2 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 02:35:01 ID: tL5Cv6DW0

俺と内藤は和解し、俺たちは再び内藤の家へと進み始めた。
足や腕の擦り傷がジンジンと痛むが、心は清らかだ。

 

 

('A`)「・・・」

('A`)(こんなスーッとした気持ちはどれくらいぶりだろう)

 

 

口の渇きを内藤から奢って貰ったホームランバーが潤す。
そしてこの果てしなく続くような田舎道。麦藁帽でも被りたい気分だ。そして肩に虫かごを提げ、手には虫取り網か?
なんて呑気なんだ。

 

 

('A`)ドクオは夏の旅にでるようです

 

 

6 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 02:39:33 ID: tL5Cv6DW0

景色を見ながらしみじみと思う。
・・・いい町だなあ。(村かもしれんが)

 

果てしなく続くように見えた田舎道も、T字路に差し掛かった。
右には山と田んぼ。左にはちょっとした町並みが見える。

 

 

( ^ω^)「ハフww」

( ^ω^)「ハフハフwwドクオwwハフw」

( ^ω^)「そこを左wwハフハフww」

(;'A`)「アイスを口の外に出してから喋れよw」

 

 

8 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 02:41:21 ID: tL5Cv6DW0

こいつはアイスをペロペロ舐めて食べるのではなくハフハフと食べる。変な奴だ。
内藤の言うとおり左に歩を進める。

 

( ^ω^)「ハフハフ・・・。食べ終わったおw」

 
( ^ω^)「じゃん!」

 

内藤はアイスの棒をようやく口外に出したかと思いきや、立ち止まり、棒を表裏とクルクル交わしながら凝視し始めた。
・・そして溜め息をついた。どうしたのだろうか。

 

(  ω )「・・・」

 

 

9 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 02:42:52 ID: tL5Cv6DW0

(  ω )「・・・」

(;'A`)「どしたん」

( ;ω;)「ハズレだったお〜」

そう言って内藤は俺に何も印刷されていない棒を見せる。
そうか。ホームランバーは一塁打とかホームランとか当たりつきのアイスなんだっけ。

 

 

10 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 02:44:00 ID: tL5Cv6DW0

( ^ω^)「くやしーおww」

( ^ω^)「僕、ホームランバーで二塁打までの当たりしか出たことないおww」

( ^ω^)「いつか"ホームラン"を拝みたいおww」

( ^ω^)「お?wwドクオも食べ終わったおww」

( ^ω^)「・・どうだお?」

 

('A`)「・・・・」

 

(;'A`)「俺もハズレだww」

( ^ω^)「人生厳しいおーーww」

 

 

12 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 02:45:50 ID: tL5Cv6DW0

アタリかハズレか。

 

・・そんな避けられず、自分の力で変えられない選択肢が、人生には幾つも大なり小なり転がっている。
内藤がベンチにさえ座れないこと、俺が駄目な人間でい続けること、それも不可抗力なのか。
そんなことを考えているうちに、内藤の家らしき場所に着いた。いい匂いが漂う。

 

('A`)「・・・ブンブン軒」

('A`)「内藤んちって定食屋なんだな」

 

 

14 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 02:48:26 ID: tL5Cv6DW0

( ^ω^)「いやあーwテラ庶民で申し訳ないおw」

( ^ω^)「でも味はまあまあだと思うおww」

( ^ω^)「・・ドクオの親は何してるお?」

('A`)「いや・・俺んとこもテラ庶民だよ。ただ会社員さ」

 

(;^ω^)「お互い、親の跡を継ぐのは嫌だおね〜・・w」

 

('A`)「ああ・・」

 

 

 

 

内藤の何気ない一言が心の突起に引っかかる。

 

 

15 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 02:52:26 ID: tL5Cv6DW0

サラリーマンは自営ではないので跡を継ぐという表現はやや語弊がある。
しかし、「俺もこのまま単なるつまらないサラリーマンになってしまうのかなぁ・・」という
茫漠とした不安はいつだって持っている。
または、内藤が言うように、拒否の感情を。

 

・・・俺は、「自分には他人と何かがあるんだ」と、根拠もない自信を反抗期の頃からずっと持っていた。
何も行動を起こせないくせに、「今に見ておれ」という精神だけが先走っていた愚か者だった。
しかし、17歳の誕生日まで生きてきて、気付いた真実。

 

 

 

 

いや、ずっと前からうすうす気付いていたのに、見て見ぬフリをしていたこと。

別にそんなもんなかった。俺には特別なものなんて何もなかった。

 

 

17 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 02:54:54 ID: a2plZH4d0

・・ずっと目を背けてきたのに、その真実が一気に俺に接近してきたのは高校に上がってからだった。

 

春。妙なプライドが先行してあっという間に孤立。
でも逆に空気な存在になれば好きなことができる・・と思いきや、体や言動をネタに陰口の標的にされ、学校内で動きづらくなった。今もだけど。
ちなみにこの好きなことって・・・。色々あったけど、どれも構想だけで形にはならなかった。自分の行動力の無さに絶望した。

 

夏。学校祭のバンド演奏の練習に行く奴らを尻目に帰宅し、アニメ鑑賞。
ここぞとばかりに青春の花火咲かせてるカップルの奴らを尻目に帰宅し、オナニー。
真夏の太陽の下、汗を流して練習に取り組む運動部を尻目に帰宅し、クーラーが効いた部屋でパソコン。
夏休みに入ってからは何も無い。ただ、日付だけが過ぎていく空白の日々。

 

・・一番俺の劣等感や無力感が強かった季節だ。徹底的に惨めだった時期だ。だから大嫌いなんだ。去年の夏は思い出したくも無い。

 

 

19 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 02:56:18 ID: a2plZH4d0

秋。確か二度目の外部模試があった。
返却された答案は散々な結果。一生懸命取り組んだつもりなのに酷すぎる結果。もっと自分は頭が良い人間だと思っていた。

斜め前の奴らの話しが今でも脳内再生できる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「何点だった〜w」

  「200点w」

「すっげーじゃんww俺なんか180だぜ?」

  「まぁ、それくらいならいいんじゃね?」

  「だって100切ってるやつもいるんだよ?」

「はぁwwそいつホントに○高生かよw」

  「最低でも150点は取らないと、名乗って駄目だよなww」  

「ホントだぜwwうはww」

 

 

・・これも思い出したくない。
だが、すぐ思い出せる。そんな、嫌な過去だ。

 

 

20 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 02:57:32 ID: a2plZH4d0

そして冬だ。

冬・・。冬は・・・

 

   ドクオ!

ん?

   なにぼーっとしてるお!

 

・・・・・・・・

 

(;'A`)「・・はっ!わりぃ内藤」

( ^ω^)「よくこんなゴミゴミして、うるさい所で物思いに耽られるおww」

( ^ω^)「おまい、面白い奴だお〜w」

( 'A`)「あ、あぁ〜ww」

 

 

21 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 02:59:23 ID: a2plZH4d0

(::^ω^:)「へい!いらっしゃ・・ん?ホライゾンじゃねぇか!試合、どうだったよ!」

 

(;^ω^)(ん〜。ひたすら草刈ってたからわからんお)

 

( ^ω^)「・・勝ったおーw」

J^ω^)し「良かったわねえ」

J^ω^)し「隣にいる子は誰だい」

('A`)「ど・・どうも」

( ^ω^)「ダチのドクオだおーーww追々話すお!だからラーメン二丁!!」

(::^ω^)「金は小遣いから引いとくからな。よし、座って待ってろ」

( ^ω^)「げwwwこれは痛いwwww」

('A`)(すまねえ)

 

 

23 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:00:34 ID: a2plZH4d0

俺と内藤は、奥から二番目の窓側のテーブルに座った。
内藤は本棚から雑誌を持って来て、ペラペラとめくり読みしている。
俺はというと、さっきのドロドロとした想いが再び襲ってきそうだったが、窓から見える向日葵を見て、なんとか抑えた。
そうさ。旅をしている間くらいは、そういう黒くて嫌な感情を起こしたくない。

 

 

( ^ω^)「今週のジャンプは駄目だお・・つまんね」

('A`)「内藤、おまえ漫画は何読むんだ?」

( ^ω^)「ん〜・・」

( ^ω^)「DMCとか好きだおww」

('A`)「うひょう!俺もだww」

( ^ω^)「カミュ様がラルクの歌を歌う回なんかすげぇ笑ったお・・ww」

('A`)「うんうんww」

 

 

24 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:02:34 ID: a2plZH4d0

('A`)「俺としては、市長は人間だったって伏線は後付けじゃないかな〜と・・」

俺たちがささやかな漫画談義に花を咲かせていると、テーブルにラーメンが運ばれてきた。
・・・一瞬にして醤油スープの匂いに俺は夢中になった。

 

(::^ω^)「ラーメン二つ!できあがったよ!」

(::^ω^)「ドクオ君っつったな!味わって食ってくれや」

 

 

(;'A`)「・・・・・・・・・・・」

(;'A)「や、やばばばばばっばばばばば」

 

26 名前: >>23のカミュ様はジャギ様でした ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:03:54 ID: a2plZH4d0

その忠告もむなしく、久し振りに目の前に存在しているラーメンという"料理"に俺はがっついた。
うめえ・・ 世界で一番うめえよこのラーメン・・・ ブンブン軒GJ・・ としか言い様がない。

 

(;'A)ずずずーーーっ。ちゅるちゅるちゅる・・・ ごっくん ずずーっ・・

(;'A)「ふはーーーっ!!」

 

(;^ω^)「ハングリーだお〜・・ww 旅人だお〜・・ww」

 

スープがめちゃ熱く、胡椒もちょっと入れすぎたみたいで、目からは涙がこぼれる。
だが、全く感情的な涙ではないとは言い切れない。
久し振りに麺料理を口に入れることができて、俺は今、感無量だ!! 乾パンなんて、まずいんだよwww

 

 

28 名前: >>23のカミュ様はジャギ様でした ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:06:08 ID: a2plZH4d0

(;A)「うっ・・ううっ・・はふっ・・ちゅるるる(チャーシュー柔らけええええ)」

 

(;^ω^)(泣いてるお〜wよほどヒドイもん食ってくたんだお)

 

(;'A)「ぶはっ!!(す、スープあぢぃ!胡椒もかけすぎちゃったみたいだwwでもうめええええええ)」

 

(;'A)「・・・ずっ、ずずっ」

トンッ

(;'A)「ごっそさんでした」

 

 

29 名前: >>23のカミュ様はジャギ様でした ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:07:07 ID: a2plZH4d0

時計を見ると、食べ始めた時刻から4分しか経っていない。
驚異的な早さかはわからないが、自分の中では、驚異的だ。無我夢中になっていたとはこういうことか。

 

( ^ω^)「最後の一滴まで飲み干してくれるなんてよっぽど腹が空いていたんだおねww」

('A`)「ん・・ああ」

('A`)(正直モノ足りねえ)

( ^ω^)「・・」

(^ω^ )「とーちゃーーん!チャーハン大盛りと餃子追加だお!!」

('A`)「ちょっ・・!!」

('A`)「いいよいいよ別にさ・・」

( ^ω^)「おっおっwww」

( ^ω^)「旅人なら」

( ^ω^)「ヨソの地で出会った人の優しさには全力で応えろおww」

 

 

30 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:08:38 ID: a2plZH4d0

('A`)「・・・」

 

('A`)「言うねぇ」

 

そして更に数分後、餃子とチャーハンが運ばれてきた。
正直、チャーハンはラーメン以上の感動だった。
記憶を辿ると、俺が旅に出る前、自宅で最後に口にしたのは冷やし中華、麺類だ。
その日の朝は確かパン・・・。すると、米を食べたのは旅立ちの昨夜が最後だった。もう、何日か前だ。

コンビニおにぎりなら何度か買って食べたが、こっちは出来立てほやほやの手作りだ。
電子レンジの暖かさじゃなく、中華鍋の火力によって暖められた料理だ。内藤の親父さんが、丹精込めて拵えてくれたチャーハン。
ブンブン軒のチャーハンの米は、チャーハンの割にはあまりパサパサとしていなかった。しかし、それが逆に良くて、美味しかった。
コンビニのおにぎりにはないふっくらさが凄く新鮮な食感に感じたのだ。

 

32 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:11:28 ID: a2plZH4d0

(;'A)がつがつがつがつがつがつ

 

(;^ω^)「全力で食べてるお。わろすww」

 

(;'A)「・・・ぷはあああ」

(;'A)「ごちそーさま・・・」

(;'A)「ないとー・・・まじ、ありがと・・」

 

( ^ω^)「どういたしましてだおww」

 

久方ぶりに腹一杯食べたせいか、強烈な満足感と眠気が襲い掛かってくる。
だが、寝ちゃだめだ。
寝ちゃだめだ
寝ちゃだめだ
寝ちゃだめだ
寝ちry・・・・・・・・・・・

 

 

34 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:14:24 ID: a2plZH4d0

・・・

がたん

 

( A )「・・・」

( ^ω^)「食べるだけ食べて寝てしまったおwwまるで漫画www」

( A )「・・・ぐー・・・・すぴぴぴ」

( ^ω^)

 

 

35 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:15:09 ID: a2plZH4d0

( ^ω^)「旅かぁ」

( ^ω^)「・・・・」

(^ω^ )

 

 

 

「さあー、五回の表、ここらへんからゲームにドラマは生まれてくるのでしょうか」

 

 

36 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:17:00 ID: a2plZH4d0

  「そうですねえ・・。佐藤の球にもだいぶシベリア高は慣れてきましたね」

  「相変わらずの驚異的ピッチングですが、負けじとシベリアも"ヒットにつながる三振"を続けています」

「解説ありがとうございます。さて、そんなシベ高が繰り出す次のバッターは3番、田村」

「地区予選では決勝にて二本のホームランをスタンドに叩き込んだ彼ですが・・どうでしょうか」

  「一打席目のスイングを見た限りでは、ナインの中では一番佐藤の球にかする可能性がありますね」

  「ただしパワーは四番の遠藤などよりは確実に劣るので、外野前など安定したヒットを狙っていきたいですね」 

 

(^ω^ )(佐藤すげぇお。とても同い年とは思えないお) 

 

 

37 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:17:45 ID: a2plZH4d0

客「やっぱりすげえな佐藤。シベ高打線をここまで抑えるなんてよ。プロ行くのかな?」

客2「もちろんだろ。それにしてもやっぱり夏は甲子園・・」

(^ω^ )

(^ω^ )

( ^ω^)(・・・僕は)

 

( ^ω^)(甲子園の土なんか踏めなくていい)

( ^ω^)(ただ)

( ^ω^)(試合の中で、プレーがしたいお!!)

( ^ω^)(声を出して、ゴロ捕って、フライも捕って、打って、走って、楽しみたいんだお)

( ^ω^)(草刈りなんか・・草刈りなんか・・・)

 

38 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:18:36 ID: a2plZH4d0

・・・・・・・・・・・・・

 

 

「よし・・これで・・ww」

「あーーー!!!最悪だお!!」

 

 

( A )「・・・」

('A)むくっ

ここはどこだろう?
俺が寝ていたのは、寝袋の中じゃなくて、ベッドの中だった。
壁には野球選手のポスター、棚にはサインボールや色紙。本棚には野球漫画がずらり揃っている。

窓の外はもう真っ暗だ。急いで腕時計を見てみる。
・・・部屋の明りが眩しい。

 

 

40 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:22:01 ID: a2plZH4d0

( A`)「ん・・ん〜・・」

('A`)「くっ・・9時?夜の?」

 

「ダイジョーブ博士、失敗したおwwww」

 

('A`)(・・もしや)

( ^ω^)「ん」

( ^ω^)「ドクオwwやっと起きたかおwww」

 

 

41 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:22:48 ID: a2plZH4d0

('A`)(・・もしや)

( ^ω^)「ん」

( ^ω^)「ドクオwwやっと起きたかおwww」

('A`)(も、もしや)

('A`)「昼間っからずーーっと俺は寝てたのか?」

( ^ω^)「爆睡だおwww」

(;'A`)「す・・すまん・・・」

 

J(^ω^し「ほらいぞーーん!ドクオくーーん!お風呂沸いたわよ〜」

 

 

43 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:24:05 ID: a2plZH4d0

( ^ω^)「気にするなお!!!」

( ^ω^)「親には事情を話したから、今晩は泊まってけwww」

(;'A`)「まじか〜」

( ^ω^)「遠慮すんなおおおおwww」

( ^ω^)「さ、風呂入りにいくおww」

 

 

俺は店を出たら、悲しいが内藤に別れを告げて先へ急ぐつもりだった。
号泣必死の感動の別れになる予定だったww

・・・しかし

メシをたらふく食べてしまった俺は、その場で爆睡。
きっと内藤が自室まで運んでくれたんだろう。かたじけない。
疲れをここぞとばかりに癒すように夜まで眠りこけていたってことだ。
それどころか今夜は泊めてくれるというのだ。内藤はもしかして幸福の神様かもしれない。

 

 

44 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:29:55 ID: a2plZH4d0

('A`)「ふぃー・・」

( ^ω^)「いい湯かお?」

('A`)「ああ。最高だよ」

そう尋ねる内藤の身体は、さすがスポーツをやっている人間だ。と言った感じでよく鍛えられていた。
腕にはアンダーシャツの日焼け跡がバッチリついている。例えやることが雑用ばかりでも、浴びる日光は同じか。

それにしてもだ

その足は速く走れそうだし、その腕は球を遠くに飛ばせるくらいバットを振れそうなのに、なぜだろう?

部活動の事情やシステムはよくわからない。ましてや運動部だ。
何か問題でもあるのだろうか。しかし俺が助けてあげられることは・・・残念ながらなさそうだ。

 

 

48 名前: 修正 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:33:41 ID: a2plZH4d0

入浴し終わった俺と内藤は、茶の間で内藤のお母さんの料理に舌鼓を打ち、再び内藤の部屋に戻ってきた。
景色がよく見える部屋だ・・・。向こうの田舎道のほうはほとんど真っ暗で何も見えない。

 

でもやっぱりそれがいいんだ。

 

人工的な明りではなく、蛍の発光色が田んぼを仄かに仄かに照らしている。それだけで素敵だ。
内藤は相変わらずパワプロのサクセスを進めている。

 

( ^ω^)「よしゃwwオールAwwktkrww」

( ^ω^)(僕もオールAとまではいかなくても、オールCくらいにはなりたいなぁ・・)

 

 

51 名前: 修正 ◆ps3CKPkBXI Mail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:44:32 ID: a2plZH4d0

意気揚々とコントローラを操作する内藤に俺は尋ねた。

 

('A`)「・・なぁ内藤?」

( ^ω^)「なんだお?」

('A`)「どうしてこんな俺の世話してくれんだ?」

(  ω )「・・・」

 

少し間を置いて内藤は口を開いた。

 

 

( ^ω^)「・・・ドクオは今、一生懸命になれることがあるかお??」

 

53 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:47:02 ID: a2plZH4d0

ドッ('A`)キーン・・

 

('A`)「・・なんだあ、いきなり?答えになってねーぞww」

( ^ω^)「たとえば僕にとっての野球みたいな・・」

('A`)「ああ・・そういうのね・・」

( A )「・・・・」

 

 

 

('A`)「俺、ないんだよw」

 

 

55 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:48:47 ID: a2plZH4d0

こんな場面でよく内藤は俺の痛いところを突いてくるなぁと思った。

 

・・・「一生懸命になれることがあるか?」・・・?

 

 

今、旅をしているこの日々は例外として、いつも繰り返しのような一日を過ごす俺にとって、

 

会心の一撃だ。

 

59 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 03:59:46 ID: a2plZH4d0

( ^ω^)「そか・・・」

('A`)「うん・・で?」

( ^ω^)「おっ?」

('A`)「世話してくれる理由」

( ^ω^)「そりゃー、同い年の男の子がそんなすっげーーーことしてたら」

( ^ω^)「手助けしたくなっちゃうおwww」

(;'A`)「すっげぇことねえ・・。旅とか格好よく言ってるけど」

(;'A`)「本当はただおじさんの家を尋ねにいくだけだよ?」

( ^ω^)「でも!」

 

 

62 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 04:02:57 ID: a2plZH4d0

( ^ω^)「でも!」

( ^ω^)「一人だお!チャリだお!野宿だお!」

( ^ω^)「VIP県からラウンジ県まで・・遠いお!」

(;^ω^)「すげーーーおwww」

(;'A`)「う、うーんwwそう言われれば結構なチャレンジしてるなww」

 

( ^ω^)「・・あ!」

 

 

64 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 04:11:53 ID: a2plZH4d0

そして俺は自転車、内藤は走って公園へと向かった。
俺と内藤が出会ったあの公園だ。公園はサロン県の入口にあり、内藤の家からは中々遠い・・。
街灯が足元を照らす商店街や、ちょっとおっかない夜の田んぼ道を抜けて、やっと俺たちは公園に辿り着いた。

(;^ω^)「ふぅはぁ・・・。」

 

('A`)(よくこんな距離を走っていられるな)

 

('A`)(風呂入ったときも思ったが、補欠の補欠といえども、俺とは体のつくりから違うんだな)

 

 

66 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 04:14:14 ID: a2plZH4d0

僅か2分くらいの休みを挟んで、内藤は素振りを始める。
内藤が腕を振るたび「ぶんっ」と風を割るようないい音を出すバットは、中々重そうだ。
今日は俺がバットケースに入れて持ってきたが、いつもは自分で背負って・・?それも結構辛いトレーニングになるのではないか。
内藤は150回ずつ素振りを区切り、全部で4セット。合計で600回も素振りをした。
俺は野球の練習のことはさっぱりわからないが、彼は相当やる方なのでは?と思った。

 

ぶんっ!! ぶんっ!!
 
(; ω )「148・・・149・・」

ぶんっ!!

(;^ω^)「150!」

(;^ω^)「終わったお!!」

 

 

68 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 04:22:45 ID: a2plZH4d0

('A`)「おつ!!あそこの自販機でジュース買おうぜww」

( ^ω^)「た、大切なお金、いいのかお??」 

('A`)「大丈夫だよww」

 

 

 

そして俺たちはペットボトルを手にベンチに座る。ベンチといえば阿部さんだ・・・。ま、今は関係ないや。

 

 

69 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 04:24:03 ID: a2plZH4d0

汗を拭いたりして、一呼吸置いたあと、内藤はおもむろに語り始める。
いつもとは違う語り口だ。神妙だ。

 

( -ω-)「・・明後日」

('A`)「あん?」

( -ω-)「明後日、また試合があるお」

('A`)「まじか!?間隔短くないか?」

( -ω-)「・・・三年生が引退して、監督は新たなチームの基盤を早く作ろうと」

( -ω-)「夏休みには練習試合をたくさん入れたお」

('A`)「良かったじゃないか」

('A`)「出られるかもしれないぜ?」

 

 

70 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 04:26:18 ID: a2plZH4d0

その瞬間、内藤は突然俺の方を向いた。
かなりびっくりしたが、俺の驚いた顔なんてスルーして、話しを続ける。

 

(-ω- )「・・絶対に出るお」

(;'A`)「おぉ、気合入ってるな」

 

(-ω- )「明後日は二試合やるお」

(-ω- )「一試合目は主に一軍・・。二試合目は主に二軍中心でスタメンを決めていくらしいお」

('A`)「・・とすれば・・」

 

 

71 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 04:27:10 ID: a2plZH4d0

 

 

(-ω- *)「二試合目に、絶対スタメンで出てやるお!!!!」 

 

 

('A`)「・・」

内藤はなんだかいつもにこにこしていて、あまり怒っても怖くなさそうな顔つきをしている。
しかし、そのとき俺が見たあいつの顔は、何か、プラスの感情で満ち溢れていた。

とにかく、プラスの感情で。赤いオーラが出てきそうな勢いだ。

 

 

72 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 04:28:24 ID: a2plZH4d0

(  ω )

がばっ!

(;'A`)「いきなり立つなよww」

( ^ω^)「おっwwwwww」

( ^ω^)「やる気でてきたお!!!!」

( ^ω^)「さあ!ドックン!行くおww帰るおww」

 

 

75 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 04:32:45 ID: a2plZH4d0

 

 

⊂ニニニニ( ^ω^)ニニニニニニ⊃

明後日は、絶対に活躍するおーーーーーーーーーーーーーwwwww

 

 

 

内藤は、両手を広げて公園の外へ走り始めた。
今まで黙々とトレーニングをしてきた姿が全部ぶち壊れるくらい、なんだか滑稽だ。
・・しかし、その後ろ姿は活力で溢れているような気がする。

 

(;'A`)「ちょwwおまえーー!!まてよーー!!」

俺は必死で自転車で後を追う。変な走り方なのに、妙に速い。

 

 

78 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 04:39:05 ID: a2plZH4d0

たったったったっ・・・

⊂ニニニニ(* ^ω^)ニニニニニニ⊃「ぶーーーーーーんwwww」

シャカシャカ・・・

(*'A`)「飛ばすなあwwwないとーーー!!!!」

 

・・・野球ということに
こんなに打ち込める、一生懸命になれる内藤が

心底うらやましい

 

 

79 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 04:39:42 ID: a2plZH4d0

・・でも

嫉妬とか・・、恨めしさとか・・・

そういうのは微塵も感じなかった

俺は・・内藤を
勝手に"親友"ってもう認定したから

むしろ
心から応援してやりたいんだ

 

 

・・しつこいほどに何度も言うけど

夏って季節は嫌いだ・・・・

 

 

80 名前: 1 ◆ps3CKPkBXIMail: 投稿日: 07/08/02(木) 04:40:37 ID: a2plZH4d0

だけど・・・

 

夏の空は好きなんだw

 

今日の帰り道、内藤と走りながら見た満天の夏の星空

 

あの星の数ほど

 

俺たちの人生にチャンスが転がってる気がした

 

(白球編3 おわり)

 

 

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