207 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: sage 投稿日: 2007/09/14(金) 08:01:09.71 ID: EryetWIw0
昔はよかった
誰でも一度は思うんじゃないだろうか
日々を経る毎に実感してしまう
明日が来なければ良いのに
黒い塊が自分を押しつぶす
「子供に戻りたい」
そういうと誰かが笑う
「まだまだおまえは子供だよ」
まだ 子供?
なら まだ先があるの?
未来は真っ白で
過去は真っ白で
現在も真っ白だ
208 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: sage 投稿日: 2007/09/14(金) 08:02:12.30 ID: EryetWIw0
「泣くな、弟者!オトコだろ」
子供が、よく似た顔の子供に叱咤する。
その声は険しく。その表情は優しい。
「…うん」
答えた声はしゃくりあげていて、明確には聞き取れないけれど
通じて欲しい人に聞こえたのだから、それで十分なのだ。
子供同士の喧嘩。
弟者は人よりも発育が遅くて、いつも喧嘩しては負けていた。
209 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: sage 投稿日: 2007/09/14(金) 08:03:24.02 ID: EryetWIw0
「バカだな、弟者は。弱いんだからケンカなんかしなければいいのに」
「…兄者にバカとか言われたくない。
それにオレが悪いわけじゃないのに、どうしてオレがゆずらなきゃならないんだ」
「それがオトナのツゴウってやつだ」
「フーン。…オレも兄者みたいに強ければな」
「弟者にはムリだろ」
「なんだと!?見てろよ!いまにこすから!」
「あーはいはい」
怒鳴りあって、殴り合って。
ボコボコにされる前に、必ず兄者が助けに来た。
2列縦隊―――
並べば、必ず弟者は前の方だし、兄者はいつも後ろ。
誰が見ても、彼らは双子の兄弟で、兄者は”アニ”で、弟者は”オトウト”
210 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: sage 投稿日: 2007/09/14(金) 08:05:37.32 ID: EryetWIw0
”発育は、男の子よりも女の子の方が早いんですよ”
212 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: sage 投稿日: 2007/09/14(金) 08:07:11.43 ID: EryetWIw0
ξ#゚听)ξ「ちょっと、男子ちゃんと掃除しなさいよ!」
( ^Д^)「プギャー!!うっせブース!」
(;*゚ー゚)「わっ!せっかくゴミ集めたのに!!」
ξ#゚听)ξ「先生呼んでくる!」
( ^Д^)「プギャプギャー!!ごくろうザマー!!」
( ´_ゝ`)「うるせえ」
あたりかまわずゴミを撒き散らす。
特にいつもと代わり映えのない、掃除の時間。
プギャーがあまりにもうるさいので、兄者はプギャーを思いっきり蹴り上げる。
(#^Д^)「……〜〜〜……!!!!!?!」
狙ったわけでもなく、丁度そこが彼にとっての急所だっただけで。
213 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: sage 投稿日: 2007/09/14(金) 08:08:14.69 ID: EryetWIw0
顔を真赤にして、声にならない声を上げて、プギャーはそこにうずくまる。
兄者としては、うるさいやつが静かになった。それだけのことだったのだが。
('、`*川「兄者ちゃん?ちょっといいかな?」
ツンが呼びに行った先生がそれを見ていて、彼女はそうは取らなかった。
どんな人だったのかはよく覚えていない。
子供心に綺麗で優しい人。と感じていたから、多分普通の人だったと思う。
先生は兄者を個室に呼び出す。
どんな部屋だったか、今で言うなら進路室とかそのへんだろうか。
小学校に進路室があったのかは覚えていない。
214 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: sage 投稿日: 2007/09/14(金) 08:09:17.31 ID: EryetWIw0
座らせないで、兄者を立たせたまま。
先生はしゃがみこんで、兄者を下から見上げる。
目の前には先生の顔があって、まっすぐ見つめられていた。
('、`*川「あのね、兄者ちゃん?ああいうことはしちゃだめなの」
( ´_ゝ`)「ああいうこと、とはなんだ?」
('、`*川「男の子はね、あそこはとっ…ても大事なところなの。
蹴ったり、乱暴なことはしちゃだめなのよ」
( ´_ゝ`)「何故だ?」
('、`*川「将来、子供をつくるところなの。乱暴しちゃうと、子供がうめなくなっちゃうのよ」
そこで先生は一呼吸おく。
216 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: sage 投稿日: 2007/09/14(金) 08:10:42.63 ID: EryetWIw0
('、`*川「兄者ちゃんも大きくなったら、結婚して、お嫁さんになって、子供をうむの。
それができなくなっ…」
( ´_ゝ`)「俺は産まない」
('、`*川「うん、そういう人も世の中にはいるわ。でも女の人は…」
(#´_ゝ`)「俺は、男だ。俺は結婚しても、嫁にはならない!俺は子供を産まない!」
その時の先生の表情は、困ったような、悲しいような。
('、`*川「そう、そうなの。それなら余計にああいうことはしちゃだめよ?男の子ならわかるでしょ?」
(#´_ゝ`)「わからない!俺にはない!何で俺にはないんだ!
プギャーにはあって!ブーンにも、ドクオにも、弟者にもあるのに!何で俺に!」
兄者は先生の肩を掴んだ。
強く。強く掴んだ。爪が服に食い込む。
( ;_ゝ )「なあ先生!何で俺にはないんだよ!俺だって…俺だって男なのに…」
('、`*川「うん、うん。そうね…」
彼女は兄者を抱きしめた。
ワケあってそうしたのか、どうしようもなくなって抱きしめたのか。
217 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: sage 投稿日: 2007/09/14(金) 08:12:35.87 ID: EryetWIw0
兄者は泣かない子供だった。
男は泣かないのだ。と言い、決して泣かなかった。
人前でも、一人の時でも、涙を流すことはなかった。
男の子なら、と言えばすぐに大人しくなる。
男の子なら、泣かない。
男の子なら、我慢する。
男の子なら、………
その反動か、兄者は中々先生を放さなかった。
先生は兄者が泣き止むまでずっと抱きしめていた。
('、`*川「…兄者くん?」
泣き声もなくなり、呼吸も落ち着いてきた頃を見計らって、先生が兄者の名前を呼ぶ。
兄者は顔を拭いて先生から距離を置く。
先生は、擦っちゃだめよ。と、柔らかく手を取った。
('、`*川「兄者くんは立派な男の子よ。男の子だったら、ちゃんとあやまれるわよね?」
憮然とした表情で、口を尖らせながら、それでも小さくうなずいた。
219 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: sage 投稿日: 2007/09/14(金) 08:13:41.10 ID: EryetWIw0
(#^Д^)「……なんだよ」
プギャーが顔を火照らせながら、兄者を睨む。
軽蔑の目で彼を見たら、先生が兄者の名を呼んだ。
('、`*川「ほら、兄者くん」
( ´_ゝ`)「…った…」
(#^Д^)「あ?」
(#´_ゝ`)「すまん。悪かった」
('、`*川「そんな怒った言い方しないの」
220 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: sageさるさんにかかった 投稿日: 2007/09/14(金) 08:15:58.89 ID: i5IurELw0
(#^Д^)「許すかよばーか!このかりは100倍にして返してやる!」
('、`*川「こら!!プギャーくん!!!」
(;^Д^)「ブース!!!デーブ!!ババア!!」
('、`#川「なんだと!!!こら!!まちなさい!!!」
小学生の頃だ。
それからは、どんどん周りの男子は成長していった。
小さかった弟者も、今となってはスポーツもして、逞しくなっている。
俺は…俺は…?
221 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: sage 投稿日: 2007/09/14(金) 08:17:38.84 ID: i5IurELw0
ずっと、背の順で並べば一番後ろだったのに。
小学校を卒業してから、身長に変化が全くない。
それなのに、体は勝手に丸みを帯びて行く。
俺は…俺は。