1 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/24(火) 20:21:49 ID: 7O9Mhjb+0

とある夏の日。その日も同じようなことの繰り返しで、すぐに記憶の大海に沈められる予定だった一日。
ふとしたことから、そんなただ暑かっただけの日が、俺にとって少し特別な日となった。
「決意の日」とでも例えようか。(とはいってもその決意も他人の後押しのおかげだが)

事件はその日の夕方に起こったんだ。
一人憂鬱になってベッドに寝転がる俺へ、2007年9月3日・・そう、”未来”からメールが届いた。
そして送り先はなぜか自分のメールアドレス。本文は・・・

「旅に出ます 探してください」

とのことだ。今もよく意味はわからない。
この怪メールに俺は焦って、悩んで、考えて、内心ワクワクして・・・
その末に取った手段は、よりによって某 掲 示 板 に ス レ 立 て ときたもんだ。
スレの流れに流されるまま、(つーか俺が安価を出したんだけどな)俺は、旅に出ることになったのだが・・

 

 

 

〜('A`)ドクオは夏の旅に出るようです〜 

 

 

3 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/24(火) 20:25:50 ID: 7O9Mhjb+0

窓から見える景色を眺めて俺は思う!!!

空ってなんであんなに青いんだろう?

・・うーん。俺、これではなんか不思議ちゃんみたいじゃないか。

それじゃ、
・・・空の青色は一体何で構成されているんだろう?
オゾンとか・・・ そういうものか?
俺、理科は小学生のころから苦手だから、さっぱりわからない。

・・夏は、四季の中で1番嫌いな季節だけど、夏の空はどの季節の空よりも綺麗だと思う。
なんか、どーんって突き抜けてるように広がっているような、そんな感じがするんだ。
雄大という表現も合うね。とにかく、いいよな。うん・・
ちなみに今は講習中。古文の講習だ。夏の空は、いとおかし!

 

「・・・助詞にはいろいろ種類があって〜、格助詞や終助詞など〜・・」

('A` )(こんなに青空は澄み渡っているのに、俺の心は灰色雲)

 

 

5 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/24(火) 20:27:53 ID: 7O9Mhjb+0

('A` ) ポケーッ

「おい、ドクオ」

(;'A`)「は・・はい」

「おまえ、そんなに空が好きか?」

(;'A`)「あ、え、ええと・・」

「そんなに空が好きなら、そこの窓から飛び降りてもいいぞ?」

( A )「・・すみません」

「わかればいい。・・じゃ、この格助詞という種類についてだが〜」

そうだな。飛び降りて死んじゃえばずっと空に居られるもんな。ははは。
今日びの高校教師は、こんな酷いジョークを好む者が少なからず存在する。
・・でも今のってジョークになってたか?
別に俺は傷ついちゃいない。つよがりと言われたらそれで終わりだが、なんとか大丈夫だ。
しかし、反省して、ちゃんと講習を受けよう!といった気持ちもまったく生まれないので、

( A )(寝ることにしましょう・・・。眠いし)

 

 

6 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/24(火) 20:29:39 ID: 7O9Mhjb+0

( A )(・・)

 

 

 

( A )(寝ながらにして、視線が刺さっているのがわかるw)

俺はわずか1分間弱の睡眠タイムを終え、上体を起こした。
黒板を見ると、およそ3分の1ぐらいの板書が入れ替わっている。時計を見ると即座に気付いたが、実は10分もうつむいていたらしい。
体感の10倍のスピードで外界の時間は進んでいるようだ!・・ただし授業中寝ているときに限り。
刺さっている視線が、通りでいつもより痛いわけだ。と理解し、俺は完全に眠気がとれた。
・・しっかし、10分で板書の3分の1が入れ替わるって、どんだけアイツは授業が早いんだ?

('A`)(講習はあと少しでチャイムが鳴る!そして俺はまったく内容に着いていけてない!)

('A`)(・・なんかしてヒマを潰そう)

そして俺は辞書を手にとった。今は古文の時間なのに、なぜかロッカーから持ち出してしまった国語辞書・・

 

 

7 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/24(火) 20:30:34 ID: 7O9Mhjb+0

たび 【旅】
住んでいる所を離れてよその土地へ出かけること。
名所旧跡を訪ねたり、未知の場所にあこがれて、また遠方への所用のため、居所を離れること。旅行。

 

('A`)(とにかく、自分が住む場所から離れるのが旅の1番重要な条件なんだなぁ)

('A`)(・・一度も離れたことねえよ)

('A`)(ショボンおじさんの家でいいのかな?もうちょっと考えたいよな)

('A`)(そう考えているうちに夏休みが終わってしまう気がする・・)

「・・ドクオ」

('A`)(あー、どうしよどうしよ)

「ド ク オ」

('A`)「はぁ」

 

 

8 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/24(火) 20:31:16 ID: 7O9Mhjb+0

目線の先には、50を過ぎた加齢臭のきつい初老の国語教師がいる。
厚いレンズを隔てて、俺を呆れたように見るその目は、きっと様々な事柄、物を見てきたんだろうな。と思う。
 

('A`)「・・・」

「机に乗ってるのは国語辞典だな?」

('A`)「はい」

「今の時間は何だ」

('A`)「古文です」

「・・もうすぐチャイムが鳴る。それまで立っていなさい」

('A`)「はい」

初老の教師には決まった特徴があって、絶対怒鳴らない。
その色んなことを見てきた目には、俺みたいなダメな生徒も、たくさん写ったんだろうな・・と俺は自虐的になった。
そんな気分に浸っているうちに、チャイムは鳴った。

 

 

9 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/24(火) 20:35:05 ID: 7O9Mhjb+0

('A`)「やっほう。今日は補習がナッシン」

('A`)「頭がおかしい奴らと接触する前にさっさと帰ろう・・」

 

 

 

 

そして帰り道
俺はどこのネジが緩んだか知らないが、思いきったことを考えた。

('A`)「そーだ」

('A`)「家出、してみようか」

 

 

11 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/24(火) 20:50:34 ID: hMgeGCO/0

頭の中に突発的に浮かんだことは、案外、突発的にすぐ行動に移せるのは人間のいいところだ。
行動力が致命的に欠落している俺でも、家出についてとある考えがすぐ固まったので、進路を切り替えた。

('A`)「駅へゴーゴー・・」

('A`)「んが!!!」

J( 'ー`)し「あらー、講習もう終わったの?」

('A`)「ああ。かーちゃんこそ、何やってんだ?」

J( 'ー`)し「駅前の銀行にお金おろしに来たのよぉ〜」

('A`)「あ、あっそー」

 

 

 

家 出 終 了

14 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/24(火) 21:04:37 ID: hMgeGCO/0

ちなみに俺の考えとはこういうことだった。
今、持っている所持金全てを使って、1番遠くに行けるところへ行く。遠くに行ける切符を買う・・
といった、思い返すと、安直かつ無意味かつ無謀かつ・・かつ・・etcなアイディアだ。
旅の予行練習にでもなるかな。と思ったけど、放浪ビギナーの俺にとっては逆に難易度が高い。ってか高すぎるだろ。
まず、場所に着いたとするだろ。・・そっから先どーすんだよww 無一文ww 
この「無一文」ってところに家出の要素が含まれてるんだぜ。っていう説明は置いといて、俺は久方ぶりに、母親と家まで帰った。

 

 

J( 'ー`)し「ドクオと一緒に帰るなんて、小学校のときの運動会以来ねぇ〜」

('A`)「・・そだな」

J( 'ー`)し「あんときアンタ、障害物競争で3位に入れなかったぁ〜!って泣いてたわねぇww」

('A`)「・・そうだっけかぁ」

J( 'ー`)し「覚えてないの?あの日は雨上がりだったからねぇ、泥だらけの運動着も私の目には焼きついてるわよw」

('A`)「泥だらけの運動着・・ あぁ!」

 

 

15 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/24(火) 21:12:29 ID: hMgeGCO/0

そうだったなぁ。俺は毎年、運動会では障害物競争にだけ命を賭けていたんだ。
運動神経まるでゼロの俺は、それしか活躍できる場がなかったからな。
100メートル競争や、玉入れ、騎馬戦・・ そういう類の競技は、基本的に運動センスが重要だ。
でも、障害物競争ってのは、ちょっとの運と簡単なテクニックだからな。だから頑張ってたんだ。
その年の練習では、絶対3位以内には入ってたんだ・・。だけど、かーちゃんが見てる本番に限って4位か5位だった。
だからわんわん泣いていたんだ。くやしくて、恥ずかしくて。おぼろげながら思い出した。

 

J( 'ー`)し「あの日は泣いていたけど、今日はなんだか不機嫌みたいな顔してるわねぇ」

('A`)(かーちゃんがここにいなきゃ今ごろ俺は電車に揺られ・・)

('A`)「そーか?別にフツーだ」

J( 'ー`)し「・・いつか、笑ってるアンタと道を歩きたいねえ」

('A`)「・・・・」

俺は、空を見ていた。
どこまでも果てしなく広がって、どこまでも果てしなく青い空を。
かーちゃんよー、あんな空みたいにどっしり構えるには、どうしたらいいかな?
まあ、そんなことは恥ずかしくて、間違っても口に出せないけどな。

 

 

16 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/24(火) 21:14:41 ID: hMgeGCO/0

・・・・・・・よし。

('A`)「かーーーーーちゃん」

J( 'ー`)し「なんだーーーーー」

 

 

 

 

 

('A`)「俺、ショボンおじさんとこに自力で行ってみるわ」

”自力”っつー言葉に注目だ。
頭の中に突発的に浮かんだことは、勢いですぐ行動に移せるのは人間のいいところ。

・・本当にいいところだね。

J( 'ー`)し(かーちゃんはその一言を待ってたよ)

 

 

18 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/24(火) 21:27:50 ID: hMgeGCO/0

何も起こらないつまらない夏休み。いや、何も起こそうとしないつまらない夏休み。
いやいや? 何も起こせないつまらない夏休み。

・・

今年も例年通り、そんな日々が続くのかと俺は憂いを感じていた。
だけど、その憂いは、ついさっきの瞬間でぶっ飛んでしまったようだ。

なんという清々しい気持ち。まるで三ツ矢サイダーのCM。

 

もう決めたぞ。この決心は揺るがないぞ。

 

J( 'ー`)し「・・ところでドクオ」

 

 

19 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/07/24(火) 21:29:01 ID: hMgeGCO/0

J( 'ー`)し「”自力で行く”ってどういうことなのかしら」

('A`)(・・・っううう。これぞ青春ってやつだよな!!!)

('A`)「・・え?」

('A`)「あぁ・・・」

 

 

 

 

 

・・・自力、ねえ
重要なんだよ。ここ・・

(旅立ち編3 おわり)

 

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