1 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 21:50:12 ID: zNGmVtoP0

森の中に男が一つ。
重い荷物も既に放り、身一つのみを走らせる。
軽いはずの体ですら、今の男には重過ぎた。

(;   )「はあ…はっ……」

止め処なく、終わりなく、体中の皮膚より汗が噴出す。
ぼたぼたと土へと染み込んで行く水分が、彼への導を作っていく。

 

3 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 21:51:29 ID: zNGmVtoP0

(*   )

男を追う影がまた一つ。
枯葉を散らし、木の葉を切り分け、その両手の先からは一本ずつ脇差が生えている。
嬉しそうに吊り上げられた唇は、彼と違い全く疲れを見せない。

影が大地を滑る度に、刃がひょう、と唸る。

 

 

4 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 21:53:01 ID: zNGmVtoP0

鬼ごっこも終盤だ。
荒い息が一瞬止まる。
男が樹の根で躓いたのだ。

死を覚悟する暇も無い。
逃げることに神経を集中させたせいで、転んだことにも気付けなかった。
恐怖のままに追われ、自分の命落ちる時さえ。

(* ∀ )「アヒャ」

男は、己の背に鉄で出来た翼が一本生えたことも、やはり気付けなかった。
影は羽を勢い良く引き抜く。
心臓を貫いた刃は紅い噴水を生み出す。
暫しの間宙を染めたが、瞬く間に沈んでいった。

 

 

5 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 21:54:28 ID: zNGmVtoP0

(* ∀ )「ア ー ー ー ッ ヒ ャ ッ ヒ ャ ッ ヒ ャ ッ ! ! !」

その飛沫を見て、影は空に向かって大きく叫ぶ。
甲高く耳障りな声は森に響き、狂気に恐れた鳥達は一斉に羽ばたく。
影は血に色付いた刀を、男の服で拭き取り、柄に収める。
そうして、男の足を持ち引きずって行くのだ。

(*゚∀゚)「…ククッ、ヒャハハ」

血のように赤く染まったその影は、思い出したかのように時折笑っていた。
何を思い微笑むのか、どこへそれを持っていくのか。
影を前にして逃げられた者がないため、知る者もいなかった。

 

 

6 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 21:55:18 ID: zNGmVtoP0

 
 
 
 
( ^ω^)内藤は鬼を追うようです

  一、 誰が
 
 
 
 

 

 

7 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 21:56:29 ID: zNGmVtoP0

賑やかな町の団子屋に男が座る。
空は晴れ渡り、気持ちの良い風が吹く。

(´・ω・`)「ふぅ……」

なのに男は憂鬱だった。

 

( ^ω^)「おやおや史余(しよ)殿。 どうしたお、溜息なんかついて」

腰に刀を提げた男が近づいた。
一目見ただけで、彼が武士だということが分かる格好に、その雰囲気。
彼は通りかかっただけだが、知人が暗い空気を醸し出しているのに心配になったのだ。

 

 

8 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 21:58:02 ID: zNGmVtoP0

(´・ω・`)「あら内藤さん。 いやあね、最近あの森に鬼が引越してきたらしくてねえ」

( ^ω^)「鬼? 鬼といえば、あの鬼かお?」

(´・ω・`)「そう、あの鬼ですよ。 僕も見たことはないんですがね。
      行商の方があの森を通る際、何人もお亡くなりになられたそうで」

( ^ω^)「鬼かお…噂には聞いたことがあるお。
       でもその鬼は待合国(らうんじのくに)の近くに住んでた気がするお?」

(´・ω・`)「だから、また引越ししたらしいんですよ。
      こちらで被害が出始めてから、どうやらあちらは静かなようだ」

ふむ、と内藤は顎に手を当て、空を見つめる。
何度か意味のない言葉を漏らし、団子の皿を挟んで、史余の隣に座った。
話を聞こうという姿勢を示したのだ。

 

 

9 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 21:59:25 ID: zNGmVtoP0

(´・ω・`)「行商人の命など、こう言っちゃあなんですがどうでも良いんですよ」

(;^ω^)「薬師がよく言うお」

(´・ω・`)「嫌ですねえ、助かる人を助けるのが僕の役目です。
      死人には薬石無効。 興味なんかありゃしません」

(;^ω^)「はあ、そんなもんかお?」

内藤はやや呆れた様子で茶をすする。
その話の次は何なのか。 目で促したら史余は溜息をついた。

(´・ω・`)「薬師ですよ。 僕は確かに薬師です。
      つまりは薬がないと何もできないんですよ」

 

 

10 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:00:57 ID: zNGmVtoP0

( ^ω^)「それとこれとは?」

(´・ω・`)「これだから野蛮人と話すのは好きじゃあないんですけどね」

(;^ω^)「はあ、理解力なくてすまんお」

(´・ω・`)「僕はよくあの森に薬草を採りに行っていましてね。
      あの森に鬼が居るって言うことは、草を採れないってことじゃあないですか」

( ^ω^)「それは困ったことだお」

(´・ω・`)「そうなんですよ、困るんですよねえ」

ねっとりとした口調で、史余は内藤に団子を勧めた。
やはり内藤は「はあ」と曖昧に返事をして、その団子を口にするか否かを考える。

 

 

12 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:02:43 ID: zNGmVtoP0

(´・ω・`)「つい先日も、草を採りに行かせた店の若い男が帰ってこない。
      さて、どうしようか。 店仕舞の準備でもしなければならないんですかねえ」

(;^ω^)「いやいや、それは困るお」

史余はこの町一番の薬師である。
他にも何件か薬屋があるにはあるが、どこも彼の店には劣るのだ。
内藤はようやくその団子を手に取った。

( ^ω^)「わかったお、検討してみるお」

(´・ω・`)「本当ですか、いつもすみませんねえ、助かりますよ」

(;^ω^)「はあ」

内藤は再び曖昧な返事だけをして、取った最後の一塊を飲み込んだ。

 

 

13 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:04:38 ID: zNGmVtoP0

 
 
 
 
 
 
 
ここ武威風国(ぶいふのくに)は東が海に面しており、西を山に、南を森に塞がれた土地だ。
あの森を抜け南へ行けば、新速国(にゅうそくのくに)があり
遥か北へ上れば待合国にたどり着く。

そして彼内藤は、武威風藩(ぶいふはん)荒巻家、
荒巻藩主の家臣の一つ、茂名一家の一人である。

( ^ω^)「茂名殿、茂名殿」

( ´∀`)「モナ、内藤じゃないかモナ。 丁度よかったモナ」

( ^ω^)「お? 何かあったんですかお?」

( ´∀`)「殺人だそうだモナ。
       モナは行かないとだから、一緒に来るモナ」

( ^ω^)「わかりましたお」

史余のことは後でも良いか。
つい数分前の会話が脳を掠めるも、内藤はこちらが先決であると考える。

 

 

15 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:06:15 ID: zNGmVtoP0

( ´−`)「内藤は先の殺人は知っていたモナ?」

( ^ω^)「先の?」

( ´−`)「ああ、まだ公にはしていないから知らないモナね」

( ^ω^)「とは?」

足早に進む茂名から、半歩下がった位置で内藤は続く。
目線は前方、街の奥だったが、聞き漏らさないように耳を済ませていた。
しかしそれに集中するあまり、すれ違った女に肩をぶつける。

( ^ω^)「おっと失礼」

(*゚ー゚)「イイエ、イイエ」

その女の持つ荷物があまりに大きく希代だったため、
気を取られ、内藤は茂名から少し遅れた。
慌てて小走りに近づく。

 

 

16 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:11:36 ID: zNGmVtoP0

( ´−`)「つい3日前。
      一人二人を殺すだけではなく、その家の者全てが殺されていたんだモナ」

(;^ω^)「酷いお」

( ´−`)「そして全員が首を刎ねられていたモナ。
       だけど、その家の若い男一人が行方不明」

歩を進めるたびに、人が多くなっている感じがした。
二人を見ると、人ごみがぱっくりとわかれ、道が出来る。
町人の一人がした挨拶に、茂名は一度だけ答えた。

( ^ω^)「…普通に考えれば、その行方不明の男が犯人ですお」

( ´−`)「ところが今回もまた一人行方不明者が出ているモナ」

( ^ω^)「お」

( ´−`)「前回と今回で行方不明者は二人。
       極力普通に考えれば、最初の行方不明者が今回の事件を起こしたか」

( ^ω^)「やはり普通に考えれば、また別に犯人がいるか…ああ、着きましたかお」

 

 

17 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:15:50 ID: zNGmVtoP0

小屋のような家だった。
周囲には人だかりが出来ているが、家の前では役人が見張っており、
そこで人の壁は終わっている。
モナーが姿を現すと、彼は一礼した。

( ´∀`)「ご苦労モナ」

( ^ω^)「おつかれさんだお」

立て付けの悪い戸を開ける。
あんまりにも開け難く、ガタガタと言うので、
完全に開ける前に壊れるんじゃないかと内藤は思った。
ようやく開いた室内への一歩を踏み出す前に、悲惨さが伝わってくる。

薄暗い家の中、湿気を帯びて漂う臭い。
紛れもなく、何度も嗅いだあの臭い。
黒いばかりの、鉄を含んだ血の臭い。

それがこの家のどこにも充満していた。

 

 

19 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:18:49 ID: zNGmVtoP0

(;´ω`)「鼻が曲がりそうですお」

事件発生からそれほど時間が経っていないのだろう
こげ茶色に変色した血のところどころは、未だぬるりとした光を発している。

( ´−`)「まるで戦の後だモナ」

茂名は土足で入り込む。
主人のいないこの屋敷、気兼ねする必要もないのだ。
おそるおそる内藤も続くと、草履の裏から湿った嫌な感触が伝わった。
血だ。 血が床を覆っている。

(;´−`)「これはまた酷い」

部屋の一角には盛り上がりがあった。
布を被せられただけの質素な山。
その盛り上がりの中身を、茂名は確認してすぐ元に戻した。
嫌そうに、目を細める。

 

 

20 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:23:57 ID: zNGmVtoP0

茂名が布を開いたほんの一瞬の間だった。
だがその瞬間に内藤は見てしまう。

頭、腕、足、胴体。
誰のものかわからないほど分解された、人の部品だった。
不意に足元を見れば、じわり、じわりと紅い池が侵食している。
内藤は無意識に後退った。
引いたその足も、結局血に濡れている。

「よお、遅かったな」

(  ω )゚ ゚ 「ぎょおうお!」

内藤は軽く背を叩かれた。
誰もいないと思っていた矢先のことだったので、内藤は心底驚く。
奇声を発した内藤に、茂名は更に驚いた。

振り向くと男がいた。
見知った顔に、内藤はほっと胸をなでおろす。

 

 

21 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:27:23 ID: zNGmVtoP0

( ´∀`)「やあ、欝多。 それで、何かわかったかモナ?」

('A`)「なあんにも。 ただ鬼を見たってヤツがいるだけですね」

欝多は肩をすくめた。
大した情報もなく、噂話ばかりを聞かされたのだろう。

だがその噂話も、笑ってはいられない内容だった。
茂名の顔が真剣になる。

( ^ω^)「鬼……」

( ´−`)「やはり鬼モナか。 確かに噂に聞くのと同じ手口だモナ」

鬼の噂だ。
この国には、鬼の噂が流れている。

鬼は、体中が血で赤く染まり、鋭い金の目を持っている。
昼夜問わずに、風のように現れ、一つの屋敷にいる者全てを殺して回る。
ただの噂だが、事実でもある。

 

 

22 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:31:46 ID: zNGmVtoP0

鬼は何故か、襲った屋敷の一人を持ち去ると言う。
的は必ず若い男だった。
今までの被害者は全て20〜25程度の男。

その理由も、鬼の像もまだ何も掴めていない。
町人から役立たずと罵られても仕方のないことだったが、
そんなもの知るか。 と言いたくなるほど、鬼は姿を見せなかった。

('A`)「もう口止めは無理っすね、既にぼろぼろと町に溢れてる」

( ´∀`)「仕方ないことだモナ、口に戸はたてられない。
       見張りを多くしているのに、この有様だモナ。
       昨日以上に見張りを増やすモナ」

('A`)「へい」

見張りを多くしただけで防げるんですかねえ、面倒なだけっすよ。
口では律儀に返事をしたが、欝多の態度には心が完全に出ていた。

( ^ω^)「あの、茂名殿、一つお話が」

( ´∀`)「モナ?」

 

 

24 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:35:59 ID: zNGmVtoP0

茂名はこの臭いに嫌気がさしたのか、
話を始める前に、内藤を外へと促す。
気が利かなかった以前に、こんなところで話をはじめようとした自分に
内藤は内心溜息をつく。

丁度昼飯時だったため、内藤らは飯屋へと移動した。
あんなものを見た直後に飯を食うのか、と人は思うが、
この程度は見慣れてしまっているのだ。

 

飯屋の暖簾をくぐり、まず迎えたのは若い娘の笑顔であった。
彼女は数々訪れる内藤らと面識があり「いつものですか?」とまた笑う。

( ´∀`)「そうしてほしいモナ」

はにかんだ笑みを浮かべて内藤が手を振る。
不満そうに欝多が横から突付いた。
肝心の娘は、茂名の返事に笑顔で答え、店の奥へと声を上げる。

( ´∀`)「それで、話とは何モナ?」

 

 

25 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:40:37 ID: zNGmVtoP0

いつもの席に付き、茂名は胡坐をかく。
その茂名と反対側の席に、二人は同じく座った。

( ^ω^)「薬師殿からお聞きした話ですが、
      どうやらその鬼は”あの森”に住んでいる模様なのですお」

( ´∀`)「あの森に?」

( ^ω^)「あの森を通る際に、行商人が殺されているらしく」

( ´−`)「ふむ、困ったことモナ。 そうなると他国との交易が…」

('A`)「でもそれが本当かどうかも怪しいっすよ。
   偽の情報だった場合、討伐隊を組んで行くのも馬鹿らしい」

聞いた話。 となると、信憑性はぐんと低くなる。
噂として聞いてはいるが、噂は噂のままだと真実には成らない。

( ´−`)「そうなんだモナ。 あまり人手を割きたくない。
       あの森のどこに居るかもわからないモナからね」

 

 

26 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:41:36 ID: zNGmVtoP0

それ以降、話は進まなかった。
真否が明らかでない限り、無益な人手は割きたくない。
かと言って、数人で行き、返り討ちに遭わない可能性がないわけではないのだ。

死しても痛手にならない者ならば、やられるかもしれない。
腕の良い者ならば、やられた時が痛い。
靄の向こうにいる相手にそうそう手出しはしたくない、というのが茂名の考えだった。

( ^ω^)「けど、放って置けば被害が増えるお」

( ´−`)「そうなんだモナ」

鬼にばかり手間取ってはいられない。
他にもやらなければいけないことは山積みなのだ。
この世の中、まだまだ平和とは言えない。
なんとかしなければならないことの一つに、鬼がいる。

なんとかする、とは、どうすることだろう。 と、内藤は思った。

 

 

27 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:45:49 ID: zNGmVtoP0

 
 
 
 
 
門から見えるあの森は薄暗い。
炎が地面を照らす。
火明かりから離れるごとに、徐々に心もとないものになっていく。
あの森にたどり着く頃には、闇がぽっかりと浮かんでいるばかりだった。
空の暗さよりも更に暗い、闇そのもの。
あそこに鬼が住んでいても不思議はない気がしてくる。

門番として立ち、夜風にあたりながら内藤は考えていた。

茂名は、何事も安全にと言えば聞こえは良いが、言ってしまえば臆病なのだ。
危険に対して一歩を踏み出す決断が遅い。
ただし、自分に危害がなければ途端に強気になる。

「おい」

呼びかけられて、急に現世へ戻ってきた気分だった。

 

 

29 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:47:20 ID: zNGmVtoP0

('A`)「おい、何を考えてんだ。 呆けんな。 鬼がきたらどうすんだ」

(;^ω^)「おっ、すまんお…って、自分こそなんなんだお」

門の反対側に立っていたはずの欝多は、いつの間にか座っていた。
鬼がきたら真っ先にやられるのは欝多の方ではないか、
相変わらずやる気のない奴だ。 と、内藤は頭をかく。
これでは一人で門番をしているようなものだ。

欝多の積極性がないのは今に始まったことではない。
けれど、腕はたつ、物事は効率よく済ませる。
やる気は人一倍あれど、どうにも上手くいかない内藤は、
幼い頃から、胸の内羨望していた。

 

 

30 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:48:57 ID: zNGmVtoP0

( ^ω^)「鬼のことを考えていたんだお」

('A`)「鬼ぃ? そんなの考えてどうすんだよ」

( ^ω^)「欝多は心配じゃないのかお?」

('A`)「そんなもん心配したってしゃあねえだろ。
    きたら戦う、それだけだ」

(;^ω^)「まあそうなんだお…。
      どうにかして、早めに対処できないものかと」

('A`)「そうだなあ」

欝多は門に背を預け、あの森を見た。
もしあの森に居ついていた場合、来るのは恐らくこの門からだ。

 

 

31 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:50:54 ID: zNGmVtoP0

('A`)「明日探しに行ってみるか?」

欝多の示した解決方法は簡単なことだった。
突拍子のないものではない。
むしろそれが自然に思えるのだが。

( ^ω^)「茂名殿に反対されるお」

('A`)「言わなきゃばれねぇよ。 見回りってことにすりゃ誰もわからねぇ」

(;^ω^)「そんなもんかお」

('A`)「それに…。 鬼とか斬ってみてえしなあ」

( ^ω^)「ああ…」

('A`)「あ?」

( ^ω^)「いや、何でもないお」

 

 

32 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 08/02/09(土) 22:52:12 ID: zNGmVtoP0

ああ、こいつも鬼なのだ。
穏やかな世の中に飽き飽きし、いつでも斬ることを望んでいる。
平和に向かうこの世代、先頭をきって進もうとは思わない。
だから欝多は常にやる気がないのだ。

( ^ω^)「その話、乗ったお」

夜深人静の中、内藤の声が低く響いた。

 

 

一、 誰が―――終

 

 

 

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