74 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/09/25(火) 20:46:23.09 ID: yVfKkUwb0

 

 

    第3話 「クー:感情」

 

 

79 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/09/25(火) 20:48:06.19 ID: yVfKkUwb0
女とは集団的な生き物である。
行動一つとっても男からすれば違和感のあるものが多いだろう。
どうして何から何までそうも集団的に動くのかと。

そして一人は常に敵対される運命にある。
それはお嬢様学園として有名なこの中学でも例から漏れる事は無いようだ。

川 ゚ -゚)「……」

誤謬の無いように言うのであれば、クーも元々は集団の一人だった。
供に笑い、供に楽しみ、時には供に泣き、文句をたれていた。

この4月、彼女がTVに映ってからその均衡が破られた。

一般人の中で、クーは『一人』著名人となってしまったのだ。

川 ゚ -゚)「……」

どうして周囲はそんなにありありと、嫌悪を表情に出すのだろう。
そう思っていた彼女は、他人と接する度にさぞ嫌悪な表情をしていた事だろう。
一週間もあれば完全に孤立するのには十分だった。

決して理由はそれだけでもないが。

 

 

83 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/09/25(火) 20:49:49.12 ID: yVfKkUwb0
女というのはプライバシーを重んじる、それにどれだけの価値があろうと無かろうと。
相手のちょっと恥辱な出来事を話題にでも出せば、
それが大昔の事だろうが関係なく、交友関係に簡単に亀裂を入れられる。

思春期の周囲は、その下らない自尊心のために彼女を避けざるを得なかった。
プライバシーとプライド、彼女をのけ者にするには十分な理由だった。
プライバシーもプライドも無い彼女を除ける理由には。

  「えー、それではこの問題を、クー」

川 ゚ -゚)「はい、x=2です」

  「そうだな、座っていいぞ」

今から思えば彼女自身もいけなかったのだろう。

プライバシーの無い家庭があまりに辛く、嫌な顔して褒めてくれる周囲へ、心からの愚痴を口にしていた。
自慢話を忌避する人は多いだろうが、万人にとってそれ以上嫌悪されるもの、不遇自慢。
謙遜する余裕もなく、嫌々ながらも褒めてくれる仲間に延々とそれを吐露し続けた。

その醜悪な行為に、プライドなど微塵と無い。
亀裂を走らせるには十分だった。

  「えー、それでは今日の授業はここまでだ。
  各自予習等しっかりとしておくように」

 

 

87 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/09/25(火) 20:51:32.30 ID: yVfKkUwb0
彼女が自分の迂闊さに気付いた時には手遅れだ、周りとは修復不可能なほどの亀裂が走っていた。

女の構造とは実によく出来ている。

仲間外れを作る時は一人で決して行わず、まず友達に言うのだ。
集団的だからこそ、言われた相手は従うしかない、反対意見など出しようもない。
出したなら標的がその者に変わるのだから。

結果、おのずと『一人』が省かれる。

  「ねぇ、帰りに商店街行かない?」

  「行く行く、あまりお金持ってないけどw」

川 ゚ -゚)「……」

表情も関わり合いも消えたのは、この春の話だった。

数少ない友達もその表情が痛々しかったので切り捨てた。
嫌々付き合ってもらう必要など無い、そこまで自分は落ちぶれていない、時に親切は虐め以上に人を傷つける。
直接イジメ等を受けているわけではないが、必要以上に周りとも干渉もしない。

無口で無表情、TVでそういうキャラクタ付けをされてからというもの余計だ。
義務感や圧迫で、もう小さく笑みを浮かべる事も出来なくなってしまった。
不用意に言葉一つ発する事ですら、自分が壊れてしまうようで憚られた。

 

 

89 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/09/25(火) 20:53:15.64 ID: yVfKkUwb0
今では「無表情」や「無感情」と言われる度に嬉しさすら感じてしまう。
ちゃんとキャラクタを準えれていたんだ、と。

そしてその後、どうしようもないほどの悲壮感に彼女は押しつぶされるのだ。
もっともそれも無表情の彼女、誰一人と気付く事は無いのだが。

 

彼女は無表情であっても無感情ではない。

皆のように笑いあって、もっと感情を表したい。

楽しく遊びたい。

誰にもその望みは通じない。

それは、彼女自身がそれを露にしないのだから当然だ。

 

 

92 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/09/25(火) 20:55:01.36 ID: yVfKkUwb0
家にカメラを設置すると聞かされ、当然のように反対したのは誰でもない、クーだった。
既に確定事項となっていたのだろう、理由にもならない言い訳をグダグダと並べられた挙句に、
母親は彼女にこう言ったのだ。

ξ ゚听)ξ「女の子だから色々と思うこともあるだろうけれど、気にしちゃいけないわよ。
  ちょっとぐらいじゃ動じないくらい図太くならなきゃ。
  神経質じゃ疲れるだけよ、感情を隠せるくらいじゃないと」

こうするしかなかったのだ。

常に見張られている状態で心から笑えなどしない、怒れなど出来やしない。
思春期という感情豊かな今、その感情を消し去らなければこの家にはいられないのだ。

そうするのが最善だと母から教えられていたし、何よりも友達と遊んでいては無感情になんてなれやしない。

楽しさは、最も隠し難い感情なのだ。
悲しさより辛さより何より、楽しさが一番隠しだなんてできっこない。

殊更不器用な彼女だ、仲間を切ってその要因を直接つぶす事しか出来なかった。
もっとも、楽しさを隠す人間など、誰一人と好き好んで寄ってきてくるわけも無いが。

川 ゚ -゚)

 

94 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/09/25(火) 20:56:25.47 ID: yVfKkUwb0

 

 

ξ ゚听)ξ「女の子だから色々と思うこともあるだろうけれど、気にしちゃいけないわよ。
  ちょっとぐらいじゃ動じないくらい図太くならなきゃ。
  神経質じゃ疲れるだけよ、感情を隠せるくらいじゃないと」

 

 

 

 

97 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/09/25(火) 20:58:31.89 ID: yVfKkUwb0

ξ ゚听)ξ「クー、明日は婦人会でいなくなるからアプーの世話頼んだわよ?」

川 ゚ -゚)「ああ、特に問題ない」

ξ ゚听)ξ「あんたいっつも休みの日も家にいてくれて助かるわ。
  女の子だからちゃんと面倒みないといけないわよね。
  アプー可愛がってるし、それじゃよろしくね」

川 ゚ -゚)「ああ」

ξ ゚听)ξ「ついでに掃除と洗濯お願い、私夜まで帰ってこないから。
  一日暇でしょ?」

川 ゚ -゚)「分かった」

ξ ゚听)ξ「聞き分けよくて助かるわ、じゃあよろしくね」

川 ゚ -゚)「うむ」

 

川 ゚ -゚)「アプー、今日はママ来ないけど、静かにな」

(*ノωノ)「あぷー」

 

 

101 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/09/25(火) 21:00:12.73 ID: yVfKkUwb0

(,,゚Д゚)「おーい、飯まだかよー?」

川 ゚ -゚)「今日は婦人会だだったか……お金は預かっている。
  夕食の買い物に行って来るから静かに待っていてくれ。
  後、アプーの世話を頼んだ」

(,,゚Д゚)「分かったぞゴルァ」

川 ゚ -゚)「モナーもついてきてくれ」

( ´∀`)「分かったモナ」

 

川 ゚ -゚)「焼きそばと、お寿司と……あと、サラダも必要だな」

( ´∀`)「ウインナー食べたいモナ」

川 ゚ -゚)「ウインナーくらいなら私でも調理できるな」

川 ゚ -゚)「……思ったよりも高いな、ミートボールで勘弁してくれ」

( ´∀`)「こればっかりは仕方ないモナ、全然構わないモナ」

 

 

104 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/09/25(火) 21:01:55.22 ID: yVfKkUwb0

(*ノωノ)「あぷーッ、あぷーッ!!」

(,,゚Д゚)「うるせぇな……」

川 ゚ -゚)「どうしてアプーが泣いているんだ、アニキよ」

(;゚Д゚)「だってよ、俺がテレビ見ているのに遊べってうるさいから無視してたら……」

川 ゚ -゚)「面倒を頼んだだろう、アプーに許してもらうまで食事はお預けだ」

(;-Д-)「おおぅ……悪かったよ、アプー」

(*ノωノ)「あぷーッ!」

川 ゚ -゚)「なー、許してあげないもんなー」

(;-Д-)「そこを何とかお願いします……」

 

( ^ω^)「ただいまー」

川 ゚ -゚)「お、それでは食事にしようか。
  チンしてくるから、ちょっとだけ待っていてくれ」

(*ノωノ)「あぷ」

(;-Д-)「アプー様どうか私めをお許し下さい……」

 

 

107 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/09/25(火) 21:03:42.53 ID: yVfKkUwb0

川 ゚ -゚)「はい、あーんして」

(*ノωノ)「あぷー」

川 ゚ -゚)「おいしいか? 良かった」

( ^ω^)「クーは本当にアプーが好きだお」

川 ゚ -゚)「ああ」

( ^ω^)「遊ぶ事より何よりもアプーを見てくれて、本当に面倒見のいい子だお。
  父親として嬉しいお」

川 ゚ -゚)「好きでやっているんだ、遊ぶ事よりもよっぽど楽しいよ。
  アプーは可愛いし」

(,,゚Д゚)「俺らには厳しいのになー」

川 ゚ -゚)「兄ちゃんと比べられたら嫌だよねー」

(*ノωノ)「あぷ!」

(,,゚Д゚)「まったく……クーはアプーに優しすぎるんだよ。
  しかしカーチャンいなくても何とかなるもんだな、これから頼んだわ、クー」

川 ゚ -゚)「だが断る」

 

109 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/09/25(火) 21:05:26.76 ID: yVfKkUwb0

ξ ゚听)ξ「あんた、明日遊びに行きなさいよ」

川 ゚ -゚)「どうしてだ?」

ξ ゚听)ξ「毎日何か出来事が必要でしょ? アンタいつも家にいるじゃない?
  テレビカメラと一緒に行けば、それだけで出来事になるからね、お願いするわ」

川 ゚ -゚)「いや、家にいる」

ξ ゚听)ξ「あんたねぇ、年頃の女の子が何言っているのよ、それくらいの子はいつも遊びに行くものよ?
  それが毎日家の中って……どうしてアンタはそうなのでしょうかねぇ?」

川 ゚ -゚)「放っておいてくれ、遊ぶ友達が一人といないんだ」

ξ ゚听)ξ「そりゃそうに決まっているわよ、それだけ無愛想なら付き合えって言うほうが無理だわ。
  この際だから言わせて貰うけれど、あんたもうちょっと自分を出したらどう?
  家族でも正直困るわよ、その歳で遊ぶ相手がいないなんて悲しくない?」

川 ゚ -゚)「それならば私からも言わせて貰う。
  悲しいに決まっている、もっと感情を出したいに決まっている。
  アプーの面倒だって嫌じゃないが、私だってもっと他の事で楽しみたいと思っている」

ξ ゚听)ξ「何それ、あっきれた……じゃあ感情を出せばいいじゃないのよ、煩わしい」

川#゚ -゚)「……だったら今出す、もうウンザリだ、もう嫌だッ!
  私は無表情かもしれないが無感情じゃない、悔しいし怒りだってある!
  アプーは常に家にいる……いつも家にいることしか出来ない私の時間つぶしなんだ!
  分かってくれなくてもいい、もうアンタなんて信用しない、いい加減にしてくれ!」

 

 

111 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/09/25(火) 21:06:30.30 ID: yVfKkUwb0

 

 

川#゚ -゚)「この嘘つき!」

 

 

 

 

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