2 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:15:09.94 ID: jS3CTt2G0

( ^ω^)「ふほー、こりゃすごいお」

ξ*゚听)ξ「tktktktktktktktktktktktktktktktktk」

(;^ω^)「ちょwww落ち着けwwwwwwwwww」

('∀`)「…」

( ^ω^)「きめえ」

('A`)「…」

(,,゚Д゚)「まんじゅう食いながら水うめえな…」

 

4 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:15:55.26 ID: jS3CTt2G0

四者四様のリアクション、
その視線の先にあるのは最新式の、蒸気機関を用いた『箱』。

発条と違って巻く必要もなければ、その馬力も桁違い。
かなりの燃料を食うことを除いては、あらゆる点で従来の『箱』を上回っている。

―それが、支給されることになった。

 

5 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:16:40.80 ID: jS3CTt2G0

機関部を担当するツンやドクオの興奮ぶりは尋常じゃない。
ドクオなんか傍から見て勃起してるのが見え見えだ、正直キモイ。死ねばいいのに。
ツンも顔を紅潮させ、今にも飛びつかんばかりに『箱』を眺めている。

( ´∀`)「この度は皆様のご協力に感謝致します。
      そのお礼といってはなんですが、工期中はこちらの『箱』をお使い下さい。
      可積重量もかなりのものなので、現場の物資を積んでも十分通常業務は可能ですよ」

ξ*゚听)ξ「説明はいいからとにかくよこしなさい!早く!」

(;´∀`)「スイマセン…実はまだ台数足りなくて正式支給までちょっとかかりそうなんですよ」

ξ#゚听)ξ「あ?」

 

 

8 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:17:33.30 ID: jS3CTt2G0

('A`)「この詐欺師!ぬか喜びさせやがって!ドS!」

(;´∀`)「いや違うんですよ、今日は運行やら整備方法についてレクチャーをですね。
      覚えておけば当日すぐに走らせられますよ」

('A`)「ならばよし」

ξ゚听)ξ「それでよし」

( ^ω^)「何でお前ら偉そうなんだお」

(,,゚Д゚)(そういや発条いらんなら俺の仕事無くなるんじゃね?)

 

 

9 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:18:16.11 ID: jS3CTt2G0

説明会を受けているツンとドクオを残してギコとブーンは『箱』に戻る。
代理要員と交代し、これでもかとばかりに発条を巻きだす。

(,,゚Д゚)「あれだな、こう、発条巻く必要がなくなると俺の存在意義がだな」

( ^ω^)「僕も安全確認くらいしかなくなるお」

(,,゚Д゚)「ストする?」

( ^ω^)「多分誰も引き止めてくれないお」

(,,゚Д゚)「実は今俺すごく泣きそう」

実は今後、物資の積み下ろしという、さらにハードな仕事が待っているのを彼らは知らない。
まあ、それは別に『箱乗』でなくてもいいのだが。

 

 

11 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:19:24.47 ID: jS3CTt2G0

(,,゚Д゚)「そもそもマッチョは二次元で冷遇されすぎてる!そう思わんか!」

( ^ω^)「まったくですお!」

(,,゚Д゚)「ハンマーをもったマッチョ男は噛ませ犬か!?」

( ^ω^)「マッチョ野盗が女キャラ取り囲むのは死亡フラグか!?」

( ^ω^)(,,゚Д゚)「マッチョに人権を!」

 

13 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:20:21.67 ID: jS3CTt2G0
(,,゚Д゚)「もっとマッチョを主役にした筋肉踊る熱いバトルモノを!」

( ^ω^)「小細工なしにぶつかりあう拳及び鈍器!」

(,,゚Д゚)「3桁に及ぶ握力!」

( ^ω^)「無駄に割れた腹筋!」

( ^ω^)(,,゚Д゚)「マッチョに人権を!」

 

客 (うるせえ…)

 

16 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:21:56.23 ID: jS3CTt2G0

素早い動きで小さな影が山道を駆けて行った。
その脇の切り立った崖などまるで気にしない様子で。

(´・ω・`)「やあ父さん、弁当だよ」

(`・ω・´)「すまんな」

(´・ω・`)「こっちこそ」

含み笑いをしながらショボンが答える。
弁当など持ってこようと思えばシャキンが朝から持っていけた。
わざわざ家に残してきたのは、それがショボンが現場に入ることのできる理由となるからだ。

各地から集められた優秀な『架師』の仕事ぶりに最新鋭の作業用具。
修行中の身としては何としても見ておきたい。

 

17 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:23:47.20 ID: jS3CTt2G0

着工場所に選ばれたのは大峡谷に面した山に拓かれている道。
横幅も十分あり、物資の運搬にも支障はない。
傍から見ればここ以上に適した場所はなかったはずだ。

が、例外が一箇所だけあった。

(´・ω・`)「あの場所、は使わなくてよかったの?」

(`・ω・´)「候補にはもちろん入れていた。
      けどあそこは不気味なほど岩が硬かったからな。
      物資運搬やスペースの点では優秀だが、作業を急ぐならあまり向いてない」

(´・ω・`)「硬い岩?あそこの地面は確か柔らかい土だったような…」

 

19 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:25:45.77 ID: jS3CTt2G0

(`・ω・´)「ああ、しばらく前に調査した時に見つかったんだ。
      1m程度掘ったら岩石層だったよ。としかもとびきり硬いな」

(´・ω・`)「ご愁傷様、でも僕達にとっては幸運かな」

(`・ω・´)「こいつめ」

シャキンが軽く小突くとショボンは笑い返して仕事場を見て回り始めた。
彼としても、息子とその友人の宝物である場所を壊したくはなかった。
だから幸運とも言えるのだろう。

だが、あの岩石層は一体何なのだろうか。

表面に凹凸の一つさえない、不気味なほど滑らかな岩石層は。

 

 

21 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:27:17.74 ID: jS3CTt2G0

(´・ω・`)「うわーすっご、何あの人。虫っぽい」

その辺を見てまわっていたショボンが思わず唸る。

もちろん見た目の話ではない、動きの方だ。
垂直の岩壁を縦横無尽にワサワサと動き回って命綱の杭を打ち込んでいる。
移動の早さも、打ち込む手際も、どこから見ても一流の架師だろう。

(´・ω・`)「あ」

目が合った。

( ゚д゚ )

こっち来た。

(;´・ω・`)「いやいやいやおかしいでしょー、こっち見んな。ていうか来んなよ」

仕事しろよ。

 

22 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:29:23.85 ID: jS3CTt2G0

( ゚д゚ )「とうっ」

軽やかに岩壁から身を翻し現れた男。
正直目がギョロギョロしてて結構怖い。

(;´・ω・`)「すいませんすいませんすいません、
      ちょっと親に弁当届けたついでに見てただけなんですよ。
      今すぐ帰りますんでどうかひとつここは穏便にお願いs」

( ゚д゚ )「え、あ、シャキンさんじゃないの」

 

23 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:30:52.80 ID: jS3CTt2G0

(;´・ω・`)「は?えーっと…、僕の父がシャキンです。ちなみに僕はショボンっていいます」

( ゚д゚ )「そうかショボン君。じゃあよければ父さんに伝言を伝えてくれるかい?」

(;´・ω・`)「はい!それはもう喜んで!」

 

 

( ゚д゚ )「『今日の夜嫁とチョメチョメする予定なんで帰っていいっすか?』って」

 

 

25 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:31:40.71 ID: jS3CTt2G0

(;´・ω・`)「はい!行って来ます!」

( ゚д゚ )b

命綱を外した男は既に帰り支度を始めている。
急ぎの用なんだろう、一刻も早く伝えねば―

あれ?今こいつ何て言ったっけ?
結構卑猥なこと言った気がする。

と、思った矢先猫のような目をした男が同じく岩壁から現れる。

( ФωФ)「おいミルナ」

( ゚д゚ )て

 

26 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:33:02.41 ID: jS3CTt2G0

( ФωФ)「また適当なこと言ってサボる気じゃなかろうな。
       今までの現場では上手くいったかもしれんが我輩がいる限り通用せん。
       さあ諦めて現場に戻れ」

( ゚д゚ )「そんなロマネスク、今日は嫁の発売b」

( ФωФ)「どういう嫁か知らんがさっさと戻れ。
       あとそこのボウズ、親方に伝える必要はない」

(;´・ω・`)「了解しました!」

( ФωФ)「それと、部外者はあまり長居しないように」

(;´・ω・`)「把握しました!」

( ゚д゚ )「嫁…」

(;´・ω・`)「買ってきます!」

( ФωФ)「買わんでいい、帰れ」

 

 

29 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:35:56.23 ID: jS3CTt2G0

爪'ー`)y‐「フーン、で、大峡谷は3地区共用にすべきだって?」

( ><)「はい。
      ですがもちろん開発の先頭を担っているP地区には優位性を認めるんです。
      土地の割譲面積は他地区よりも多く、大峡谷下からの租税も一部P地区に回すんです」

(´・_ゝ・`)「V地区とI地区の、峡谷下からの租税収入の3%ではどうでしょうか?
      割譲については土地状況がはっきりしないためまだ何とも言えませんが…」

 

 

30 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:36:53.44 ID: jS3CTt2G0

三地区の長による臨時会談。
V地区の長、ビロード。
I地区の長、デミタス。
P地区の長、フォックス。

形こそ三者会談だが、
実際はフォックスに対し他二名が峡谷下の土地の所有権について妥協を求めている、一対二の形。

爪'ー`)y‐「でもさ、こっちの住民が先に入っちゃって家建てちゃったらどうすんの?
      そこを割譲したからって言ってそっちにやって取り壊すわけにもいかんでしょ」

(; ><)「…正式な測量が終わるまでは民間人の移住は禁止させていただくしかないんです」

爪'ー`)y‐「んなもん待ってられねえんだよ

公式の場とは思えないほど不遜な態度。
明らかに、こちらを見下している。

 

31 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:38:05.29 ID: jS3CTt2G0

爪'ー`)y‐「そっちの地区と違ってさあ、ウチは狭いし農地も少ないのよ。
      湖もたいしてない、飢饉で死ぬ住人だって増えてる。
      そんな状態で『待て』の命令が通じると思う?無理でしょ?」

まくし立てるように言う。
確かにP地区は豊かな土地に恵まれているとは言いがたかった。
だが、そこまでとは。ビロードは思う。

いや、そういった窮地に立たされたからこそ大峡谷に救いを求めたのかもしれない。

 

32 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:38:55.95 ID: jS3CTt2G0

爪'ー`)y‐「見つけたのはこっちが先、到着も先だろう。
      それにウチが連絡しなけりゃお前らはこれからもずっと平凡に暮らしてたんだろ?
      別に開発するなって言うつもりはねえさ、教えてやったのもそのため。口出しはしねえ。
      だけどこっちにも口出しはしてくれるなよ?」

(; ><)「…」

フォックスからの知らせが無ければ、V地区もI地区もまだ着工すら始めていなかったはずだ。
相手の言うように、文句を言えるような立場ではない。

爪'ー`)y‐「ま、早いもん勝ちってことでいいんじゃねえの?
      それが一番公平だろ」

絶対に譲らないという覚悟がフォックスからは見える。
だが、ここで簡単に諦めるわけにはいかない。

自分だって、V地区の命運を担っているのだから。

 

34 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:40:06.47 ID: jS3CTt2G0

( ><)「まだ、話は終わってないんです」

考えろ、考えろ、考えろ。
平等な分割などは望めそうにない、ならば、妥協点を。

貴様が妥協するまで、音をあげるまで、押し切ってやる。

ビロードは手元の水を一気に飲み干した。

 

 

35 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:41:37.35 ID: jS3CTt2G0

 

(´・ω・`)「おお、ここからでもいけるなあ」

いつもの場所の、不思議な岩の上。
岩に寝転がりながら遠眼鏡で現場の方向を見る。
さすがに手先に動きまでは分からないが、場所取りの動きなどはしっかりと把握できる。
現場に長居できないならこういうのもアリだろう。

ちなみに隣のアパートとか覗いててばれた時とかは『星を見てました』って言うの最強。
求む実践者。

(´・ω・`)「ブラが丸見えだぜ奥さん!!」

 

36 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:43:05.49 ID: jS3CTt2G0

(´・ω・`)「?」

首筋に何かが当たった感触。続けて手や足に。

(;´・ω・`)「うわ、雨だ。やばいやばい」

晴れた空から降り注ぐ天気雨。

ショボンは干しっぱなしの洗濯物をしまうべく、慌ててその場を離れた。
同じ頃、架師達も作業を中断して岩壁を離れはじめた。

 

37 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:43:54.17 ID: jS3CTt2G0
( ^ω^)「お、狐の嫁入りだお!」

(,,゚Д゚)「ってことは今夜は狐の初夜か…」

( ^ω^)「狐でさえやってるのに俺らときたら…」

(,,゚Д゚)「俺を含めんな」

( ^ω^)「黙れセックスレス」

 

38 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:45:12.19 ID: jS3CTt2G0

(`・ω・´)「作業を切り上げろ!雨で滑ると危険だ!」

焦る気持ちと裏腹に、作業は中止となる。

(`・ω・´)「おそらくは通り雨だ、すぐ上がる」

言うも、既に空には黒い雲が浮き始めていた。
雨足は更に強くなり、次第に数メートル先を視認するのも難しくなってくる。

 

 

40 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:46:10.11 ID: jS3CTt2G0

( ^ω^)「干してるパンツがびしょぬれになっちまうおー」

(,,゚Д゚)「男ならびしょぬれにする気概を見せやがれ!」

シャキンの希望を無視して雨は猛烈な勢いと化していく。
止む気配は、無い。

 

―まるで何かを予感させるようなその雨は、一週間以上降り続いた。

 

42 名前: ◆FEvaeH3GGA Mail: 投稿日: 2008/02/11(月) 20:48:14.11 ID: jS3CTt2G0

第六話「風景」

終わり

 

 

 

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