2 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:19:53.02 ID: JQmHRNVO0

 

朝だ。朝。
朝というのは多少の希望と、大いなる絶望を運んでやってくる。

兄者は朝、珍しく目覚ましが鳴る前にとびおきて、パソコンの画面とにらめっこをしていた。

(*´_ゝ`)「うへwwwwwwwうへへへwwwwwwwwww」

(´<_` )「兄者キモイ」

 

3 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:20:43.95 ID: JQmHRNVO0
( ´_ゝ`)「うるせえwwwwww笑うしかねーだろwwwwwwwww」

(´<_` )「一応何があったか聞いてやろうか」

(*´_ゝ`)「今日英語でレポートの発表あるんだけど、一文字もやってないんだよね。
      なあ弟者もやってんだろ、見せてくれよ」

(´<_` )「丸写しはばれるだろ。大体、昨日やるやる言っといて寝たから」

(#´_ゝ`)「ああくそっ…時間が止まれば良いのに…。英語なんかつぶれればいいのに…。
      明日になんかならなきゃいいのに…」

(´<_` )「だからと言ってタイムスリップの方法をググっても意味ないと思うんだが」

( ´_ゝ`)「As a sterilization vice-product, it occurs after chlorine agent...」

(´<_` )「OK、兄者。ページをそのまま翻訳してもばれるぞ」

(;´_ゝ`)「もう、今日休もうかな。天気も悪いし、最近寒いしだるいしー」

(´<_` )「今日はLHRで、兄者の待ちにまった修学旅行の話し合いなんじゃなかったっけ」

( ´_ゝ`)「アッー!そうだった!素直にあやまるか」

 

4 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:22:07.87 ID: JQmHRNVO0
(#゚∀゚)「オレが許すと思っているお前が悪い!!!」

(;´_ゝ`)「すんません!すんません!包丁投げんなよバカ!!!」

(*゚∀゚)「それが教師に対する口のききかたかッーーーー!!」

(; _ゝ )「ズンドコベロンチョ!!」

(*゚∀゚)「オラオラオラアアアアアアアアア」

アニジャ は しんで しまった。

(*゚∀゚)「よし!つぎぃ!!」

(;^ω^)「ま、まってくれお!話せばわかるお!話し合いで解決するお!!」

(*゚∀゚)「だが断る!!」

(; ω )「オニャンコポン!!!」

ブーン は しんで しまった。

(;'A`)「なんという体罰」

 

5 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:23:52.70 ID: JQmHRNVO0
『ボクらの空』   2年3組 3番  欝田 毒男

('A`)「ボクたちは きっと空だって飛べるんだよ

   でもね 飛べないのは 夢を捨ててしまったから

   さあ みんな 一緒に飛ぼう

   どこまでも どこまでも

   ボクらの翼は 心の中にあるんだ

   みんなで手をとりあって 羽をひろげよう」

 

6 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:24:33.70 ID: JQmHRNVO0

( ´_ゝ`)「あんまりすぎる」

(;^ω^)「廊下は寒いおね…」

ブーンとドクオと兄者は、廊下でぼーっと雑談を始める。
本当に3人しかやってきてない人がいないのか。と疑問を持っていたが、どうやらそのようだった。

('A`)「いや、本当にさみい…」

9月といえばまだ夏服。
暖かさから寒さに変わる頃。
今日は天気が悪いため、どうにも寒かった。

( ^Д^)「お?何してんのおまえら」

その廊下をプギャーが通りかかる。
授業に遅れて参加するとかではなくて、通り過ぎようとしていただけだった。
何のために学校に来ているのか。本人にさえわからない。

 

7 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:26:09.46 ID: JQmHRNVO0
(;^ω^)「レポート忘れてきちゃって…」

( ^Д^)「プギャーー!!バッカー!!」

( ´_ゝ`)「プギャーに言われたくないよなー」

('A`)「なー」

(#^Д^)「アアン?なんだと?」

掴みかかった腕をドクオが払った。
プギャーはそれに逆上する。

(*'A`)「殴れるものなら、殴ってみろよ」

(;^ω^)「ど、ドクオーッ!!」

(#^Д^)「いい度胸じゃねーか!」

 

11 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:28:13.38 ID: JQmHRNVO0
プギャー は 改心の一撃 を はなった。
しかし ドクオ には きかない ようだ。

( ^Д^)「な、なにー!」

('A`)「ふっふっふ…。俺はうまれかわったのさ!ニュードクオに!」

( ´_ゝ`)「あんなに脆かったドクオがなんと一日で生まれ変わる!
      それにはどんな秘密があったのか!」

立ちはだかるドクオ。
堂々としたその股間は、まるでもっこりだった。

( ^Д^)「ん?なんだこれwwwwwww勃起してんじゃねーよwwwwww」

(#'A`)「ちげーよ!!これが標準なんだよ!!」

( ^ω^)「な、なにー。小さかったどくおの標準がこれだとー」

(#'A`)「信じてねーだろ!みてみろ、MYSUNを!!」

ドクオはズボンを下げて、たまたまを取り出した。
そこには黄金に輝くドクオの姿が。

 

13 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:30:27.36 ID: JQmHRNVO0
(;´_ゝ`)「うおっまぶし!これが伝説の金玉!!」

(;^ω^)「かつっおぶし!食べれば何でも願いがかなうという伝説の金玉!!」

(;^Д^)「光っててみえねえよwwwwwwwwwwwww」

('A`)「食べちゃってもいいんだぜえええええええええええ!!!」

そこには太陽もびっくりするほどの光があった。
3人は眩しさに目を瞑る。

('A`)つ■「ほれグラサン」

( ■Д■)「こ、これはー!!」

( ■_ゝ■)「なんということだ」

( ■ω■)「そこには巨大なドクオの本体がありましたお」

( ■_ゝ■)「それはとても眩い光を放っていました」

( ■ω■)「これで標準はないおー。勃起したらどんなんなるんだおー」

('A`)「ふっ…俺のビキニに酔いしれな!」

 

15 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:32:12.06 ID: JQmHRNVO0
ドクオは光源をしまう。
ガラパンに収めても、外から見える立体感がきもかった。

( ^Д^)「ぼーっき!ぼーっき!ぼーっき!!」

(*^ω^)「いけーいけー!どっくっおー!
      がんばれ!がんばれ!どっくっおー!」

( ´_ゝ`)「ドクオの本当の姿がみたいなー!」

('A`)「ちっ…ファンの( ゚д゚ )に応援されちゃ、かなわねーな…」

ドクオはもう一度彼の玄武を取り出して、今度は上下に振った。

('A`)「たとえ世界が滅びようとも!!俺の息子は滅びねえ!!!1!」

みるみるうちに大きくなるドクオ。
その全長1m。輝きは増していた。

 

16 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:32:29.05 ID: JQmHRNVO0
( ^Д^)「わードクオくんかっこいー!」

(*'A`)「やっぱり?だよねーだよねー」

( ^Д^)「かっこいいドクオくんの雄姿をみんなにみせようー」

(;´_ゝ`)「あ、おいプギャー!」

ドクオは輝きながら、教室の中に入っていった。プギャーに押されながら。
2-3の教室に、光が満ちる。
西からのぼったお日様が、今、生徒たちの心を照らすのであった。

ξ )ξ「へんたあああああああああああああああああああい!!!!!」

(;*゚∀゚)「て、てめえ!!!その光輝く珠をしまいやがれえええええ!!」

(#'A`)「 ひ と つ な ぎ の だ い ひ ほ う ! ! 」

从*゚∀从「素敵すぎるうううううううううううううう!!!」

川 ゚ -゚)「とうとう正体を現したな!!貴様は私が成敗してくれる!!!」

(*゚ー゚)「あなたと合体したい」

 

18 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:33:52.70 ID: JQmHRNVO0
騒々しさは、チャイムと共に消え去った。
次の時間はLHR。
ドクオは頭上に3つのたんこぶを携えて授業を迎え入れる。
後ろの席の人が前を見辛そうにしていた。

( ´_ゝ`)「まあ当然の結果っていうか」

(;A;)「俺のせいじゃないのに……」

( ^Д^)「ま、落ち込むなって!」

(#'A`)「おまえのせいだ!バカバカバカ!!」

从*゚∀从「ドクオのぽかすかに萌え〜〜!!」

(;^Д^)「趣味わりいな、この転校生」

( ´∀`)「はいはい、私語は止めるモナ」

 

20 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:34:57.88 ID: JQmHRNVO0
モナーが入ってきて、モララーが号令をかける。
起立、礼、着席。
全員が席についたのを見終わってから、モナーは休みはいないかクラスを見渡した。

( ´∀`)「今日は休みいないモナね。良いことモナ」

名簿にチェックをつける。一呼吸おいて、いつもどおりに話しはじめた。

( ´∀`)「それじゃあ、まずは修学旅行の部屋分けをするモナ。3〜5人になるように」

モナーが言い終わるか否かのうちに、生徒たちはそれぞれ仲の良いグループを作ろうと席を立つ。
これにあぶれると、大変なことになるからだ。

もう一つ、研修のためのグループがあるが、それとはまた別。
こちらのグループは、クラス関係なしに集まる。

 

21 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:36:01.69 ID: JQmHRNVO0
( ^ω^)「4人は決まったも同然だおねー」

('A`)「まー、これでいいだろ。3〜5人だし」

(*´_ゝ`)「うむ。楽しみだなー修学旅行」
  _
( ゚∀゚)「うん、そうだなー」

( ´_ゝ`)「ん?何だ?」
 _
(;゚∀゚)「いや、なんでもねえ」

兄者はずっと見てくるジョルジュを疑問に思う。
女だというのに、男グループに入っていていいのか。
ジョルジュがそう案じたとき、担任のモナーがやってきた。

( ´∀`)「兄者クン、話があるからちょっと良いモナ?」

( ´_ゝ`)「だが断る」

(;´∀`)「そういわれても困るモナ…」

 

22 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:37:31.22 ID: JQmHRNVO0
何を言われるか感じとって、兄者は断固として動かない姿勢をとった。
さり気なく自分とモナーの間にブーンを挟み、距離をとる。

ふいにジョルジュが兄者の腕を掴んだ。
どうしようかと迷っていたモナーが驚く。
  _
( ゚∀゚)「とりあえず話してこいよ」

(#´_ゝ`)「ブルータス、おまえもかー!!」

( ´∀`)「えーっと…それじゃお言葉に甘えさせていただくモナ」

ジョルジュから腕を引き継いだモナーが、そのまま廊下に連れて行く。
ひきずられる形になった兄者が、ジョルジュを指差し「おぼえてろー!」と叫んだ。

けれど、扉を閉めれば、借りてきた猫のように、静かになる。

 

23 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:38:48.74 ID: JQmHRNVO0
( ´∀`)「わかってるモナよね。班は一緒に出来ても、部屋は駄目だモナ」

( ´_ゝ`)「何故だ」

( ´∀`)「モナがあれこれ言うより、キミ自信がよくわかってると思うモナ」

( ´_ゝ`)「今まで問題なかった!」

言ってから思った。
本当にそうなのか?自分に問い直す。
問題がないと自分に暗示をかけていただけなんじゃないのか?

俯いてしまった兄者の肩に、モナーはそっと手を置く。

 

26 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:39:06.59 ID: JQmHRNVO0
( ´_ゝ`)「…なら、どうしろと言うんだ」

( ´∀`)「先生と一緒の部屋にきてもらうモナ。
      ああ、心配しなくて良いモナ。勿論モナじゃなくて、つー先生の部屋だモナ」

(#´_ゝ`)「俺は、お、男だぞ!そんなみっともない真似!」

( ´∀`)「他の人たちには「病気持ちで、何かあった時にすぐに病院にいけるように」
       って言うから大丈夫だモナ」

( ´_ゝ`)「俺は病気じゃない」

( ´∀`)「そうモナね。でもそういうことにしておいてほしいモナ」

のれんに腕を押すように、モナーは兄者の言葉をのらりくらりとかわしていく。
焦っている時に119に電話したみたいに、本当に聞いているのか問いたくなるほど。

 

27 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:39:53.98 ID: JQmHRNVO0
渋々兄者は頷いて、モナーの言葉に同意する。
社会とはなんとも渡り難いものだ。
自分を殺さずべくして生きる術はないのか。

教室に入ると、先ほどと同じ空気が兄者を待っていた。
元いた3人の場所へと戻る。

( ´_ゝ`)「すまんが、一緒の部屋にはなれなくなった」

( ^ω^)「えー?なんでだお?どうしたんだお?」

( ´_ゝ`)「それは…」

言葉につまった。
モナーは「病気」と言っていたが、兄者は一体どんな病気に侵されているのか。
自分のことなのに言えずしてどうする。
  _
( ゚∀゚)「部屋は別でも、班は一緒になれんだろ?NPNP!」

('A`)「3人ならギリギリだしな」

咄嗟にジョルジュが話題を変える。
部屋が違う。残念だと思ったが、少しほっとした感も、彼にはあった。

 

28 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:40:49.76 ID: JQmHRNVO0
( ´_ゝ`)「おや?プギャーは誰ともくまんのか?」

余計なことを発見する。
彼の仲間は別クラス。知ってる人など殆ど居ない。

( ^Д^)「うっせーな!」

一人席に座る不良。むしろ寝ていた後ろ姿。
振り返った額は腕のアトがついていた。

( *´_ゝ`)「そうかそうかwwww可哀想に、誰も一緒になってくれんのかwww」

(;'A`)「お、おい、兄者!」

言ってはいけないこともある。
たとえそれが、イヤミなやつでも。

 

29 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:41:10.91 ID: JQmHRNVO0
『誰も居ないなら一緒にどうか』

好きではないが、嫌いでもない。
一応彼とも腐れ縁。無駄に長い敵関係。
誘おうとしたが、自分は”先生と一緒”なことを思い出した。

 

31 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:42:07.41 ID: JQmHRNVO0
( ^Д^)「わりーかよ、このクラスにはいねーだけだし」

( ´_ゝ`)「お得意の『ギコさ〜ん!』か。
      いい加減おまえも一人立ちしたらどうだ。今も昔もかわらない」

( ^Д^)「お前は随分かわったからな!何かあったら『弟者〜!』だろ!」

( ´_ゝ`)「逆だよ逆。未だに兄離れができない弟で困ったもんだ」

( ^Д^)「まー仲の良い姉弟ですこと!毎晩ヤッてんじゃねーの!!」

( ´_ゝ`)「…どういう意味だ。返答次第じゃただじゃおかんぞ」

プギャーの声が大きくなる。
その分周りに聞こえてしまう。

 

33 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:43:28.38 ID: JQmHRNVO0
( ^Д^)「ただじゃおかないって何してくれんのー!やらせてくれんのかな??
      弟者はおめぇが女だってこと知ってんだろ!兄弟だもんなー!
      今でも一緒の布団で寝てるって本当か!?」

(#´_ゝ`)「ふざけんな!俺は男だ!!」

同じ台詞を一体何度言っただろうか。
自分で自分を男と主張するなんて、バカバカしいのは間違いない。

( ^Д^)「プギャー!!よくそこまで言いはれるよな!
      ならここで脱いでみろよ!証拠でも出してみなー!」

単純な答えなのに、兄者は解を与えることができない。
このことがより一層、周囲に疑惑を生ませる。

 

34 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:44:31.16 ID: JQmHRNVO0
(;^ω^)「そういえば、一度も見たことないお…」

幼い頃からよく遊んでいたのに、彼が服を脱ぐことはなかった。
プールにも入らず、温泉にも寄り付かず。一番可能性の高いトイレすら。
暑くて男子生徒の殆どが上着を脱いでいても、彼だけはきっちりボタンを閉めていた。

( ^Д^)「ほらほらほらーwwwwwwww」

(;´_ゝ`)「うおっ!」

プギャーが兄者のシャツを捲りあげる。
兄者は必死に食い止める。

(#´∀`)「プギャー!!」

それを、教室に戻ってきたモナーが、急いで制したことが決定打だった。

 

36 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:46:27.93 ID: JQmHRNVO0
気まずそうに、兄者は制服を整える。
横目で周りを見渡すと、さっと、自分を見ていた生徒が目を逸らした。
視線が通り過ぎると、また改めて兄者を見る。

(;´_ゝ`)「………」

ξ゚听)ξ「何?本当に?冗談よね、兄者が女だなんて」

(;´_ゝ`)「違う!…俺は違う!!」

何かを言いたげに、兄者を見る。
けれど悲痛に叫んでも、兄者はツンと目を合わせようとはしない。

川 ゚ -゚)「兄者」

クーが呼んだので、はっとして兄者は彼女を見た。

 

39 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:47:58.92 ID: JQmHRNVO0
(;´_ゝ`)「その…すまん……」

まず言葉に出てきたのは謝罪の言葉。
これでは肯定しているようなものじゃないか。なのに何故か謝ってしまった。

川 ゚ -゚)「いや、良いんだ。知っていた」

(;´_ゝ`)「え?」

川 ゚ -゚)「知っていたんだ。私こそ騙した形になってしまったな。申し訳ない」

(;^ω^)「やややや、やぱっり兄者はおおおおんなのこだったんだお?」

川 ゚ -゚)「うむ。間違いない」

(;^ω^)「ま、まじかお…」

豆鉄砲を食らった鳩のように、ブーンは同じく兄者を見る。
ここに居たくない。けれど、足が動かない。兄者は妙に胸が痛かった。

 

41 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:50:18.02 ID: JQmHRNVO0
(;^ω^)「兄者、ごめんだお…!…その……女の子殴っちゃったお」

一言。それはたった一言。
謝罪の言葉のはず。けれど謝ることは全て良いわけではない。

(; _ゝ )「っ!」

女の子。君は男で、自分は女で。
散々弟者に言われてきたことなのに
今まで自分を男と認めてくれた友人までに言われてしまった。

苦しい。呼吸ができない。頭がぼーっとする。あれ?天井ってどっちだったっけ?

浮遊感が兄者を襲う。そして一瞬胸が詰まる。
体が何かに叩きつけられたけれど、それは浮遊感にかき消された。

 

42 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:51:32.30 ID: JQmHRNVO0

 

 

次に見た物は、暗い部屋と、見慣れた天井。
階下でテレビの音がする。

( ´_ゝ`)「(…家?)」

もぞもぞとベッドから出る。
いつの間に眠ったんだろう。記憶をさかのぼって、思い出して、すぐ後悔。

みたくないものを、一気に見せられた。

(;´_ゝ`)「――――!」

折角抜け出たベッドにまた逆戻り。
自分の現状。3行?いや、3文字で事足りる。

『 ば れ た 』

それだけだ。

 

43 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:53:00.16 ID: JQmHRNVO0
布団の中は何故か安心できる。ずっとここにもぐっていたい。
回帰願望とでも言ったところか。もう一度戻って、今度は男に生まれたい。

わかっている。わかっているから、みなまで言うな。
いくら自分が男と言い張ったって、どうにもならないこともある。
それを見せ付けてくれるな。
見たくないんだ。

(´<_` )「兄者―――」

部屋に光の筋が入る。
布団の上まで走らないように気を使い。
兄者がまだ寝てると思い、弟者は静かに扉を閉める。

この名前こそ元凶か。
生まれた瞬間、兄という。
姉なのに兄。流石だよな、とも言えやしない。

 

45 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:53:49.54 ID: JQmHRNVO0
兄と呼ばれれば、しっかりせねばと思うだろう。
誰も兄者を女扱いしないのだ。
自然とそうなってしまうだろう。

∠|l!´_ゝ`)「………」

布団の中で考えた。
まるくなって考えた。

夜に考えごとはしないべきだ。
弟者に昔そう言った。
なのに一人だと考える。

 

 

48 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:54:56.58 ID: JQmHRNVO0
ぐるぐる、ぐるぐる、迷路の洞窟。
入り口はあっても、出口はない。
入り込んで、出口を探す。
そんなもの存在しないのに、あると信じて。

ああ、見つかった。助かった。
そう思って出たら、スタート地点。

∠; _ゝ )「………」

辛い。苦しい。助けてほしい。
不安は形を取らないで、願いは闇夜に食われてく。

眠れやしない。脳が冴える。

それでも同じく夜は更ける。

 

 

 

49 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:55:28.41 ID: JQmHRNVO0

 

 

 

 

 

 

 

 

51 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:57:02.12 ID: JQmHRNVO0
(´<_` )「兄者、起きろ。遅刻するぞ」

弟者は布団の上から兄者を揺さぶる。
朝からずっと、この調子。
返事のかわりに、布団をぎゅっと握り締める。

はぁ。とため息をついて弟者は朝食を食べにリビングへ向かった。
母者に何と報告しようか。
考えていたのに、母は既に知っていた。

無言の中で朝食は進む。
誰も何も言わないで、朝のニュースが流れていく。

 

 

52 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:58:15.84 ID: JQmHRNVO0
l从・∀・ノ!リ人「おっきい兄者は?」

(´<_` )「まだ寝てる」

l从・∀・ノ!リ人「そうか」

暫く休ませてやっても良いだろう。
あれだけ煩い母者なのに、こういう時は優しかった。

(´<_` )「――というわけだ」

説明したのに返事は「うるさい」。
何が気に食わないのか、せっかく母者が休みをくれたというのに。
顔すら布団から出さないで、兄者はずっとあのままだ。

数日で収まると思ったヒキコモリ。
兄者は用がない限り、部屋からも出ようとしない。

 

53 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 22:59:35.32 ID: JQmHRNVO0
嫌な予感がして、弟者は部活をさぼって家へ帰った。
むしろあれから部活になんか行ってない。学校からも即効帰宅。

良いことなんか当たらないのに、こういう時だけよく当たる。

(; _ゝ )「ううーっ…うッ………」

(´<_`;)「兄者!何してんだ!!!」

部屋に入ればどこの地獄か問いたくなる。
ベットに倒れ、真赤に血塗れた半裸の兄者。カッターを持つ手が震えている。
ところどころが茶色に凝血。時間もそこそこ経ってるらしい。

(´<_`;)「おい、兄者!!しっかりしろ!」

胸を切り取ろうとして、あまりの痛さに途中で挫折。
けれど諦めきれなくて、少しずつ実行していった。

 

 

55 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 23:00:40.68 ID: JQmHRNVO0
弟者は兄者の胸を触る。大丈夫、そんなに深くない。
少し傷がついたくらい。
元々痛いのは嫌いな人だ。これでも十分頑張った。

(´<_`# )「努力は認めないけどな!」

風呂場に押し込み、水で洗う。
冷たがろうが、嫌がろうが、そんなもの自業自得だ。

傷を消毒したら、凄まじい声で泣き出した。

(; _ゝ )「殺せ!!!!ころせええええええええええええ!!!」

(´<_`#)「うっせー死ね!!!」

暴れる兄者を抑えつける。
折角包帯を巻いたのに、傷が開いて滲み出た。

 

 

57 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 23:03:04.33 ID: JQmHRNVO0

 

10月も半ば、間もなく2年の修学旅行。
何よりも楽しみにしてたのに、兄者は今日もヒキコモリ。

ヒキコモリは続いたけれど、前より、まだマシにはなった。
家の中なら同じく過ごす。
少し、ネットに依存しただけ。
かわりに、外には全くでなくなった。外界からのヒキコモリ。
何かを恐れるくらい、外を見ない。

それでも兄者は明るくなった。
以前のように、笑顔も見せる。
一時期のように廃人な行動はもう見せない。

(´<_` )「兄者は今日も2chですか」

 

 

58 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 23:03:46.72 ID: JQmHRNVO0
(*´_ゝ`)「そうだ。羨ましかろう」

(´<_` )「その位の元気があるなら、メールの1つや2つ、返したって良いと思うが」

兄者の携帯。あの日から全く起動していない。
一度メールの着メロが鳴って、中身を確認する前に電源を切った。
それからずっと、切られたままだ。
心配したクラスメイトが、弟者に何度も問いかけた。

( ´_ゝ`)「ふん。俺は2次元に生きるのだ。リアルになんかにかまっている暇はない」

嘘だ。
時折、携帯を見つめているのを弟者は知っている。
夜中に布団に守られながら、震える背を押し付けながら、
携帯のボタンを押そうと迷っていることを知っている。

 

60 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 23:04:40.82 ID: JQmHRNVO0
(´<_` )「…楽しいか?」

( ´_ゝ`)「? ああ、楽しいぞ」

ネット上なら、性別などわからない。
ネカマならぬ、ネナベも簡単にまかり通る。

前々からその気配はあった。
けれどここまで中毒にはならなかった。
クラスに性別が知れ渡って、やりにくくなったから逃げたのだ。

(´<_` )「そっか…」

( ´_ゝ`)「どうした、弟者」

(´<_` )「いや、兄者が楽しいなら別に良いんだ」

( ´_ゝ`)「ふーん?」

そして兄者はアドレスを押す。

 

61 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 23:05:21.63 ID: JQmHRNVO0
( ´_ゝ`)「OK、ブラクラゲット」

(´<_`;)「OKじゃないだろ」

修学旅行の準備のために、弟者が鞄に荷物を詰める。
最低限の荷物だけ。と、完成したものは随分小さかった。

( ´_ゝ`)「………」

それを兄者がじっと見つめる。
何なのかと弟者は振り向くと、兄者はすぐに液晶に目を向けた。

(´<_`;)「(ばればれだっつーの)」

何も言わなくとも、修学旅行に未練があるのがすぐわかる。
弟者のいない間に、こっそり”しおり”を見ているのも。
その”しおり”に書かれている場所を、検索していることも。

(´<_` )「なあ、兄者―――」

 

62 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 23:05:44.54 ID: JQmHRNVO0
( ´_ゝ`)「なんだ?」

(´<_` )「その、さ。兄者さえよければ」

一緒に行かないか?
単純な言葉なのに、どうしてか弟者は言えずに居た。
兄者は断る。確信を持ってそういえるのに。

(´<_` )「いや、なんでもない…」

( ´_ゝ`)「変なやつだな」

兄者は別に”旅行”に執着しているわけではない。
みんなでお泊り。しかも男同士で。それが夢みたいなものなのだ。
弟者には、兄者の考えはよくわからないが。

 

64 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 23:06:49.80 ID: JQmHRNVO0
(´<_` )「それじゃあ行ってくる」

( ´_ゝ`)「いてら」

珍しく兄者が玄関にいた。弟者を見送りにきたのだ。
これから4日間は居ない。
そんなに長く離れるのは今までないかもしれない。

( ´_ゝ`)「弟者」

(´<_` )「ん」

( ´_ゝ`)「…いや、気をつけて」

 

 

66 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 23:07:52.93 ID: JQmHRNVO0
弟者がドアを開ける前に、兄者は階段をのぼって避難した。
そんなに外を見たくないのか。
あけようとしないカーテンを弟者は思い出す。

哀しそうに扉は閉まる。

すぐに帰ってくる。兄者はそう自分に言い聞かせて、4日間を待っていた。

(  _ゝ )「なのに…弟者……」

兄者は弟者の写真を抱く。
ぽたりと水滴が零れ落ちた。

 

 

67 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 23:08:08.62 ID: JQmHRNVO0
( ;_ゝ;)「帰ってきたら、プロポーズをするって言ってたじゃないか…!
       それなのに…死んでしまうなんて…!」

肩を震わせて、自分を抱くように座っていた。
もう誰も信じない。そう暗に言うように。

(´<_` )「勝手に殺すなバカ」

( ´_ゝ;)「む。意外と早かったな。丁度フラグ立てごっこにも飽きたところだ」

(´<_` )「何だこの手は」

( ´_ゝ`)「お土産くれ。出来れば食い物」

(´<_` )「人を勝手に殺すようなヤツに土産なんぞない」

兄者の手から目薬を叩き落とすと
机の上に飾ってあった色々な”弟者メモリーズ”を元の場所に仕舞う。

 

69 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 23:10:16.59 ID: JQmHRNVO0
( ´_ゝ`)「あー、折角綺麗に並べたのに」

(´<_` )「知るか、死ね」

( ;_ゝ;)「弟にそんなこと言われて、おにいちゃんかなしい」

(´<_` )「”おねえちゃん”だろ。勘違いしてんじゃねえ」

( ´_ゝ`)「思ったんだけど、弟者つっこみが過激になってきたよな…」

(´<_` )「え?なに?もっと過激につっこんでほしい?」

(;´_ゝ`)「誰も、んなこと言ってないから!」

自分を隠すことなどなく生活できる。
この現状に兄者は十分満足している。

 

70 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/19(金) 23:10:49.29 ID: JQmHRNVO0
弟者は相変わらず兄者のことを男扱いはしないけれど
彼にそう扱われるのは苦ではなくなってきている。
それでも外にでるのは怖いらしい。

( ´_ゝ`)「〜♪」

これが兄者の幸せか。これ以上望むのは酷じゃないか。
家族の誰もが思ってきている。

ちらちらと舞い落ちる粉が、冬の訪れを人に告げる。
けれど兄者はそれにも気付かず

窓の外から覗く光すら、浴びなくなって、もう久しい。

 

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