2 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 20:35:36 ID: UhdQy5VM0
サロン県に入って一時間が経った。
街並みがガラっと変わってくる。空気も違うような気がする。
俺はこの県をまっすぐ縦断しなければならない・・・。
ゲームで例えれば、一面をクリアして、二面を攻略するような気分だ。
温泉に入ったことで疲れが取れていた俺は、日が暮れても今日はちょっと進んでみることにした。
家に出てから三日目。トラブルもあったがなんとか順調である。
未開の地を、一人で突っ走るということは確実に楽しい。
目に見る物全てが初めてだ。新鮮だ。夕陽も美しい。
自分の街で見る夕陽はあんなにキライだったのに・・・。
('A`)ドクオは夏の旅に出るようです
4 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 20:38:02 ID: UhdQy5VM0
('A`)「あーー疲れた・・・」
('A`)「このへんで今日は野宿だな・・」
('A`)「野宿にもだいぶ慣れてきたwwあ・・そういえば」
俺はリュックから、阿部さんにもらった「ハッテン場リストMAP」を取り出した
('A`)「えーとここは・・」
('A`)「よし。入っていないなww」
身の安全を確認し、慣れた手つきで寝袋を準備した。
ふかふかのベッドで眠れる日はいつだろうか・・・・・。
まあいいや、最近は寝袋の寝心地も良いと思えてきた。
5 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 20:40:34 ID: UhdQy5VM0
ぶんっ・・・ ぶんっ・・
数時間が過ぎる。俺は胸がわくわくして中々寝付けなかった。
やっと眠りにつくかつかないか。というところだった。
さっきからなんだけど、俺が寝ている茂みの先から、何かを振る音が聞こえる。
なんだろう?正直五月蝿い。やっと眠れそうだったのに、これでは寝れない。
ぶんっ・・ ぶんっ・・・
('A`)「ねれねぇ」
7 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 20:46:39 ID: UhdQy5VM0
俺は、完全に目が冴えて立ち上がった。
茂みを越えると、そこには、ランニング一丁で、汗だくになりながらバットの素振りをする青年の姿が。
(;^ω^)「297・・298・・299・・・」
(;^ω^)「300!! よし、終わったお・・w」
( ^ω^)「ふぅ・・。お?」
ぬうっ
('A`)「・・・・・」
8 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 20:48:25 ID: UhdQy5VM0
( ω )「・・おっ」
(;^ω^)「おばけだおーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」
(#'A`)「・・・」
これが俺とアイツとの最初の接触だった。
なんて失礼なやつ。
9 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 20:51:15 ID: UhdQy5VM0
(;^ω^)「・・・がくぶる」
(#'A`)「・・・」
(#'A`)「うがーーー」
(;ω;)「うひゃああああああああ」
どすっ
(;'A`)(尻餅付きやがったよコイツ)
( ω )「・・・」
11 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 20:53:04 ID: UhdQy5VM0
('A`)「おーい?大丈夫ですか?俺は幽霊じゃないよ」
(;^ω^)「・・はっ!ほ、本当かお??」
('A`)「うん。足あるよ。ほら」
( ^ω^)「良かったお・・。幽霊だったらこのバットでぶん殴ってたお」
('A`)「その前に尻餅ついてちゃ、幽霊に逃げられちゃうよ」
( ^ω^)「そうだおねwww うはww」
(;^ω^)「・・・じゃ、君は誰なんだお?」
( ^ω^)「このへんじゃ見掛けない顔だお」
('A`)「・・ん。俺は・・」
13 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 20:55:15 ID: UhdQy5VM0
人見知りが激しい俺だが、こいつには口が滑らかに動いた。
・・・なぜか、こいつには俺と同じような何かを感じたんだ。
簡単な自己紹介をすると、頼んでもないのに、今度はあっちが自己紹介をし始めた。
( ^ω^)「ごほんww ボクの名前は内藤ホライゾンだおww」
( ^ω^)「サロン県立サロン北高校の二年生だおww」
( ^ω^)「このバットを見ればわかる通り・・ 野球部だおww」
そう言うと、内藤はいかにも野球部らしくバットを2、3回振った。
なんとこいつ・・ 内藤は俺と同い年だった。
旅に出て、同年の人と出会うのは初めてだ。俺は自然と胸がわくわくした。
14 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 20:56:57 ID: UhdQy5VM0
('A`)「そっかぁ・・・」
('A`)「・・・」
('A`)「素振りうるさくて眠れなかったんだよ」
( ^ω^)「すまんお・・w」
( ^ω^)「・・って」
( ^ω^)「ドクオくんはどこで寝てたんだお!!??」
('A`)「ん?あそこ」
俺は茂みの向こうを指差す
17 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 20:59:07 ID: UhdQy5VM0
( ^ω^)「うはwwww テラ野宿www」
(;^ω^)「な・・なぜなんだお???」
('A`)「今・・、旅に出てるんだ」
( ^ω^)「た、たび!?」
(* ^ω^)「かっけぇーーお!!男のロマンだお〜wwwww」
内藤は俺の一言一言にいちいち反応して、目を輝かせてくる。
17歳にもなって、なんて人懐っこい奴なんだ。
('A`)「・・・う、うん。そうだな、ロマンだなw」
('A`)「内藤は明日、試合でもあるのか?」
18 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 20:59:53 ID: UhdQy5VM0
('A`)「そうなのか。おまえ、レギュラーなのか?」
( ^ω^)「もちろんだお〜w」
( ^ω^)「一番センターだお☆」
('A`)「すげぇな〜・・・・」
俺とこいつは似てると言ったが、撤回。
なんだよ、すげーじゃないか。一番センターなんて。足速いんだろうな。
( ^ω^)「それじゃ、明日の試合に備えて今日はもう帰らなくちゃいけないお!」
( ^ω^)「縁があったらまた逢うお〜♪」
そして内藤は闇の中へと消えてった。
俺は、持ってきたラジオでプロ野球中継を聴きながらその夜は眠りについた。
20 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 21:07:59 ID: UhdQy5VM0
・・翌朝、いや、翌昼か?
俺は汗ダラダラになって目覚めた。昨日は予想外に疲れていたらしい。腕時計の針は11時を指している。
('A`)「あっちいいいい・・・死ぬ・・やばい・・」
('A`)「うっかり寝すぎたみたいだな・・」
気分が悪い。昨日の夕方あたりはあんなにさわやかな気持ちだったのに。
まあ、よくあることか?とりあえず俺はこのダルすぎる状態をいち早く抜け出すため、さっさと出発することにした。
('A`)「ふぃ〜・・・やっぱり風にあたると気持ちいいな」
('A`)「汗も吹っ飛んでいくよ・・」
ある看板が目に留まった
← サロン北高
500M
('A`)「・・内藤の学校だ」
22 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 21:14:08 ID: UhdQy5VM0
俺はハンドルを左にきる。校門らしき場所はすぐ視界に入った。
しかし俺が行きたいのはそっちじゃなく、敷地の奥にあるであろうグラウンドだ。
バットにボールが当たる気持ちのいい音が聞こえてくる。練習試合はこの学校でやっていたんだ。
('A`)「内藤のやつ、活躍してるかな?」
学校の外周をぐるりと回ると、グラウンドが見えてきた。
サッカー部が練習している奥で、黒のユニフォームと白のユニフォームが試合をしている。
遠すぎて内藤の姿は見えない・・・。俺はもっと近くに行くことにした。
('A`)「よっし。ここからなら快適に観戦できる」
('A`)「白のほうが北高かな?」
24 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 21:20:44 ID: UhdQy5VM0
黒のユニフォームを着ている高校が攻撃らしい。
いかにも四番打者気質な体格をした男が、ネクストバッターボックスでバットをぶんぶん振っている。
・・とすればセンターの守備場所にブーンはいるはずだが
('A`)「後ろ姿だからよくわからんわ」
「ストライーーク、バッタアウッ!!」
黒の打者が三振を取られた。
次はホームランバッターだ。きっとかなり飛ばすだろう。北高、頑張れ!
('A`)(やっぱりスポーツはするより見るほうにかぎるよ)
ちなみに俺は、自分の投げたボールが10メートル離れた相手にも届かない。
27 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 21:25:57 ID: UhdQy5VM0
一球目・・ 外角低めにストライク。打者は見逃す。様子見か?
二球目、三球目とボール玉が放られ、四球目は豪快にフルスイング。しかしファールチップだ。
五球目はまたもボール。これでカウントはツースリーフルカウントだ。
('A`)「wktk〜・・」
ピッチャーが汗をぬぐい、まっすぐを投げる。
やばいぞ、打者のバットを振るタイミングがばっちりだ。
・・これは
かきーーーーーーん・・・
('A`)「わ・・わあああ、とぶとぶ〜ww」
29 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 21:35:22 ID: BS6CGQvO0
俺が身を翻した瞬間、打球が頭の脇にどすっと落ちた。
タイミングがもう少し遅かったら、脳天激突していたかもしれない。あー怖い。
('A`)「あーびびった」
('A`)「でもホームランボールゲットだぜww」
俺は土のついた硬球を手にとり、投げる素振りなどして観戦を続けた。
・・向こうから人の声が聞こえる。
「おーーい、草刈りー!! 飛んだボールまだかー!!??」
「すいませんだお〜・・ 確かここらへんに飛んだんですお・・」
どうやら草刈さんという人がこのボールを捜しているみたいだ。そうだよな、練習試合だし。
32 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 21:42:48 ID: BS6CGQvO0
「・・困ったお〜・・。練習試合なんだからボールは失くせないお〜・・」
・・・待てよ?この口調は・・・
(;^ω^)「早くしなきゃコーチに起こられるお〜・・」
('A`)(内藤じゃねーか)
('A`)(レギュラーがわざわざここまで来るわけがないが・・)
俺はホームランボールを内藤のほうへ投げた。
とはいっても、ボールは数メートルしか飛ばず、あとは内藤のほうへ転がるだけだ。
( ^ω^)「おっ!! ボールだおww 投げてくれた人は誰だおww?」
34 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 21:48:10 ID: BS6CGQvO0
('A`)「・・よっ」
(;^ω^)「ド・・ドクオくん!!??」
('A`)「近くまで来たから観戦してんだ」
('A`)「ホームラン打たれちゃったけどさ、勝ってる?」
(;^ω^)(やばいおやばいおーーwww)
(;^ω^)「い、今のホームランで同点にされてしまったおww。今は3対3だおww・・多分」
('A`)「・・そっかぁ」
('A`)「・・・いいよな、野球」
36 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 21:55:12 ID: BS6CGQvO0
(;^ω^)「ほっ」
「おーい!! ボール拾い終わったら早く草刈りに戻れよー!!」
(^ω^;)「あ、すいませんだおww すぐ戻りますおww」
('A`)「・・・」
( ω ;)「・・・」
(^ω^:)「じゃあ、またあとでだお!!」
(;'A`)「あ、ああ・・」
39 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/29(日) 22:04:27 ID: BS6CGQvO0
俺の心に、なんだか切なくてどろっとしたようなものが残った。
でも一番切なくて、悲しかったのは内藤自身だ。
"またあとで・・"その言葉を俺は真に受け、試合が終わるまで、ここの野原で試合を観戦することにした。
もっぱら心は空っぽで、試合どころではなかったんだが。
時々、視界に入ってくる内藤を見まいと俺は必死だった。あいつも、自分のこんな姿を見られたくないと思っているだろう。
・・やっぱりあいつは俺と同じなんだな。
色んな夏の過ごし方があるだろう。
恋人とデートしたり、友達と遊んだり、勉強を頑張ったり。
海に行ったり。山に行ったり。気ままに家で過ごしたり。
・・・こいつは草刈りをやってる。なんてひどい過ごし方だ。
誰かがフラフラ遊んでいる間、こいつは、素振りとか必死で練習してる。(と思う。昨日の様子からするに)
なのに、草刈りしてる。グラウンドにも入れてもらえない。・・なんでだよ。
・・・内藤。
(白球編1 おわり)