16 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/08(土) 19:38:39.21 ID: M0NvSWeQ0
【February 29】
ヽ ノ
川 ゚ -゚)
┗-ヽ ノ
┏┘
|||
川 ゚ -゚) 「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!」
18 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/08(土) 19:39:45.71 ID: M0NvSWeQ0
( ^ω^)「なんぞこれ?」
そこ―――僕の机の上に現れた少女。
切れ長の目と整った顔立ち、綺麗に伸びた髪。
彼女はどこかで聞いたことがあるような台詞をはいた後、そのまま僕の反応をうかがうかのようにしている。
一方僕も僕で、急に現れた少女にどう反応していいか分からず
最初思わず目を合わせてしまったために、それを逸らすことが出来ず固まっている。
非常に不思議な空気が場を支配しているのだが、そんなことは関係ない。
問題なのは突然部屋に美女が現れたというこの状況である。
21 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/08(土) 19:40:56.00 ID: M0NvSWeQ0
川 ゚ -゚) 「私の名前はクー。消しゴムだ。」
( ^ω^)「はあ・・・」
疑わないのか?そんな目で僕を見てくる彼女。
こっちは目の前で消しゴムから進化する様を見せ付けられたのだ。疑うものか。
そして僕の飛びぬけた適応能力も相まって、すっかり僕はクールになっている。
先程から度重なる超常現象にすっかり慣れてしまった僕の辞書に、既に動揺の文字はない。
( ^ω^)「それで、その消しゴムが僕に何の用で?」
川 ゚ -゚) 「なに・・・少し言いたいことがあってな」
23 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/08(土) 19:42:59.72 ID: M0NvSWeQ0
僕が質問すると彼女はコホン、と咳払いをして真剣な顔をする。
よほど重要な事なことなのだろうか。
だがしかし、今の僕にとって重要なのは彼女の話ではなく、いかに早く彼女に去ってもらう事だ。
川 ゚ -゚) 「では言わせてもらうとしよう。」
( ^ω^)「どうぞ」
川#゚ -゚) 「何故私を使わなかった。」
( ^ω^)「・・・・はい?」
27 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/08(土) 19:44:54.24 ID: M0NvSWeQ0
急に怒ったような顔を向ける彼女。
怒りをあらわにした彼女もいちいち美しく、これなら僕もMになれるかもしれないと思う。
しかし使わなかったとは一体なんのことだ。
川#゚ -゚)「とぼけるな。試験で私を使わなかっただろう。」
( ^ω^)「ええ、まあ。」
川#゚ -゚)「消しゴムの・・・消しゴムのアイデンティティを馬鹿にしおって。」
( ^ω^)「まだギリギリ現役のMONOちゃんが残っていたのでつい。」
川#゚ -゚) 「そんな老いぼれは知らん。」
( ^ω^)「あんたも今、他の消しゴムのアイデンティティを踏みにじってるお。」
29 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/08(土) 19:46:57.73 ID: M0NvSWeQ0
無茶苦茶な事を言う・・・まあ最初から突っ込みどころは満載なのだが。
ついでに先ほどからずっと消しゴムと会話している僕にも突っ込みどころは満載である。
彼女はそこまで言うとようやく怒りが収まってきたのか強張った顔を元の無表情に戻した。
川 ゚ -゚) 「とにもかくにもアレだ・・・言いたいことはこれだけだ。」
( ^ω^)「そうですか、それではお帰りください」
やっと説教も終わり、早々に帰ってもらいたいので説得を試みる。
しかしいつまで経っても消えたり、消しゴムに戻ったりする気配はない。
33 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/08(土) 19:48:36.17 ID: M0NvSWeQ0
川 ゚ -゚) 「私は戻らないぞ?」
( ^ω^)「そう言わずに。これからきちんと使って差し上げます故。」
川 ゚ -゚) 「そういうわけではない。実はな、一度人間の姿になると暫く元に戻れないんだ。」
川 ゚ -゚) 「という訳で、暫くここに置いてくれ。」
( ^ω^)「・・・は?」
思いがけない事実に一瞬思考がフリーズする。
この消しゴム、なんて無茶苦茶な事を言うんだ。
36 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/08(土) 19:49:24.47 ID: M0NvSWeQ0
( ^ω^)「おふざけにならないでください。」
川 ゚ -゚) 「落ち着け、さっきから口調が大変な事になってるぞ。」
( ^ω^)「うっせえ!こんな時にだおだお言ってられるか!」
思考するよりも先に言葉が飛び出してくる。
そんな時でも冷静な顔の僕は最早、悟りを開いたといってもよい。
川 ゚ -゚) 「そう怒るなって」
( ^ω^)「お・・・。」
川 ゚ -゚) 「考えてみろ、私は君の所有物なのだ。」
39 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/08(土) 19:51:06.66 ID: M0NvSWeQ0
クーに諭されて落ち着きを取り戻す。
しかしだ。クーは一見同い年くらいの少女に見えるが、その実態は消しゴムなのである。
消しゴムに諭された―――そう思うと不思議と涙が出てきた。
( ^ω^)「消しゴムに戻ってから言ってほしいお」
川 ゚ -゚) 「それにだ、いろいろ役に立つぞ、私は。」
( ^ω^)「たとえば何だお?」
川 ゚ -゚) 「いろんなものが消せる」
彼女はそう言うと胸を張る。
あ、意外と大きいな・・・なんてことは口が裂けてもいえない。
41 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/08(土) 19:52:38.82 ID: M0NvSWeQ0
川 ゚ -゚) 「少なくともMONO消しゴムと同じくらいは。」
( ^ω^)「お前MONO消しゴムなんだから当然だろ。」
川 ゚ -゚) 「冗談だ。しかし説明しづらいな・・・どれ、ちょっと外へ行こうか。」
( ^ω^)「なんでだお?寒いからここでじゃ駄目なのかお?」
川 ゚ -゚) 「色々と言っても伝わりきらないだろう。」
正直こんな夜中に外に出るのは好ましくないが、彼女はどうしても出たいと言う。
結局、クーの言うがままに僕はコートを羽織る事になった。
44 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/08(土) 19:56:00.45 ID: M0NvSWeQ0
――――静かだ。
昼間は多くの子供たちで賑わう公園のもう一つの顔。
僅かな街灯のみで照らされた夜の公園にいるのは僕とクーだけ。
賑やかな声は何処かへといってしまい、今ここにあるのは静寂のみだ。
川 ゚ -゚) 「今からコイツを消してご覧に入れよう」
そう言って彼女は、一番近くにあったベンチと対峙する。
ベンチに手を当て、目を瞑る。
次の瞬間――――彼女が少し力を込めると既にベンチは消え去っていた。
45 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/08(土) 19:58:35.55 ID: M0NvSWeQ0
(;^ω^)「え・・・?」
川 ゚ -゚) 「どうだ?」
勝ち誇ったような顔をされても困る。
そもそも早すぎて何が起こったのか把握しきれない。
(;^ω^)「どうだと言われても・・・ええ?」
川 ゚ -゚) 「色々なものを消せる、とはこういうことだ。」
( ^ω^)「にわかには信じがたいお・・・・」
53 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/08(土) 20:03:59.12 ID: M0NvSWeQ0
川 ゚ -゚) 「ならコレも消して見せようか?」
そう言って滑り台の方へと向かうクー。
そんな大きなものまで消せるのか・・・・なんて感心している場合ではない。
( ^ω^)「子供たちのおもちゃを消しちゃ駄目だお」
川 ゚ -゚) 「む・・・気づかなかった。優しいんだな。」
( ^ω^)「そうでもないお」
川 ゚ ー゚) 「でも、これで分かってもらえたよな?」
60 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/08(土) 20:07:14.53 ID: M0NvSWeQ0
ニヤリ、と口元をゆがませるクー。
( ^ω^)「信じるしかないお。」
川 ゚ -゚) 「なら君の部屋に置いてもらうぞ。」
こうなってしまった以上従うしかない。
よく考えてみれば、消しゴムとはいえこんな美人と一緒に暮らせるのだ。
こんなチャンスは二度とないだろう。
( ^ω^)「仕方ないお。クー、寒いから早く帰るお。」
64 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/08(土) 20:10:26.60 ID: M0NvSWeQ0
時刻は27時を回っただろうか。
中学生が補導される時刻はとっくに過ぎている。
とりあえず早々に帰宅しなければならな―――
N| "゚'` {"゚`lリ「そうはいかない。」
(;^ω^)「だ、だれだお!?」
気が付けば後ろに見知らぬ人が立っていた。
キリッとした目、しっかりとしたガタイ。鍛え上げられた胸筋がツナギから覗く。
それはどこからどう見ても――――イイ男だった。
67 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/08(土) 20:11:49.51 ID: M0NvSWeQ0
N| "゚'` {"゚`lリ「俺のベンチをどこへやったんだい?」
(;^ω^)「え?ベンチ・・・ですか?」
N| "゚'` {"゚`lリ「ああ、あれは俺の指定席でね。さっきから遠くで君を見ていたんだが・・・。」
(;^ω^)「ぼ、僕じゃないですお!あれは僕の連れが・・・。」
N| "゚'` {"゚`lリ「連れ?どこにもいないじゃないか。」
辺りを見回す。
しかし目に映るのは閑散とした公園の風景だけで、彼女の姿はどこにもない。
68 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2008/03/08(土) 20:12:24.85 ID: M0NvSWeQ0
N| "゚'` {"゚`lリ「見逃してやりたいところだが、そうもいかない。きちんと落とし前をつけてもらうよ。」
ジィー・・・と男がツナギのファスナーを下ろしていく。
あらわになる肉体。本来あるはずの下着がそこには無かった。
(#゚ω゚)「消しゴムぅぅぅう!どこ行ったぁぁぁ!!」
空しく響く僕の叫び。
だがそれが彼女に届く事はない。
夜空の元人気の無い公園で、4年に1度の2月29日―――-
――――僕の純潔は散った。
続く