30 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/21(日) 23:52:56.17 ID: QG+QbgpYO
第2話【友達とテレビ】
暑い。
もうすぐ10月になるってのに、なんだってこんなに暑いんだ。
先月一回ものすごい台風が直撃して以来、ずっと晴れっぱなしだ。
俺は扇風機のまえにあぐらをかき、シャツを脱いだ。
( ,,゚Д゚)「あっち〜な、ボブ」
近づいてきたアメリカンショートヘアのボブを膝のうえに抱き寄せる。
ちなみに、ボブという名前は、いちばん『アメリカン』っぽいと思ってつけた。
スミスにしようか迷ったが、スミスは名字だったことを思い出してやめたのだ。
ボブが相手をしてくれないので、俺はテレビをつける。
たしか今日は『USO!ビップ』の放送日だ。
『USO!ビップ』とは、世の中の怪奇現象にせまるバラエティ番組だ。
毎回出演者が心霊スポットにいかされたり、未確認生物を探したり、超能力者にインタビューしたりする。
32 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/21(日) 23:54:46.66 ID: QG+QbgpYO
俺はテレビ画面に映る自分の顔を見た。
たしかこの一週間後、廃墟で撮影したテープで、
俺だけ全部顔が写ってなかったんだよな。
もちろん俺もスタッフも全員お祓いを受けて、今のところまだ何も起こってない。
テープ見たときはマジで泣くかと思った。
あのテープ放送すんのかな。
言い忘れてたが、俺は実は『USO!ビップ』のレギュラーだ。
ちょっと前に他の番組で、有名な霊能者に
『あなたは私より強い霊能力を持っている』
とか言われちゃって、それ以来いろんなオカルト番組に引っ張りダコで、ついにはレギュラーまで獲得してしまった。
そして、来週、また俺のロケが回ってくる。
次回は超能力少年にインタビューだったな。呪われたりはしなそうだ。
33 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/21(日) 23:56:14.83 ID: QG+QbgpYO
ニュー速市の高校、VIP高校についた。
( ,,゚Д゚)「驚いたな。まさか地元だとは」
(´・ω・`)「へぇ。ギコさんはニュー速市民なんですか」
ショボンだ。
若いのに有望で、今回も現場の指示を任されている。
若いと言っても、俺より年上だが。
カメラの方を向きセリフを言いながら校舎に入る。
周りでは女子高生がキャーキャー叫んだり、手を振ったりしている。
うむ。心が癒される。
とりあえず取材開始だ。
34 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/21(日) 23:57:50.04 ID: QG+QbgpYO
( ,,゚Д゚)「この学校に、凄い能力を持っている生徒がいるって聞いたんだけど」
川 ゚ -゚)「ああ、ブーンのことか」
( ,,゚Д゚)「ブーン?」
川 ゚ -゚)「内藤ホライゾンだ」
( ,,゚Д゚)「すごい力っていうのはいったいどんな力なんだ?」
川 ゚ -゚)「本人に会ってみればわかる」
( ,,゚Д゚)「・・・どこに行けば会える?」
川 ゚ -゚)「1−6だ」
テレビの撮影なんだからもう少し笑顔とかしてほしい。
じゃないとカメラの前でいちいち表情をつくっている俺が悲しくなる。
35 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/21(日) 23:59:34.32 ID: QG+QbgpYO
前もって連絡を入れていたからか、1−6は祭り状態になっていた。
カメラのまえでピースしたり、電話番号を叫んで彼女募集したり。
おまえらなんか流さねえよ。
そして、人だかりの中心でおどおどしている少年を見つけた。
( ,,゚Д゚)「おまえがブーンか?」
(;^ω^)「は、はいですお」
見るからに緊張している。
周りを囲んでいた活発そうな生徒とは違って、どちらかというと目立たない生徒だろう。
突然注目の的となり、困惑している様子が見てとれる。
( ,,゚Д゚)「すごい能力を持っているって聞いたんだけど」
(;^ω^)「そ、そうですお」
( ,,゚Д゚)「さっそくだけど見せてくれるか?」
(;^ω^)「わかりましたお」
スタッフがどこからか蛍光灯を持ってきた。
なるほど。蛍光灯を持つだけで光るってやつか?
マジックだったら足元に電気を流すだけでできる。
36 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/22(月) 00:02:11.26 ID: lUZyMljBO
(´・ω・`)「じゃあ教室の電気消すよ」
( ^ω^)「消さなくていいですお」
ブーンが机の上に置かれた蛍光灯に手をかざす。
( ,,゚Д゚)「おいおい…」
蛍光灯が、光ったのだ。しかもかなりの明るさで。
それだけじゃない。
ブーンの手に引き寄せられるように蛍光灯は宙に浮いた。
( ,,゚Д゚)「こりゃいったい…」
さらにブーンはその後、テレビをコンセントにささずに電源をつけたり、方位磁石を狂わせたり
いろいろとやってのけた。
( ,,゚Д゚)「つまり、電気が使えるってことか?」
( ^ω^)「そうですお」
ブーンはその不思議な力について説明を始めた。
37 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/22(月) 00:04:11.01 ID: lUZyMljBO
そのとき、俺はあることに気づいた。
さっきからブーンは教室のはじをチラチラ見ている。
ブーンの見ている先には、1人の男子生徒がいた。
長い髪で細い体。いかにもネクラって感じだ。クラスの輪にひとり入れないでいる。
( ^ω^)「…それで、雷にうたれたらしいんですお」
いかん。聞いてなかった。
( ,,゚Д゚)「雷に撃たれたってすごくね?見た人はここにいんの?」
( ^ω^)「いますお。えっと…」
ブーンはまた教室の隅の生徒を見た。しかしその生徒は反応を示さない。
ブーンはそばにいた女子生徒を呼んだ。
これがまた可愛いんだ。
ξ゚听)ξ「私はそのときそばにいたんですけど…」
ツンとよばれた美少女が説明を始めた。
俺はまた空想にふける。
もともと人の話を聞くのは得意じゃないんだ。
話の内容なら録音してるだろうし。
なんでこんな冴えない男子と学年1位でもおかしくないくらいの美少女が一緒に下校するんだろうか。
うらやましいことこの上ない。
39 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/22(月) 00:05:46.50 ID: lUZyMljBO
〜〜〜〜〜〜
テレビのインタビューは40分ぐらいで終わった。
緊張しすぎて、ちゃんとしゃべれたかどうか自信がない。
目の前に芸能人がいたんだから。
ギコさんやテレビ局の人が教室を出て行くと、僕の周りにいたヤツらもそれについていった。
僕はドクオの方へ歩みよった。
('A`)「あっという間にすげえ人気者になったな」
( ^ω^)「テレビの人が来てたからだお」
('A`)「どうかな。きっといろんなテレビとか出るようになるぜ」
なんとなく、ドクオの言葉に嫌みが込められているような気がした。
41 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/22(月) 00:07:07.52 ID: lUZyMljBO
その日の放課後、僕はいつも通りドクオとツンと帰ろうとした。
しかし後ろから誰かに呼び止められた。
( ^Д^)「おーいブーン、一緒に帰ろうぜ」
プギャーとジョルジュだ。
いつもクラスの中心にいるが、あまり話したことがない。
( ^ω^)「え、でもド…」
( ゚∀゚)「たまには一緒に帰ろうぜ。な?」
半ば強制的に、僕は彼らと帰ることになった。
仕方がないのでドクオにメールをいれておく。
「ごめんだお。今日は一緒に帰れないお」
返事は返ってこなかった。
42 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/22(月) 00:09:19.78 ID: lUZyMljBO
日曜日、またテレビの人たちと会うことになった。
僕の力を科学的に解明するらしい。
( ,,゚Д゚)「よお。元気にしてたか?」
ギコさんとスタッフと一緒に、僕は車に乗り込んだ。
( ,,゚Д゚)「わりぃな。日曜なんかに呼び出しちって」
ギコさんが謝ってきた。目つきは悪いが、意外といい人のようだ。
( ^ω^)「どうせ暇で何もすることないですお」
( ,,゚Д゚)「友達とかと遊んだりしねえのか?」
( ^ω^)「友達あんまりいないですお」
( ,,゚Д゚)「そうかぁ?結構いるように見えたけど」
きっと撮影のとき周りにいたプギャーたちのことを言っているのだろう。
( ^ω^)「彼らとはそこまで仲がいいわけじゃないですお」
( ,,゚Д゚)「ふーん。ああ、なるほど」
ギコさんはひとりで何か納得して言った。
( ,,゚Д゚)「少ない友達、大切にしろよ」
43 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/22(月) 00:11:31.11 ID: lUZyMljBO
病院でなんか偉い人の話によると、雷で撃たれた衝撃で、膨大な量の電気が僕に蓄えられたらしい。
しかも僕の体がその電気に馴染み、自家発電までしているらしい。
そして、ドクオの予想は的中したのだった。
僕の話が『USO!ビップ』で放送された翌日から、いろんな番組から取材が来るようになった。
放課後に取材されることも多くなった。
( ^ω^)「ごめんだお。今日も一緒に帰れないお」
('A`)「・・・・・・」
ξ゚听)ξ「ブーンもう有名人だね。いいなあ、テレビにいっぱい出れて」
( ^ω^)「ほんとごめんだお」
45 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/22(月) 00:13:19.50 ID: lUZyMljBO
そんなこんなで、僕が雷に撃たれてから2ヶ月がたった。
今月の終わりに、ツンの誕生日がある。
最近、ツンとドクオとあまり遊んでないから、ツンの誕生日が楽しみだ。
その一週間後。
(*゚ー゚)「おかえりぃ!電話あったよ!」
どうやら僕が出かけている間に電話があったようだ。
しぃはうまく電話に答えれないので、留守番電話にさせている。
知らない電話番号からのメッセージを再生する。
『やあ(´・ω・`)USO!ビップのショボンです。実は、ブーンさんが
【世界一高圧電流を体から出す人間】というギネス記録に認定されたんで、
ウチで授賞式みたいのをやりたいなと思いまして。
再来週の日曜日の午前中の予定です。よろしくお願いします』
46 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/22(月) 00:14:53.74 ID: lUZyMljBO
僕は同じ録音をさらに2回再生した。
聞き間違えじゃない。
どうやら僕は、世界が認める超人になってしまったようだ。
(*゚ー゚)「すごいよ!せかいいちだよ!」
しぃは無邪気に僕に飛びついた。
僕はカレンダーを見た。
再来週の日曜日。
そこには赤い文字で、『happybirthdayツン』と書かれていた。
(*゚ー゚)「今日はお祝いにお赤飯だね!」
どうしたものか。
ギネス記録。
これを逃がしたら、一生手に入らないだろう。
それに、雷を体に蓄えた人間なんて、この2000年間で、いても2、3人ぐらいだろう。
つまり、ほぼ永久的に僕の名前は歴史に刻まれることになる。
49 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/22(月) 00:17:38.15 ID: lUZyMljBO
世界一になる?
今まで目立ったことといえば、小学校のころに読書感想文が入選したことぐらいしかない僕が?
想像するとだんだんぞくぞくしてきた。
なりたい。
一度でいいから、誰からもちやほやされるような存在になってみたい。
根暗。影が薄い。マイナーキャラ。
そう言われない自分が欲しい。
僕は再びカレンダーを見た。
ツンの誕生会は3時からだ。ドクオは必ず待ち合わせに15分遅れる。
撮影は午前中だと言っていた。仮に1時間長びいたとしても余裕で間に合う。
大丈夫だ。
僕はしぃが作った赤く塗られた粘土(赤飯)を見つめながらにやけた。
そうだ。
誕生会のときにギネスの賞状を見せてやろう。
ツンのやつ、きっと自分のことのように喜ぶぞ。
だめだ。わくわくしすぎて顔がにやける。
しぃは僕のにやけ顔と目を合わせると、無邪気ににこっと笑った。