139 名前: ◆MAMEOLw4rQMail: 投稿日: 2007/09/23(日) 23:42:09.70 ID: X7n6Y3cm0

                         6

それから後は医者がやってきて、ドクオが診察室へ入っていく姿を見て。
そして医師が部屋から出てきて、ただそれだけだった。

 

( ∵)「打撲ですね」

医師の診察結果は、やはり打撲であった。
しかし、打撲といっても内出血を伴うような大きな怪我の場合もある。
その場合、もう楽器を吹ける状態では絶対になくなってしまう。
そうしたら、今まで積み上げてきたアンサンブルが全て台無しになる。

それだけは、なんとしても回避したかった。

( ∵)「応急処置が的確だったようで、幸い内出血などもありません。しかし、安静にすることが必要ですね」

だからもう、ブーンとジョルジュは医師の言葉を聴いて、ホッと胸をなでおろしていた。
が、そこで気づいたようにジョルジュが口を開く。
  _
( ゚∀゚)「ドクオは……楽器を……トランペットを明日から吹くことはできますか?」

その言葉を聴くなり、医師の顔が曇る。
言わずもがな、ブーンとジョルジュは嫌な予感を心に感じた。

 

 

 

140 名前: ◆MAMEOLw4rQMail: 投稿日: 2007/09/23(日) 23:43:14.59 ID: X7n6Y3cm0
( ∵)「トランペットですか? それは構えているとき、腕に負担がかかる状態になりますね。
   残念ですが、早く治したいなら、楽器はしばらく吹かないほうが良いでしょう。本人は、激痛を伴いますよ」
  _
(;゚∀゚)「そん……な……」

ジョルジュの両腕ががっくりと落ちた。
ドクオがトランペットを吹けなくなってしまった。
それはつまりアンサンブルがもう出来なくなってしまったということであって……。

(;'A`)「ま、待ってください! 俺は平気です!」

そんなことを考えているうちに、病室から会話を聞きつけたのか、ドクオが飛び出してきた。
その右腕には、何重にも包帯が巻かれている。見るからに痛々しかった。

(;∵)「こら君! 安静にしていなければ……」

(;'A`)「いや、本当に俺、なんともないんですよ! だから俺、大丈夫なんです」

ぶんぶんと腕を振り回して見せるドクオ。
その歯が食いしばられているのに、ブーンもジョルジュも気づいていた。

(;'A`)「だから俺、楽器ふけますから。安心してください、先生にブーン」

 

その場は、相変わらずのドクオの態度で、結局締めくくられた。

そして次の日、通し練習をしようと全員が楽器を構えたとき、明らかな異変が起こった。

 

 

 

141 名前: ◆MAMEOLw4rQMail: 投稿日: 2007/09/23(日) 23:44:43.75 ID: X7n6Y3cm0
(;'A`)「ぁ……」

ドクオが小さなうめき声とともに、楽器を支える右腕を離してしまった。
幸いにも左手で楽器を掴んでいたから良かったものの、その様子には怪我のことを効いただけのツンやクーも、ドクオを心配せずにはいられなかった。

(;'A`)「へ、平気だ。さ、続けよう」

ドクオがそう言い、再度楽器を構えたとき、やはりドクオは悶絶を明らかに表情に出していた。
その様子に、全員は気づいている。だからもう、今日はそれまでにしようと。暗黙の了解のように、全員はうなずきあった。

(´・ω・`)「今日の練習はこれくらいにしよう。ドクオ、腕をしっかり休めるように」

(;'A`)「イ、イヤだ!!」

だがしかし、ドクオはそれを否定した。
自分が足を引っ張るせいで、負けたくない。
そういう、ドクオの堅実さと同時に備わった頑固さが出てしまったのだ。

川 ゚ -゚)「わかってくれドクオ。私達にとってはな、アンコンよりもお前のほうが大事なんだよ」

(;'A`)「で、でもそんな。俺のせいで部活がなくなっちゃったら……」

ξ゚听)ξ「心配ないって! まだあと2日あるのよ? その間にドクオが腕を治せば同じでしょ?」

(;'A`)「で、でも……」

いつまでも否定し続けるドクオ。
その様子をずっと静観してきたブーンが、重く口を開く。

 

 

 

142 名前: ◆MAMEOLw4rQMail: 投稿日: 2007/09/23(日) 23:46:12.09 ID: X7n6Y3cm0
( ^ω^)「ドクオ、君は僕を庇って怪我をしたお。本来は僕が怪我をしていたはずなんだお。
      だから、僕は……君がそんな無理する姿を見たくないお。幸い、打撲は軽いから明日になったら治るかも知れない。休んでくれお」

('A`)「…………」

しばらくドクオは考え込んでいたが、やがて顔を上げ。

('A`)「わかった……。ありがとう……」

そういい残し、一人でそそくさと荷物をまとめて、音楽室を出て行ってしまった。

(´・ω・`)「……ドクオ」

後に残された4人の間に、もはや会話はなかった。

 

 

 

144 名前: ◆MAMEOLw4rQMail: 投稿日: 2007/09/23(日) 23:47:58.11 ID: X7n6Y3cm0
('A`)「……」

ドクオは、涙をこらえるのに精一杯だった。

自分が足を引っ張って、負けてしまったら。
そうなってしまったら、仲間が何と言ってくれようと、もはや自分は吹奏楽部にはいられない。

それもこれも全て、モララーのせい。

ドクオの頭にはそんな言葉が一瞬浮かんだが、すぐに首を振ってそれをもみ消した。
怒りに任せてモララーを半殺しにしたところで、そこから生まれるのは結局、新しい憎しみである。
だから、全て自分の責任として生きていこう。

そう思った矢先に。

( ・∀・)「……」

そいつが目の前から歩いてくるのが見えて、ドクオの右手に、思わず力が入った。

 

 

 

 

147 名前: ◆MAMEOLw4rQMail: 投稿日: 2007/09/23(日) 23:48:50.62 ID: X7n6Y3cm0
( ・∀・)「ドクオ……」

やがて、モララーはドクオの目の前にまで近づいてきた。
普通の人間なら、ここでモララーを殴っているだろうと。ドクオは、自分は大人であると一人考えていた。

( ・∀・)「本当に……すまなかった……」

モララーは頭を深く垂れ、何を思ったのか突然謝罪をしてきた。
その姿を見ると、何故か自分がコケにされているような錯覚を覚え……ドクオは無意識のうちにモララーの顔面を蹴り飛ばそうとしていた自分の右足を、寸前で押さえ込んだ。

('A`)「何をいまさら。過ぎたことに、俺は興味はないね」

モララーを追い越し、先へ行こうとするドクオ。
だが、その背中をモララーがしっかりと掴んで離さなかった。

( ・∀・)「ごめん。お前に怪我をさせてしまって、はじめて気づいたんだ。
      全部、僕のわがままだったって……。打撲に良く効く薬も持ってきた。だから……だから……」

モララーの声が段々かすれ、嗚咽交じりになっていく。
それを聞くと、ドクオはもう怒った気持ちは失せてしまっていた。

 

 

 

151 名前: ◆MAMEOLw4rQMail: 投稿日: 2007/09/23(日) 23:50:03.33 ID: X7n6Y3cm0
( ;∀;)「うっ……すまない……。ラウンジに勝つとかもう考えないで良いから……許してくれ……」

('A`)「……勘違いするなよ」

モララーのその声をさえぎるように、ドクオが一声。
モララーには背を向けたまま、目線は決して合わせない。

('A`)「ラウンジに勝つとか、そんな小さなことに俺は最初から興味はないんだ。
    ただなんていうかさ、阿呆なお前に見せてやりたいんだよね」

やがてドクオがモララーの方へ振り返る。
その顔は、夕日を浴び、なぜだかとても雄雄しく見えた。

('A`)「俺たち5人……いんや、うちの吹奏楽部の絆ってやつをね。
    お前に足りないのは、協調性なんだよ。気づいたんなら、改善しろ糞」

ドクオはモララー背中を掴むモララーの手を振り払い、その手に握られた『打撲に良く効く薬』をひったくり、自転車にまたがる。

( ;∀;)「……!!」

モララーが何かを言っていたが、ドクオはその言葉など耳に入れぬよう、勢いをつけて自転車をこぎ、岐路へと発った。

 

 

 

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