*(‘‘)*(お父さん… ヘリカルとのやくそく、忘れたの?)
*(‘‘)*「…」
( ゚∀゚)「HEY! 何、しみったれた顔してんだい嬢ちゃん!」
105 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:04:06.22 ID: OGpQRgOu0
( ゚∀゚)「自転車を補助輪なしで乗れるようになろうー!」
( ゚∀゚)「with ジョルジュ!!!」
*(‘‘)*「……」
( ゚∀゚)「いぇーい!!!!」
( ゚∀゚)「ぱちぱちぱちぱち…」
*(‘‘)*「…」
( ФωФ)「…」
ドクオが夏の旅に出るようです
106 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:05:18.58 ID: OGpQRgOu0
※
俺は町を自転車で走っていた。
太ももの筋肉が張る。額には、汗の粒が出来ては消えていた。
町角に立っている時計を見上げる。13時だ。
そう、ショボン叔父さんは正午になっても店に現われなかった。
昼時。店内で長岡さんがポツリと呟いた一言が、胸でリピートされる。
――
( ゚∀゚)「しぃさんとヘリカルちゃんの悲しい顔は、もう見たくないっす!」
――
('A`)(うん… 俺もだ)
というわけで、俺は叔父さんを探している。
叔父さんが必要なんだ。ヘリカルには……
108 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:06:43.22 ID: OGpQRgOu0
( ゚∀゚)「ほんじゃ、早速乗ってみるっす!」
*(‘‘)*「……ほじょりんついてるよ」
( ゚∀゚)「あ! それは取らなきゃいけないっす!」
( ゚∀゚)「杉浦! スパナ!」
( ФωФ)「…そんなものないよ」
( ゚∀゚)「…」
*(‘‘)*「…」
( ФωФ)「…」
(;゚∀゚)(ドクオくん! 早く来てっっ!!!)
109 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:07:22.12 ID: OGpQRgOu0
('A`)「…あのー、すいませーん」
('A`)「…」
('A`)「いないか」
俺は、町中の飲み屋を片っ端から尋ねていた。
…しかし、あの背中を丸めて酒をすする、
しょぼくれ顔の親父は何処にもいない。
一体、どこにあの人はいるのだろうか?
('A`)「くそ〜 どこだろう?」
112 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:10:41.78 ID: OGpQRgOu0
自転車でまた進んでいくと、
昨夜叔父さんと出会った河川敷に出た。
俺は自転車を止め、丘を下りていく。
('A`)「もしかしたら…」
しかし、下りた俺を出迎えたのは、
叔父さんではなく、野球をして遊ぶ少年たちだった。
俺は少年の一人に尋ねる。
('A`)「なあ、こんな→(´・ω・`) 顔のオジさんを見掛けなかったかい?」
「…ううん。見てないや」
('A`)「そうか… すまんね」
俺はそのまま真っ直ぐ歩いた。
そして、疲れたように川沿いに腰を下ろした。
114 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:12:16.32 ID: OGpQRgOu0
('A`)「はあ…」
('A`)「元々は… 全部あんたの性じゃないんかい?」
俺は小石を投げた。
小石は綺麗に曲線を描き、池の中へ。 波紋がゆっくりと広がる。
('A`)「…どこにいるのかな」
('A`)「…って!! 叔父さんみたいなことしてる場合じゃないよ!」
丘を登り、再び自転車にまたがる。
遠くで揺れている陽炎を追い抜くほどに、俺はペダルを目一杯漕いだ。
116 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:13:44.01 ID: OGpQRgOu0
('A`)「ぬおおお!!」
加速する風景。
アテはないけど、叔父さんがいそうな場所を探しつつ。
しかし、スピードは例のごとくかなり出ていた。
('A`)「パチンコ…」
('A`)「ま、俺は入れないし…」
がらっ
(´・ω・`) 「いやー ボロ負けだよ」
('A`)「―――――――!!!」
117 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:15:04.09 ID: OGpQRgOu0
車は急に止まれない。
自転車も、急に止まれない。まあ、ある程度の無理は効くが。
叔父さんは、呑気にパチンコ店の入り口から姿を現した。
ブレーキを全力で握る。自転車が悲鳴をあげ、一気に速度を殺された。
アスファルトに、タイヤが磨り減った跡がくっきりと付いた。
俺は自転車を投げ捨て、叔父さんに駆け寄った。
(´・ω・`) 「…ん? ドク坊じゃねーか」
('A`)「叔父さん! どこにいたんですか!」
(;'A`)「探したんですよ!」
(´・ω・`) 「ここにいましたよ。 良かったですね、見つけられて」
(;'A`)「…っく―――!!!!」
――ズガッ!!
120 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:15:59.45 ID: OGpQRgOu0
……思わず、手が出た。
俺の弱くて、速度も遅い拳は、叔父さんの頬を確かに殴りつけた。
非力なパンチだけど、重みはあった。
人を殴るのは、初めてだ。
まさか、その相手が、
年上で、それに、身内だなんて。
(#´・ω・`)「なっ、何するんだおまえ!!!!!!!」
(#'A`)「あ、あ…」
( A )「あなたは、子供だ!!!!!!」
121 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:18:04.56 ID: OGpQRgOu0
端から見れば、パチンコ店の入り口で何をやってるんだろうと思う。
しかし、俺は感情的になっていた。
そしてその尖った気持ちは、どんどん言葉を吐かせた。
(#´・ω・`) 「子供だと!?」
(#´・ω・`) 「ガキからガキだと言われたくないな!」
('A`#)「いや、叔父さんは子供だ」
('A`#)「結局何一つ、成せずに…」
('A`#)「全てをうやむやにするばかりで…」
('A`#)「面倒なことから逃げてばっかりだ!!」
(#´・ω・`) 「なんだと! おいドク坊、おまえ――」
('A`#)「事実、アンタ、また一つ約束を破ろうとしているじゃないか!!!!」
122 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:20:10.19 ID: OGpQRgOu0
(´・ω・`) 「なっ……」
(´・ω・`) 「!!!!!!!!」
(´ ω `) 「…ヘリカル」
('A`)「お酒飲んで、パチンコやって、煙草を吸って、勝手にフラフラして」
('A`)「アンタの気分の、その場しのぎにはなるでしょうよ」
('A`)「でも、それって解決はしてないんですよ……?」
( A )「………そんな生き方、むなしいだけじゃないですか」
なんでこんなことが言えるのだろう?
思えるのだろう?
それは、俺自身がそういう生き方をしてきたからだ。
きっと、そうだ。
123 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:21:19.08 ID: OGpQRgOu0
(´・ω・`) 「ふんっ」
(´・ω・`) 「大人には、大人の事情が――」
('A`)「そこから先は言わせませんよ」
俺は、後ろの自転車を立て起こし、
後ろの補助席をパンパンと叩いた。
('A`)「乗ってください。」
('A`)「娘との約束も破る気ですか?」
自分で言うのもなんだが、俺は凄い形相で叔父さんを睨みつけた。
叔父さんは、眉尻を目一杯下げ、空を見た。
そして、咥えていた煙草を吐き捨てて、言った。
(´・ω・`) 「…行くか」
124 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:22:06.85 ID: OGpQRgOu0
※
( ФωФ)「はい、補助輪取れました」
( ゚∀゚)「よっしゃ! じゃあ乗ってみるっすヘリカルちゃん!」
*(‘‘)*「…うん」
*(‘‘)*「よいしょ」
*(‘‘)*「…」
コテっ
( ФωФ)「あ、コケた」
*(#‘‘)*「いたーい! もうやだー。 あーんあーん」
(;゚∀゚)「…」
( ФωФ)「…」
125 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:23:06.27 ID: OGpQRgOu0
人を自転車の後ろに乗せたのは、2度目のことだ。
ツンより体重が重いというのは勿論だが、
肩に掛ける手の大きさ、温かさ、伝わる体温、全てが違う。
当たり前のことなんだけどな。
どんどん変わっていく風景を背に、
叔父さんは呟く。
(´・ω・`) 「俺はなー、親友との約束はまだ破ったつもりはねえ」
(´・ω・`) 「あの時の夢は諦めちゃいねえよ」
('A`)(だから… だったら…)
言いたいことは幾つもあった。
でも言わなかった。
唇が、夏の風にさらされて乾いていた。
129 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:24:29.99 ID: OGpQRgOu0
(;゚∀゚)「かき氷買ってくるっす!」
*(‘‘)*「いちご」
( ФωФ)「ミルク金時」
( ゚∀゚)「了解っす!」
( ゚∀゚)「ん?」
(;゚∀゚)「あ、あのシルエットは!」
公園が遠目に見える。3人の姿もおぼろげながら見える。
俺は、スピードを落とし始めた。
そして後ろの叔父さんに話しかける。
131 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:25:31.45 ID: OGpQRgOu0
('A`)「ほら、みんないますよ」
('A`)「総出で叔父さんを待ってるんです」
('A`)「あ、ビロードさんはしぃさんの手伝いか…」
(´・ω・`) 「店番は誰がやってんだよ」
('A`)「開けてもいない店番なんか、誰がやるんですか」
(´・ω・`) 「…」
そうこうしている内に、俺達は公園に着いた。
( ゚∀゚)「ヘリカルちゃん! ヘリカルちゃん!」
( ゚∀゚)「店長っす!!! ドクオ君が店長を連れてきてくれたっす!!!!!!」
*(‘‘)*「…え?」
134 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:28:35.61 ID: OGpQRgOu0
*(‘‘)*「あ…」
*(‘‘)*「本当だ…」
ヘリカルの顔が、またほんのりと赤くなる。
それを見て、俺は「ああ、良かった」と思う。
叔父さんは自転車を下り、また”お父さん”の顔になる。
不精ヒゲを摩りながら、優しく呟く。
(´・ω・`) 「…遅れちゃったよ」
(´・ω・`) 「じゃ、練習しようか」
135 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:31:38.15 ID: OGpQRgOu0
*(‘‘)*「うんっ!!!」
ヘリカルのあんな嬉しそうな顔は、初めてだ。
彼女はニッとした表情で、自転車を立て起こした。
( ФωФ)(ドクオ君、やるなあ)
( ;∀;)「店長!! 僕はあなたがきっと来ると信じていましthjk」
(´・ω・`) 「…おっ、補助輪はもう外してあるじゃないか」
*(‘‘)*「そうだよ! ロマネスクがやってくれた!」
(´・ω・`) 「どーもな、杉浦」
( ФωФ)「いえいえ」
138 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:35:16.92 ID: OGpQRgOu0
*(‘‘)*「ねえお父さん?」
(´・ω・`) 「なんだい?」
*(‘‘)*「ほっぺたのアザ、なに?」
(;'A`)(…あ)
俺は、ふと自分がさっき犯した行為を思い出した。
どうしよう。叔父さんやヘリカルに、後から何をされるかわからない。
だがしかし、叔父さんは変わらぬ優しい表情で言った。
(´・ω・`) 「これはね、転んじゃったのさ」
*(‘‘)*「転んだ?」
(´・ω・`) 「ああ。だからちょっと遅れちゃったんだ」
*(‘‘)*「ふーん…」
('A`)(ほっ)
140 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:39:05.94 ID: OGpQRgOu0
(´・ω・`) 「それじゃあ、お父さんが後ろを押さえとくから」
(´・ω・`) 「とりあえず乗って走ってみなよ」
*(‘‘)*「ぜったいはなさない?」
(´・ω・`) 「うん。離さないよ」
*(‘‘)*「ぜったいぜったい?」
(´・ω・`) 「絶対、絶対」
*(‘‘)*「ぜったいぜったいぜぇーったい!?」
(´・ω・`) 「ほーら、乗った乗ったー」
俺たちはもうただの部外者だ。
ベンチに並んで座り、練習風景をのんびりと眺める。
( ゚∀゚)「…微笑ましいね」
('A`)「和みますね」
( ФωФ)(かき氷早く買ってきてよ)
143 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:45:31.92 ID: OGpQRgOu0
(´・ω・`) 「ほーら、大丈夫だろー」
*(‘‘)*「うん! すすめるすすめるぞー!!」
言わずもがな、俺は昔のことを思い出していた。
ギコさんと親父と河川敷で練習したあの日。
まるで重なって見えるようだ――
――
('A`)「あでっ! いったぁ〜。むずかしいよ!!」
(,,'A`)「立て!立つんだドクオ!」
(,,'A`)「男なら何回でも立ちあがるのだ」
('A`)「…あーい」
――
('A`)「…」
144 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:49:50.77 ID: Jsly6esN0
視線の先で、ヘリカルの自転車が倒れた。
*(‘‘)*「いたあ〜」
(´・ω・`) 「残念。さあ立つんだヘリカル」
*(‘‘)*「お父さん! 手、離したでしょ!」
(´・ω・`) 「ばれたか」
*(‘‘)*「離さないって約束したじゃない! もうー!!」
その光景を見ていた杉浦さんが、ふと呟く。
( ФωФ)「世の中には、破っていい約束と、悪い約束が、あるんですよね」
('A`)(…なるほどねえ)
( ゚∀゚)「ファイトだー! ヘリカルちゃーん!」
145 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:53:30.68 ID: Jsly6esN0
(´・ω・`) 「もう一度乗るかい?」
*(‘‘)*「あたりまえよ!!」
ヘリカルはむすっとした顔で、再び自転車に乗り込む。
叔父さんが自転車の後ろの部位に、手を添えた。
*(‘‘)*「今度こそぜぇええったい手離さないでね!」
(´・ω・`) 「えー、それはどうかな」
*(‘‘)*「やだ! つかまってないとこわい!」
(´・ω・`) 「なら、掴まっていよう」
*(‘‘)*「よーし!」
自転車が、ゆっくりと進み出す。
148 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:56:26.73 ID: Jsly6esN0
3M、5M、10M
どんどん進んでいく。
風を切って走るヘリカルの表情は、実に爽やかで、可愛らしかった。
自転車に掴まって後を追う叔父さんも、もう嫌なオヤジの気はしなかった。
そして、20Mくらい離れたところで、
叔父さんはスッと手を離した。
実に自然に、実に無造作に。
( ゚∀゚)「あっ…」
( ФωФ)(しっ)
('A`)「……」
149 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 00:59:41.93 ID: Jsly6esN0
ヘリカルの体は、左にも右にも揺れず、真っ直ぐ前を向いていた。
自転車も変わらず、風を切って走っていた。
…補助輪なしで走ることができたんだ。
叔父さんがこちらを向いて、にやりと力無く笑う。
嬉しいからこそ、そんな表情になるのだと、すぐに分かった。
*(‘‘)*「うわーー!! かぜになったみたい!!」
*(‘‘)*「ねえ、お父さん!」
ヘリカルが振り向く。しかし、お父さんは彼女と遠い位置にいた。
叔父さんはヘリカルへ手を振る。
(´・ω・`) 「やっほ〜」
*(‘‘)*「―――!!!! え?え?」
150 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 01:02:09.24 ID: Jsly6esN0
*(‘‘)*「アタシ、乗れてる!! ひとりで、ちゃんと乗れてるよ!!!」
(´・ω・`) 「ああ… 乗れてるね」
ヘリカルはターンをして、こちらに向かってくる。
彼女を、各々の温かい言葉が迎える。
( ФωФ)「やりましたねえー」
( ゚∀゚)「おめでとー!!! 嬢ちゃーん!!」
('A`)「やったな!!!」
152 名前: 1 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 2007/11/23(金) 01:05:10.32 ID: Jsly6esN0
*(‘‘)*「うんっっ!!!!」
陰り一つない晴天の下。
俺たちの周りをグルグルと周りながら、少女は答える。
そのときの屈託のない、純粋すぎる笑顔は、
恐らくずっと忘れないだろうな って、そんなことを思った。
(やくそく編6 おわり)