3 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 14:47:05.44 ID: 6s/I1FMD0




 

日が暮れる頃、自転車の練習は終わった。
ヘリカルは、すっかり補助輪がなくても自転車を漕げるようになった。
家路を辿る俺の目に、夕陽のオレンジが飛び込む。

あれほど嫌っていた夕陽も、今の俺にはどうってことないのだった。

 

そんなことより、ヘリカルの笑顔の方が眩しくて……

 

 

ドクオは夏の旅に出るようです

 

 

4 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 14:49:02.43 ID: 6s/I1FMD0
*(‘‘)*「すごくたのしかった! なんだか、ふしぎなかんじだった!」

(´・ω・`) 「不思議? なんでだい」

*(‘‘)*「だって、手をはなしたってこと、ぜんぜん分からなかったんだもーん」

(´・ω・`) 「そうだね、知らぬ間に一人で乗れてた。そんなもんさ」

*(*‘‘)*「そんなもんだねっ!」

 

 

ヘリカルと叔父さんが、顔を見合わせて微笑む。
それを見て、俺と長岡さんがはにかむ。
線路に差し掛かり、踏み切りのバーが下りた。電車が轟音と共に走っていく。
遠くに来たものだから、通る車体も全然違う。

電車の中。吊り革に掴まっていた学生が、
参考書を開いていた。

 

 

5 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 14:50:15.35 ID: 6s/I1FMD0
('A`)(あ、夏休みの課題……)

(;'A`)(もうすぐ夏も終わりだな)

…やっぱり夕陽を見ると憂鬱だ。
和やかな雰囲気の叔父さん達をヨソに、俺は一人で暗くなっていた。
楽しい思いをした後は、必ず辛い思いもする。

 

そうか、終わってしまうんだな。
俺の夏が…

 

('A`)「…」

 

 

 

8 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 14:52:06.30 ID: 6s/I1FMD0

店に付くと、また長岡さんと杉浦は定位置に座る。
叔父さんは、何やら奥へと入っていった。

( ゚∀゚)「いやー… 良かったっす。感動っす」

*(‘‘)*「あ! これアタシのゲーム!」

(;゚∀゚)「やや! あ、その…」

*(‘‘)*「でんち切れてる!」

(;゚∀゚)「へへ… (やばいっす!!!)」

 

*(‘‘)*「まーいいや! でんちなんてとりかえればいいし!」

自慢げな顔をして、ヘリカルはクッションに勢い良く座る。
クッションが弾み、ほんの少しホコリが出た。

窓から射す夕陽で、それらがキラキラ光って見えた。

 

 

9 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 14:53:25.67 ID: 6s/I1FMD0
( ゚∀゚)「ほっ…… 良かったっす」

( ФωФ) ぎゅう〜

( ゚∀゚)「ん? 何の音っすか?」

(*ФωФ)「…」

 

( ФωФ)「お腹、減りましたね」

*(‘‘)*「はらぺこだー!!」

 

 

誰かの腹の音を聞き、俺も自分の空腹に気付く。
今日も1日色々あった… これは、充実しているといって良いのかな?
拳を握ると、まだ叔父さんを殴った感覚が残っていた。
そういえば、自転車に乗せた後から、一度も話していないな。

 

 

11 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 14:55:54.08 ID: 6s/I1FMD0
(´・ω・`) 「やあ」

厨房の奥から、叔父さんがゆっくりと姿を現した。
真っ白な調理エプロンが、薄暗い店内で一際冴えていた。

*(‘‘)*「お父さん! おりょうり作るの!?」

(´・ω・`) 「まあ、たまにはな」

(´・ω・`) 「ヘリカルが自転車乗れた記念に、な」

*(‘‘)*「やった!」

叔父さんがフライパンをお玉で叩き、
カンカンと音を出す。あんなに自信に満ち溢れた表情は初めて見た。

ヘリカルははしゃぎ、バタバタと足を動かす。

 

 

13 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 14:58:40.12 ID: 6s/I1FMD0
叔父さんは髭を摩りながら喋りかける。

(´・ω・`) 「何でも作ってあげるよ。何がいい?」

(*゚∀゚)「サバの味噌煮!!」

(´・ω・`) 「すっこんでろ」

(;゚∀゚)「皿洗い、するっす!!」

*(‘‘)*「うーんとね…」

*(‘‘)*「カレーライスが食べたい! カレーライス!」

 

( ФωФ)「またベタなものを。だがそれがいい」

('A`)(あー、そういえばカレーもしばらく食べてなかった…)

(´・ω・`) 「……」

 

 

15 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:01:25.37 ID: 6s/I1FMD0
(´・ω・`) 「ドク坊」

('A`)「あ、はい」

「二階の冷蔵庫から、材料持ってきてくれ」

叔父さんは後ろを向き、俺に命令する。
その声が心成しか弱々しかったのは、気のせいか。

 

(´・ω・`) 「…」

('A`)(この店には材料が無かったんじゃなかったのか?)

('A`)(てっきり材料の買出しでも頼まれるのかと思った)

 

 

18 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:05:37.75 ID: 6s/I1FMD0
冷蔵庫は、居間の近くですぐに見つけた。
俺は早速ドアを開けて材料を取り出そうとする。
冷蔵庫の中身は、酷く寂しいものだった。

('A`)「えっと… カレーに必要なのは…」

('A`)「!」

 

冷蔵庫の中にあったのは、数本のビールと、
人参と、玉葱と、じゃが芋と、僅かなバラ肉
そして―――

 

('A`)「…カレーのルーだ」

 

 

19 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:07:00.26 ID: 6s/I1FMD0
ヘリカルは多分きっと、冷蔵庫の中身を知っていたのだろう。

今、家にこれしか具材がないことを察してカレーを頼んだ?

すぐに、お父さんの料理が食べたくてカレーを頼んだ?

本当は他の料理が食べたかったけど、カレーを?

 

 

 

そんな考えが頭の中でぐるぐる回り、俺は目頭がつぅんとなってしまった。
人参や玉葱を抱えている内に、涙が少しだけ染み出してしまって、
睫(まつ)毛がうっすらと濡れた。

 

('A )「ちっ… 旅に出てからほんと涙脆くなったよ」

 

 

21 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:08:59.87 ID: 6s/I1FMD0
1階から「おーい! まだかー!」と声が聞こえる。
俺は睫毛に付いた水滴を小指で拭き取り、返事をする。

('A` )「あ、はーい。今行きます」

――――

('A`)「材料全部揃ってましたよ! はい!」

(´・ω・`) 「おお、ラッキーだな… ありがとうな」

(´ ω `)「……」

( ゚∀゚)「素晴らしい! 買出しに行く準備をしていた自分が滑稽っす!」

 

*(*‘‘)*「…」

 

 

24 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:12:39.57 ID: 6s/I1FMD0

夕陽が山々の間に沈んでいく。また1日が終わっていく。

店にはカレーの良い匂いが漂っていた。
ただなんとなく、黙って、料理が出来上がるのを待つ。

('A`)「…」

*(‘‘)*「…」

沈黙を割るように、長岡さんが徐に口を開いた。

( ゚∀゚)「あ、そういえば」

( ФωФ)「なんだい?」

( ゚∀゚)「ビロードたん、まだ帰ってこないのかな…」

その会話を聞いて、ふとしぃさんのことを連想する。
――今夜は帰ってくるのだろうか。

 

 

25 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:14:33.71 ID: 6s/I1FMD0
(´・ω・`) 「さあ、出来たよ」

(´・ω・`) 「みんなここから運んでってくれ」

叔父さんが台に皿を乗せた。途端にヘリカルの瞳が輝く。
真っ先に取りに行き、他のより一回り小さな器を手に取った。

*(‘‘)*「うわあー いい匂い!美味しそうな匂い!」

(´・ω・`) 「ほら、おまえらも早く取っていけよ」

 

(´・ω・`) 「みんなで食べよう」

 

( ゚∀゚)(みんなで…)

( ゚∀゚)「は、はい! 了解っす!」

 

 

27 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:17:35.29 ID: 6s/I1FMD0
――――

 

( ゚∀゚)「それでは嬢ちゃん、お願いします」

*(‘‘)*「いったっだきまーす!」

 

( ゚∀゚)「いただきむぁあああああーー」

*(‘‘)*「…って言ったら食べてね♪」

(;゚∀゚)「あっ……?」

口をあんぐりと開けて、長岡さんがヘリカルの方を向く。
叔父さんも、握っていたスプーンを一旦テーブルに置いた。

*(‘‘)*「ビロードと…」

*(‘‘)*「お母さんがいないじゃない!」

 

 

29 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:19:35.21 ID: 6s/I1FMD0
(;゚∀゚)「あ、ああ! そうっすね」

叔父さんに向けて、
ヘリカルが何一つ嫌味のない無垢な笑顔で言った。

*(‘‘)*「みんなで、食べるんだよね!」

 

 

(´・ω・`) 「そ…」

(´・ω・`) 「そうだな」

 

('A`)「…」

 

 

 

31 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:21:57.96 ID: 6s/I1FMD0
('A`)「…」

時計の針が一回り、そして、二回り。
ヘリカルは、店の天井に取り付けられたテレビで、アニメ番組を観ている。
腹が減っているだろうに、我慢強い子だ。

窓の外からは虫たちの囁き声が聞こえてくる。

( ゚∀゚)「ああ… カレー、カレー…」

( ゚∀゚)「たべ、たいな…」

長岡さんがスプーンを手に取り、具を掬おうとする。

( ФωФ)「コラ。 …どっちが子供だか分かりませんよ」

*(‘‘)*「ふふっ!」
_
(*゚∀゚)「へへっ。サーセンwww」

('A`)(あ〜。 とはいえ、やばいな。俺もそろそろ限界だ)

 

 

 

33 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:24:15.66 ID: 6s/I1FMD0
(´・ω・`) 「…」

叔父さんは厨房で、鍋を洗いながら煙草を吸っていた。
灰皿の中には、幾つも折り曲げられた小さいそれが捨てられている。
夕食を中断した後、叔父さんは何本も何本も煙草を吸った。

イライラしているのだろうか。不安なのだろうか。

 

('A`)(もうすぐ20時か……)

ヘリカルが観ていたアニメが終わった。
それと同時に、彼女のお腹が可愛い音を出した。

*(‘‘)*「はずかしいー。 ジョルジュ! きいてないよね?」

( ゚∀゚)「しっかり聞いたっす」

*(‘‘)*「ばか!」

ヘリカルは立ちあがって店先へ駆けた。

 

 

36 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:26:09.67 ID: 6s/I1FMD0
*(‘‘)*「まだかなー?」

ヘリカルが店の入り口を開けようとした瞬間、
それよりも先にドアが外から開いた。
視線が一斉にそこへと集まる。

*(‘‘)*「お母さん!?」

(´・_ゝ・`) 「…」

*(;‘‘)*「あれ… 違う」

 

 

 

 

(´・_ゝ・`) 「やあ。久しぶり、ショボン」

(;´・ω・`) 「―――――盛岡!!!!」

 

 

39 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:29:18.31 ID: 6s/I1FMD0
(;'A`)「……」

(;゚∀゚)「……」

( ФωФ)「……」

突然の来客。
現われたのは、ビロードさんでも、しぃさんでもなかった。
細身で穏やかな顔つき、大人の男性という言葉がよく似合う風格を帯びていた。
叔父さんが「盛岡」と呼んだこの男の人は、まさか。

 

(´・_ゝ・`) 「ある人から、おまえが店を開いてるって教えてもらってな」

(´・_ゝ・`) 「はるばる尋ねてきたんだが……」

(´・_ゝ・`) 「変わったバーだねここは。 まるで居酒屋みたいだ」

 

 

48 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:40:33.33 ID: cL36YwJy0
(´・ω・`) 「……」

(´・_ゝ・`) 「席はここが空いてるかい?」

盛岡さんは、俺たちから少し離れたカウンター席に座った。
そして、お品書きをジロジロと眺める。

(´・_ゝ・`) 「日替わり定食? 随分変わったものもやってるんだな、ここ」

(´・ω・`) 「…あ、ああ」

(´・_ゝ・`) 「まあいいや。まずは酒だよ、カクテルを。マスター」

(´・_ゝ・`) 「久しぶりに尋ねてきた親友のための、特別なやつをさ、頼むよ」

 

(;´・ω・`) 「あ…いや……」

 

 

52 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:42:49.33 ID: cL36YwJy0
困惑する叔父さんを、ヘリカルがとても不安そうな顔で見つめていた。
俺の向かいに座っていた杉浦さんが、スッと立ちあがる。

 

( ФωФ)「すいませんがお客様」

( ФωФ)「当店ではアルコール類はビールと焼酎しか扱ってないのです」

(´・ω・`)「す、杉浦」

( ФωФ)「焼酎なら種類は様々あります」

( ФωФ)「いも焼酎、米焼酎…」

盛岡さんが杉浦さんの言葉を遮って、呟く。
にやりと笑って。

(´・_ゝ・`)「いも焼酎で… 頼むよ」

 

 

56 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:45:21.63 ID: cL36YwJy0
すると、今度は長岡さんが立ちあがる。

( ゚∀゚)「了解っす! ちょいとお待ちくださいっす!」

長岡さんは厨房へ向かい、コップを取り出した。
水を流し、実に慣れた手つきで洗っていく。
そして蛇口を閉めると、手元に置いてあった布巾で丁寧に水滴を拭く。
カウンターにちょこんとコップを置く長岡さんの顔は、得意気だった。

 

( ФωФ)「えっと…、お酒は…」

( ФωФ)「ここか」

杉浦さんが瓶を持ってきた。
盛岡さんに、「御継ぎしますよ」と優しい口調で呟く。
コップに焼酎がとくとくと注がれた。

 

 

59 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:47:54.03 ID: cL36YwJy0
(´・_ゝ・`) 「おっ…と」

(´・_ゝ・`) 「ありがとう」

 

(*゚∀゚)「…」
( ФωФ)「…」

 

 

(´・ω・`) 「おまえら……」

盛岡さんの元に、ヘリカルが駆け寄る。

 

 

60 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:49:20.57 ID: cL36YwJy0
*(‘‘)*「お、おじさん誰?」

盛岡さんは、ヘリカルの頭を優しく撫でる。
そして、注がれた酒を少しだけ飲んで、言った。

(´・_ゝ・`) 「初めまして、お嬢さん」

(´・_ゝ・`) 「私かい? 私は盛岡デミタス」

(´・_ゝ・`) 「君のパパの親友さ」

(´・_ゝ・`) 「なあ…? ショボン」

 

(;´・ω・`)「あ、ああ」

 

 

64 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:51:28.44 ID: cL36YwJy0
(´・_ゝ・`) 「さっきから気になっていたんだが」

(´・_ゝ・`) 「なんでそんなに気まずそうにしてるんだい?」

(´・ω・`) 「な、なんでって……」

叔父さんは、眉間にシワを寄せ、
悔しそうな顔になる。
それも気にしないで、盛岡さんは続ける。

 

 

 

 

(´・_ゝ・`) 「…いい店じゃないか」

(´・ω・`) 「!」

 

 

70 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:54:48.62 ID: cL36YwJy0
(´・_ゝ・`) 「…お互い、年を取ったよなあ」

(´・_ゝ・`) 「ここに来るまで、諦めたもん、たっくさんあるよな」

叔父さんが体を震わして答えた。

(´ ω `) 「ああ…。そりゃあもう、たくさんな」

(´・_ゝ・`) 「…俺もさ」

(´・_ゝ・`) 「でも、逆に得たものもあるんじゃないのかい?」

 

盛岡さんはそう言って、店内を見渡した。途中で、ヘリカルをじっと見つめた。
ヘリカルが、不思議そうな顔をしている。
そして、再び叔父さんの方を向き、何気なくポツリと呟いた。

 

 

71 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:55:44.78 ID: cL36YwJy0

 

 

(´・_ゝ・`) 「それらを全て捨ててまで、まだ追いかけるものが君にはあるのかい?」

 

 

 

 

 

 

 

73 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:56:23.01 ID: cL36YwJy0
(´・ω・`) 「そ、それは…」

(´・_ゝ・`) 「君は、俺との約束を盾にして現実から逃げまわっているんだ」

(´・_ゝ・`) 「でも、約束は果された」

 

盛岡さんは、中身が半分程に減ったコップを、
くいっと掲げる。

 

 

 

 

(´・_ゝ・`) 「こんなに美味い酒が飲めたんだからな」

(´;ω;`)「……盛岡っ――――――――」

 

 

82 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 15:59:42.00 ID: cL36YwJy0
「まだ、ここに待つんです?」

「涼しくなってきたわね」

「そろそろ中に入るんです?」

「うん。入ろうか………」

 

その時、ドアが小さな音を立てて開いた。
控えめに開かれた入り口から、1組の女性と男性が現われる。
勿論、しぃさんとビロードさんだ。

 

(* ー )「ただいま」

( ><)「なんです!」

 

(´;ω;`)「あ、しぃ…」

慌てて叔父さんが涙を拭う。

 

 

84 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 16:02:21.43 ID: cL36YwJy0
*(*‘‘)*「おかえりー!!!!」

ヘリカルが、待ってましたとばかりにしぃさんの元へ走っていく……
そして、抱き合った。

 

(*゚ー゚)「あらあら、今日はこのお店やってるみたいね」

ビロードとしぃさんが、俺たちのテーブルの空いた席に座った。
しぃさんは、こう呟く。

(*゚ー゚)「今日のおすすめは何かしら?」

 

 

 

85 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 16:03:51.78 ID: cL36YwJy0

(*゚ー゚)「今日のおすすめは何かしら?」

( ФωФ)「すいません…… 生憎ですが、今日はカレーしかメニューが出ないんです」

(*゚ー゚)「ならカレーでいいわ!」

( ><)「カレー2人前なんです!」

( ゚∀゚)「しかも冷えてるっすよ!」

(*゚ー゚)「カレーってのは少し置いたほうが美味しいのよっ!」

 

 

(*゚∀゚)「へへっ…」

 

 

90 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 16:07:44.92 ID: cL36YwJy0

叔父さんのほうに目をやる。
今まで塞き止めていたかのように、叔父さんの円らな瞳から涙が流れ落ちていた。
その様子を、盛岡さんは優しく微笑みながら眺めていた。

 

(´;ω;`)「お、おまえ……」

(* ー )「この”しょぼくれ酒場”はねえ……
     来る人来る人がみんな悩みを抱えて、しょぼんとしてるからそう名づけられたのよ」

(´;ω;`)「し、知ってるさ。そんなこと」

(* ー )「なのにアンタが1番、顔しわくちゃにしてしょぼくれてたら、この店どーすんのさっ!!!」

 

(´;ω;`) 「う、うるせーや。馬鹿野郎…」

(*;ー )「誰がバカヤロウよ、もう……」

 

 

93 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 16:11:50.88 ID: cL36YwJy0
(;A`)「…」

( ;∀゚)「…」

( ФωФ)「…」

(´・_ゝ・`) 「…」

( ><)「…」

 

俺たちはただ黙ってその様子を見ているしか、
他にやることがなかった。いや、それだけで充分。

 

*(‘‘)*「お父さーん! お母さーん!」

 

(* ー )「うん?」

 

 

94 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 16:12:49.86 ID: cL36YwJy0
*(‘‘)*「早く、ごはん食べようよ!」

*(‘‘)*「―――みんなで!!」

(*゚ー゚)「そうね、みんなで食べましょう」

 

( ゚∀゚)「カレーライスニ皿おまちっす!!!」

( ><)「うひゃあ! 美味しそうなんです!」

(;><)「やっぱり、料理は店長が1番なんです〜」

*(‘‘)*「デミタスおじさんは?」

(´・_ゝ・`) 「いやっ、私は一人で楽しませてもらうよ…」

 

*(‘‘)*「よぉし! じゃあみんな手を合わせて!」

 

 

96 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 16:13:52.01 ID: cL36YwJy0

 

 

『いただきまーす!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やくそく編7 おわり)

 

 

 

 

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