね。」
そして元凶よ、お前はいつも遅すぎるんだ。
彼女まで連れおって、後で絶対に仕返しをしてやる。
(´・ω・`)「まあこれで揃ったし、行こうか。」
('A`)「レッツゴーwwwwはいwwwブーン君もwwwww」
( ^ω^)「レッツゴー。」
( ^ω^)(とりあえず脳内で殺す。)
13 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 00:59:59.64 ID: B5Nuac980
受付を済ませ、部屋に入る。
久しぶりに来たが以前来た時と内装が変わっている。
壁掛け液晶に最新の機械。ソファーも新品で、とても居心地がよさそうだ。
(´・ω・`)「へぇ・・・儲かってるんだね。」
それぞれドリンクバーを注文し、開始。
始まる前から疲れてる僕って何なんだろう。
('A`)「よっしゃwwww歌うぜwwwwwww」
('A`)「ペチャパイ マラソン速い♪ ペチャパイ Tシャツ伸びない♪」
14 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 01:02:02.92 ID: B5Nuac980
( ^ω^)
(^ω^ )
ドクオが歌に夢中になっている内にさっさと仕返しをしてしまおう。
とりあえずタバスコかなにかをドクオのコーラに入れてやる。
( ^ω^)「・・・お?」
タバスコが無い。
おかしいな、大抵のカラオケ屋にはあるはずなんだけど・・・。
誰かが持っているのか、そう思って辺りを見回す。
そこで僕は――――鬼を見た。
15 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 01:04:56.84 ID: B5Nuac980
ξ#゚听)ξ「・・・・・・・。」
一心不乱にドクオのコーラにタバスコを振り掛ける貧乳―――否、ツン。
( ^ω^)「ちょっ、何をしてるんだお?」
ツンに近づき、コッソリと話しかける。
ここでドクオにばらしたりしようものなら僕にまで危険が及びかねない。
ξ#゚听)ξ「今の私には、話しかけないほうがいい・・・・。」
低い声・・・というよりはドスの効いたといったほうがいいだろう。
僕に反論する余地は無いらしく、大人しく引き下がるしかなさそうだ。
16 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 01:06:50.35 ID: B5Nuac980
('∀`)「ペチャパイ この一途な思い♪ ペチャパイ ふくらみ続ける♪」
('∀`)「イェーーーイwwwwww」
川 ゚ -゚) 「次は私の番だ。」
( ^ω^)「・・・・ちょっとトイレに行ってくるお」
なんとなく居づらくなったので外に出る事にした。
多分5分もすれば決着は付くはずだ。
トイレに向かおうと歩を進めると聞こえてくる、ドクオの悲鳴とツンの怒声が全てを物語っていた。
19 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 01:11:16.40 ID: B5Nuac980
トイレはタバコくさかった。
店内全部が少なからず煙たいのだが、ここは特別煙たい。
もともとそう言うのに慣れている僕はあまり気にしないが、駄目な人もいるんじゃないだろうか、これは。
( ^ω^)「すっきりしたお」
トイレから出て部屋へと戻る。
その途中、僕は思いがけない再会を果たす事になる。
ζ(゚ー゚*ζ「あれ?昨日の方ですよね?」
デレ―――昨日会って以来僕の頭を離れない少女がそこにいた。
20 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 01:14:05.44 ID: B5Nuac980
ζ(゚ー゚*ζ「家族と来たんですけどなんだか両親だけで盛り上っちゃって・・・出てきてしまいました。」
デレは少し困ったような笑みを浮かべる。
その目には昨日のような寂しさは見えない。
ζ(゚ー゚*ζ「えっと・・・」
言葉を詰まらせるデレ。
恐らく、僕の名前が分からず困惑しているのだろう。
すぐに教えてあげようとするが、突然現れた彼女に戸惑い、上手く話せない。
しかし彼女が次に発した言葉で僕の緊張はすぐにとかれる事になる。
21 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 01:18:03.79 ID: B5Nuac980
ζ(゚ー゚*ζ「ゴールデンボールさん?」
( ^ω^)「誰が金玉だ。」
顔を赤らめながら苦笑いをするデレ。
恥ずかしがるくらいなら最初から言わなければいいのに。
色々と突っ込みたい事はあるが、とりあえず名前を教えてあげる。
ζ(゚ー゚*ζ「ブーンさん・・・ですか?」
ζ(^ー^*ζ「面白い名前ですね。」
名乗ってすぐに馬鹿にされたのは初めてだ。
まあ、あだ名だからいいんだけど。
22 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 01:22:37.21 ID: B5Nuac980
ζ(゚ー゚*ζ「ブーンさんはどうしてこんなところに?」
( ^ω^)「僕も君と同じだお。ちょっと盛り上がりすぎてたから出てきたんだお。」
ζ(゚ー゚*ζ「お互い大変ですね」
( ^ω^)「ま、僕のほうはそろそろ落ち着くと思うお。」
アレから10分経っている。
流石にもう落ち着いているはずだ。ドクオは死んでいるかもしれないけど。
23 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 01:25:07.29 ID: B5Nuac980
ζ(゚ー゚*ζ「お友達って・・・クラスメートの方ですか?」
( ^ω^)「そうだお?」
ζ(゚ー゚*ζ「私も、仲間に入れてもらえませんか?」
不思議に思う。
どうしてそんな事を聞くんだろう、と。
( ^ω^)「かまわないけど、どうしてだお?」
ζ(゚ー゚*ζ「それは――――――」
しかしその疑問はすぐに解消した。
24 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 01:27:13.42 ID: B5Nuac980
ガチャリ、
ドアを開けると足元にドクオが転がっている。
僕はそれをここぞとばかりに蹴飛ばすと他三名に向かって呼びかける。
( ^ω^)「ここで新しい仲間の登場だお」
25 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 01:28:38.85 ID: B5Nuac980
――――――いくら春といってもまだまだ日は短い。
僕たちが帰るころにはすっかり暗くなっていた。
('A`)「しかし、デレちゃんねー。あんな子がいたとは。」
(´・ω・`)「うん。皆知らなかったのかい?」
デレは家族と帰っていた。
家が近い、という理由でツンも一緒に。
よって徒歩組には僕とドクオにショボン、そしてクーの4人のみがいる。
( ^ω^)「僕は昨日会ったお。ほとんど話さなかったけど・・・。」
それに、話したといっても彼女が一方的に話している感じだった。
だから彼女の事を聞いたのは僕も今日が初めてだ。
26 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/14(金) 01:30:17.17 ID: B5Nuac980
('A`)「なんにしても、明日が楽しみだな」
(´・ω・`)「うん」
いつもなら考えるだけで鬱になる月曜日。
どうやら今日だけはなんとか耐えることができそうだ。
続く